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ちまちま中間手続29

2024-11-10 21:07:10 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続29

拒絶理由通知
 引用文献1、2には、使用済油を精製する方法であって、使用済油を本願の請求項2に記載の条件で脱水処理する工程、脱水処理後の使用済油を請求項5、6に記載の条件で抽出処理する工程、抽出処理工程から得られた留分から溶媒を分離後に水素化処理をする工程を含む方法が開示されている(引用文献1については・・・等を参照)。 
 引用文献1、2に記載の方法においては、脱水処理工程後に減圧蒸留する工程を設けていないが、脱水処理工程後に使用済油を精製処理する前に、低沸点の有用成分を回収するために、減圧蒸留工程を設けることは公知のことであるから(引用文献3、4を参照)、引用文献1、2に記載の方法において、抽出処理工程の前に、同様に、低沸点の有用成分を回収するべく、減圧蒸留工程を設けることは当業者が容易に想到できたものと認める。 
 また、減圧蒸留の条件は、処理対象となる使用済油に含まれている低沸点の有用成分に応じて、適宜設定することができるものと認める。 

 この拒絶理由通知書中で指摘した事項以外には、現時点では拒絶の理由を発見しない。拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。

意見書
 本願請求項1の方法または請求項12の装置によると、1)脱水された使用済油を直接減圧蒸留して、残渣および少なくとも一つの蒸留油留分を生成し、その後に、2)減圧蒸留残渣を直接、前記抽出工程に付して、いわゆる精製油および抽出残渣を得るようにするようにした。このように1)の減圧蒸留を行った後の減圧蒸留残渣に対して2)の抽出工程を行うようにしたので、本願出願時の明細書の段落・・・に記載されるように、抽出工程に用いられる装置の容量を従来技術の場合に比較して約3分の1に縮小させることができ、さらに、このような装置に必要な投資も約3分の1に縮小させることができる。さらに、抽出工程に必要な溶媒量を低減させることができることから、これに伴って、抽出工程で得られる精製油中に含まれる金属等の不純物の量を低減させることもできる。このような金属は、抽出工程後に行われる3)の水素化処理工程で支障をきたすおそれがあることから、最終的に得られる油の品質向上を図る上でも非常に効果的である。 
 また、本願発明では、2)において1)からの減圧蒸留残渣に対して抽出工程を行っているので、減圧蒸留残渣をそのまま捨てる、あるいは単なる燃料として使用する等ではなく、減圧蒸留残渣に含まれる油を抽出して精製油として使用し、また、抽出後の抽出残渣についても、出願時の明細書の段落・・・に記載されるように、粘度が低く取り扱いやすく、また、完全に溶媒が除去された残渣は、使用し易いかたちで燃料として使用でき、あるいは、アスファルトに混合され得る。 
 以上のように、本願発明は、効率良く、かつ、使用済油中に含まれる全成分を最大限に価値付けることができ、価値付けられる生成物の収率は、収集された油中に含まれる炭化水素の量に対して99%近くにまで及び、無駄なく使用済油を活用することができる。

 引用文献1および2のいずれにおいても、脱水処理工程を行った後、その直後に減圧蒸留を行っておらず、抽出処理工程を行っている。引用文献1、2の方法では、減圧蒸留を行っていないものに対して抽出操作を行っているので、抽出すべき処理油の量が多く、そのために、抽出処理を行うための装置が大掛かりになり、溶媒量および装置に要する費用も大きくなる。加えて、溶媒量の増加に伴って、抽出相に含まれることになる金属等の不純物も多くなり、後の水素化処理工程に支障をきたすおそれがある。また、引用文献1では、標準条件で気体の溶剤を使用して超臨界条件下に抽出処理しているので、装置が複雑かつ大掛かりになる。引用文献2では、1回目の抽出工程は、その後の蒸留工程に有害な不純物の大部分を除去する工程でありこれを省くことができない。 
 引用文献3、4には、脱水処理工程を行った後、減圧蒸留処理を行うことが開示されており、減圧蒸留を行った際に得られる塔頂留分についての処理が記載されている。ところが、減圧蒸留を行った際に生じる蒸留残渣については、引用文献3では、その第4頁右上欄15~17行に「気化しない供給残留物は塔底部管50を通って貯蔵槽52に入る」とのみ記載されており、引用文献4では、蒸留残渣の扱いについては全く記載がない。減圧蒸留からの蒸留残渣にも、沸点が高い炭化水素類が含まれているので、これを抽出しないとすると、処理済油を有効に活用したとはいえない。また、引用文献3において貯蔵槽52に送られた蒸留残渣は、おそらく燃料に用いられると考えられるが、粘性の高い重質油を含んでいるので、使用し易いかたちの燃料にはならない。 
 これに対して、本願発明では、1)減圧蒸留、2)抽出工程および3)水素化処理工程を行うので、引用文献1、2によりもたらされる溶媒量増大、不純物増大等の問題が発生せず、引用文献3、4によりもたらされる蒸留残渣の問題が発生せず、効率良く、かつ、使用済油中に含まれる全成分を最大限に価値付けることができ、価値付けられる生成物の収率は、収集された油中に含まれる炭化水素の量に対して99%近くにまで及び、無駄なく使用済油を活用することができる。 
 このように本願発明による効果は、上記1)~3)を順次に行うことによって得られるものであり、引用文献1、2に引用文献3、4を組み合わせても、使用済油を最大限に活用することができることは容易に想到することができない。

拒絶理由通知書
 上記開示の使用済油の精製方法は、脱水工程が設けられていない点、減圧蒸留の前に清浄化処理を施している点、溶剤による抽出処理の対象が残留物のみでない点で、本願の請求項1に係る発明と異なる。 
 しかしながら、使用済油の再生の際に、水分を含む軽質留分を除くために常圧蒸留を行うことは、上記引用文献1の第2欄に記載の従来技術の説明においても記載されているように、通常行われていることであるから、上記開示の使用済油の精製方法において、使用済油として、軽質留分を含まない使用済油の代わりに軽質留分を含む使用済油を処理対象とする際には、当然に、水分を含む軽質留分を除くために常圧蒸留、即ち、脱水処理を施すものである。 
 また、上記開示の使用済油の精製方法においては、減圧蒸留の前に清浄化処理を施しているが、減圧蒸留の前に清浄化処理を施こすかどうかは、使用済油として、どのような種類の使用済油を対象とするかによるもので、固体物質、炭素粒子等が多く含まれていない使用済油や、その存在の程度によっては問題とされない使用済油を用いる場合には、清浄化処理を省略できることは明らかである。 
 更に、上記開示の使用済油の精製方法においては、溶剤抽出処理を残留物と軽質留分との混合物を対象としているが、残留物のみを対象とするか、残留物と軽質留分とを別個に対象とするか、あるいはその混合物を対象とするかは、残留物と軽質留分の割合、残留物の取り扱い易さ、使用する溶剤の量や種類、残留物と軽質留分からの回収可能な油の割合等を考慮し、適宜に選択実施しうる程度のことである。 
 また、使用済油から水分を含む軽質留分を除くための常圧蒸留を240℃以下で行うこと、軽質留分を除いた使用済油の溶剤抽出の際にフロパンを溶剤として使用し、30℃~プロパンの臨界温度・圧力下で行うことは、本出願前にすでに知られており(引用文献2の・・・等を参照)、それらの手段を上記開示の使用済油の精製方法に採用することに格別の困難性はない。

意見書
 ・・・、本願出願時の明細書の段落・・・に記載されるように、抽出工程に用いられる装置の容量を従来技術の場合に比較して約3分の1に縮小させることができ、さらに、このような装置に必要な投資も約3分の1に縮小させることができる。さらに、抽出工程に必要な溶媒量を低減させることができることから、これに伴って、抽出工程で得られる精製油中に含まれる金属等の不純物の量を低減させることもできる。このような金属は、抽出工程後に行われる3)の水素化処理工程で支障をきたすおそれがあることから、最終的に得られる油の品質向上を図る上でも非常に効果的である。 
 また、本願発明では、上記のような蒸留および抽出によって望みの油成分を得ることができ、従来方法で用いられていた酸、吸収剤等を添加する必要がないため、これら添加剤を添加するための設備および添加剤自体の費用、および添加剤処理後に生ずる添加剤に由来する廃棄物の処理およびそのような処理のために要する費用、およびそれらの貯蔵施設およびその費用等およびそのような廃棄物が環境に及ぼす影響等の多岐にわたる問題点を解消することができる。 
 また、本願発明では、2)において1)からの減圧蒸留残渣に対して抽出工程を行っているので、減圧蒸留残渣をそのまま捨てる、あるいは単なる燃料として使用する等ではなく、減圧蒸留残渣に含まれる油を抽出して精製油として使用し、また、抽出後の抽出残渣についても、出願時の明細書の段落・・に記載されるように、粘度が低く取り扱いやすく、また、完全に溶媒が除去された残渣は、使用し易いかたちで燃料として使用でき、あるいは、アスファルトに混合され得る。 
 このように、本発明では、収集された使用済み油中に含まれる全生成物に最大限に価値を付加することができた。価値付加された生成物の収率は、収集された油中に含まれる炭化水素の量に対して、99%に近い結果が得られ、焼却処理されるべき液体または固体生成物は存在しておらず、使用済み油の全体としての利用性の向上を図ることができる。 
 以上に説明したように、本願発明により得られる効果として、
1)望みの油成分の回収率が良好であること 
2)酸、吸着剤等の添加剤を用いる必要がないこと 
3)望みの油成分が得られるだけではなく、処理後に生ずる残渣を燃料またはアスファルトに混合され得る等、使用済み油の全体としての利用性を向上させること
ができることが挙げられる。

 引用文献1と本願発明とを比較すると、本願発明では、脱水工程後に、使用済み油は減圧蒸留に直接的に送られており、引用文献1に記載されたような清浄化処理が行われていない。また、本願発明では、引用文献1に記載されるような酸、吸収剤等の添加剤が一切添加されておらず、減圧蒸留から生じた残渣は、溶媒抽出工程に直接的に送られている。 
 本願発明では、明細書の段落・・・に明記されているように、「酸または吸収剤を用いない方法および装置」を提案することを目的としており、実際に、これらの添加剤を用いないで良好に目的とする処理を行うことができることを示している。 
 これに対して、引用文献1では、清浄化処理、酸処理、脱色処理等のために多種の添加剤を添加している。引用文献1でこれらの処理は、必要不可欠な処理として行っているのであって、これらの添加剤の添加を除いてよいという記載はもちろん示唆さえない。したがって、添加剤の添加を省くという思想自体は引用文献1から推考できるはずがない。添加剤の添加を省くことにより得られる効果は、上記(2)または本願明細書に記載されるように、それらの要する費用、設備、環境に対する影響を考慮すると多大なものであり、このような点を考慮しても、「添加剤を用いずに処理を行う」という本願発明は、当業者が容易に想到することができるものではない。 
 また、引用文献1に記載の方法により得られる油の収率を考慮しても、引用文献1の第4頁左欄の表を参照すれば明らかなように、50.0%程度に過ぎず、決して高い収率を得られたとはいえない。引用文献1において高い収率が得られなかったのは、多岐にわたる添加剤を加える処理を行っている点に起因すると思われる。これに対して、本願発明では、何らの添加剤を加えることなく直接的に蒸留工程に送り、かつ、直接的に抽出工程に送っていることから、引用文献1に見られるような問題点が解消されており、得られる油の収率を考慮しても、本願発明は引用文献1に比して格別の効果を得ることができる。 
 また、本願発明では、望みの油成分の他、抽出工程後の残渣についても、燃料またはアスファルトに混合され得る等、使用済み油の全体としての利用性を向上させることができるが、これに対して、引用文献1には、残渣の利用については言及されることがなく示唆するような記載もない。引用文献1では、多岐にわたる添加剤が加えられており、これらの処理を行う必要性を考慮すると、残渣を他の目的のために使用することは引用文献1では考慮されていないと考えられる。したがって、引用文献1では、本願発明のような使用済み油の全体としての利用性を向上させることはできない。

特許査定

拒絶理由通知の内容を最初に見たときは、絶望的かな、、と思いつつ、なんとか食いついて、特許査定にできた。さらには、請求項について実質的な限定補正を行っていない点も、大きな成果といえる
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ちまちま中間手続28

2024-11-06 21:51:19 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続28

拒絶理由 進歩性
 引用文献1には、ダイオキシン類含有液に粉末活性炭を添加し、その後ろ過処理手段を用いて固液分離することが記載されており、該ろ過処理手段に前段に、凝集分離等の固液分離処理を行ってもよいことも開示されている。 
 ここで、本願請求項1、2に係る発明と、引用文献1記載の発明を対比すると、以下の点で相違し、その余の点で一致しているといえる。 
1.活性炭の吸着性能に関して、前者は液のpHを7~10に調整するのに対し、後者は該構成は示されていない点。 
2.水処理における凝集分離技術に関して、前者は排水に凝集剤と凝集助剤を添加して凝集フロックを形成し、ダイオキシン類を吸着した活性炭を凝集フロックと共に沈殿させ、沈殿物から排水を除去するものであって、それに用いる装置に関しては、凝集槽と沈殿槽と濾過器を有するものであるのに対し、後者は該構成は示されていない点。 
 上記各相違点について検討する。 
1.について 
 活性炭の吸着性能に関して、引用文献2には、pH値が7よりも低下すると活性炭の吸着効果が低下することが記載されている(第3頁右上欄第7行-18行参照)。 
 引用文献1記載の発明の活性炭の吸着性能に関しても、当然より効率よく吸着処理を行うために、引用文献2にあるように、pH値が7よりも低下すると、吸着効果が低下することを考慮し、pHを7以上とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 
 また、その際、pHの上限を、吸着効率、コストや耐アルカリ性の度合い等を考慮し、適当なもの、例えば10程度することは、当業者が適宜為し得るものである。

一般的な水処理における凝集分離技術に関して、排水に凝集剤と凝集助剤を添 加する凝集槽、フロックを沈殿させる沈殿槽、濾過器とを有するものは、本件出 願前周知の事項であることからして(例えば引用文献3の図1、引用文献4の図 2参照)、引用文献1記載の発明の水処理における凝集分離技術に関しても、上 記周知の事項を採用し、排水に凝集剤と凝集助剤を添加する凝集槽、フロックを 沈殿させる沈殿槽、濾過器とを有するものとすることは、当業者が容易に想到し 得るものである。

2.について 
 一般的な水処理における凝集分離技術に関して、排水に凝集剤と凝集助剤を添加する凝集槽、フロックを沈殿させる沈殿槽、濾過器とを有するものは、本件出願前周知の事項であることからして(例えば引用文献3の図1、引用文献4の図2参照)、引用文献1記載の発明の水処理における凝集分離技術に関しても、上記周知の事項を採用し、排水に凝集剤と凝集助剤を添加する凝集槽、フロックを沈殿させる沈殿槽、濾過器とを有するものとすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 
 そして、上記構成とすれば、「凝集剤と凝集助剤を添加」した後、当然本願同様「凝集フロックが形成され、ダイオキシン類を吸着した活性炭が凝集フロックと共に沈殿し、沈殿物が排水から除去される」ものと認められる。

意見書
 引用文献1および2のいずれにも、「排水に凝集剤と凝集助剤を添加して凝集フロックを形成し、ダイオキシン類を吸着した活性炭を凝集フロックと共に沈殿させ、沈殿物を排水から除去する」ことは開示されていない。

 引用文献3では、凝集させてろ過除去する対象が発電所から排出される低濁度排水中の懸濁固形物であり、ダイオキシン類を吸着した活性炭を処理するものではない。また、引用文献4の装置も、灰汚水中の微粒子を処理しているが、ダイオキシン類を吸着した活性炭を処理していない。 
 これに対して、本願発明では、ダイオキシン類を吸着した活性炭と、凝集フロックとを 沈殿させ、この沈殿物を排水から除去している。 
 本願発明は、ごみ焼却場の排水中のダイオキシン類を規制値以下にまで除去することを目的としている。本願発明が処理対象としているダイオキシン類は、非常に強力な有害物質であるため、これを規制値以下にまで除去できなければ、現実に実施することができない。本願発明によりそのような非常に厳しい目的を達成するためには、
・活性炭にダイオキシン類を完全に吸着させること、
・ダイオキシン類を吸着した活性炭を排水中から完全に除去すること
の双方共に満足させる必要があり、本願の出願人は、上記本願発明の構成により、実際に、排水中から規制値以下にダイオキシン類を除去できることを確かめたものである。 
 したがって、引用文献3には、凝集フロックを形成してこれをろ過処理する方法が記載され、引用文献4にもこれに適用できる装置が記載されているが、引用文献3および4は双方ともに、処理対象が本願発明のようなダイオキシン類を吸着した活性炭ではないので、単に、引用文献3、4の構成を引用文献1方法に組み合わせたとしても、現実的に、排水中のダイオキシン類を規制値以下にまで除去できるかどうかは分からない。したがって、引用文献1~4から本願発明に想到することは容易ではない。

拒絶査定
 出願人は意見書において、本願発明の構成により、実際に、排水中から規制値以下にダイオキシン類を除去できることを確かめたものあるが、引用文献については、それらを組み合わせたとしても、現実に、ダイオキシン類を規制値以下にまで除去できるかどうかは不明である点において、進歩性を有していることを主張している。 
 しかし、引用文献1の[0021]段落に、「該液(粉末活性炭が分散したダイオキシン類含有液)を・・・凝集分離・・・など予備的な固液分離処理を行ってからろ過処理手段によって固液分離処理しても良」いことが記載されている以上、ろ過手段の前段に設けられる凝集分離手段として、凝集剤、凝集助剤を用いるという周知技術を採用すること、つまり引用文献を組み合わせることについては、当業者が容易に想到し得るものであるといえる。 
 そして、引用文献を組み合わせた効果である、ダイオキシンを規制値以下にまで除去することに関しては、引用文献1の[0005]段落に「ダイオキシン類を十分に除去する」ものであることが記載されていることから、その「十分に除去」した程度が、「規制値以下」であることは、当業者が容易に想定し得る事項であって、組み合わせの効果が格別顕著なものであるとは認められない。

典型的な作戦ミスによる失敗例

昔はよくこれに引っかかていたので、戦績は向上しなかった。

主文献との比較で、相違点が認められるものの、副文献の記載によれば、当該相違点に想到することは容易である。

進歩性拒絶理由通知のよくあるパターン。副文献の記載については、かなり充実しているものの、肝腎の、主文献中の記載は、ほぼ指摘されていない。攻略点は、この点であろう。何らかの意図があって、相違点を忌避している事由が見つかる可能性があり、逆にいうと、このい事由が見つかれないと、ほぼ負けである。

組み合わせが容易であることを認めたうえで、反論を試みても、進歩性の拒絶理由を覆すのは、至難のわざ

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ちまちま中間手続27

2024-10-29 21:44:41 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続27

【請求項1】砒素で汚染された土壌を、酸化剤を含む洗浄液およびアルカリを含む洗浄液で順次もしくは同時に洗浄することを特徴とする砒素汚染土壌の浄化方法。

拒絶理由通知
新規性・進歩性
 引用文献1には、砒素汚染土壌を浄化するに際し、酸化剤とアルカリを併用することが記載(特に段落【0019】参照)されている。そして、酸化剤とアルカリを同時に作用させること、洗浄後に中和処理をすること、洗浄温度を限定することは、当業者であれば必要に応じて適宜なし得る事項に過ぎない。

手続補正書
  【請求項1】 3価及び5価の砒素で汚染された土壌を、酸化剤を含む洗浄液で洗浄し、3価の砒素を5価の砒素に変化させ、次に、アルカリを含む洗浄液で洗浄し、5価の砒素のアルカリ金属塩とすることを特徴とする砒素汚染土壌の浄化方法。

意見書
 引用文献1には、酸、アルカリ、酸化剤、キレート剤の少なくとも1種を用いる砒素汚染土壌の浄化方法が記載されている。 
 しかしながら、引用文献1では、実施例1においてアルカリ処理を行ったもののみが記載されている。 
 したがって、引用文献1には、「3価及び5価の砒素で汚染された土壌を、酸化剤を含む洗浄液で洗浄し、3価の砒素を5価の砒素に変化させ、次に、アルカリを含む洗浄液で洗浄し、5価の砒素のアルカリ金属塩とする」ことは開示されていないので、本願発明は新規性を有する。
 また、引用文献1に基づいて、本願発明の上記構成に想到することは容易ではない。よって、本願発明は進歩性も有する。

拒絶査定
 引用文献1には、該通知書でも指摘した段落【0019】に、ヒ素が汚染物質の場合にはアルカリ剤で処理を行うが、ヒ素が3価の形態の場合には酸化剤で予め処理を行うことでヒ素を5価の形態と変化させてアルカリ剤による除去率が向上する旨記載されている。

本件については、有効な対応策がなかったため、非常に難しいものとなった。「引用文献1では、引用文献1では、実施例1においてアルカリ処理を行ったもののみが記載されている」点をもった追究すればよかったかな、とも思うが。。引用文献1の検討が十分でないので、もっと深く読み込めば、なんらかの他の方法はあったかもしれない。
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富田林へ買い物

2024-10-26 23:09:35 | ツーリング
6月29日の日記

お買い物

ツーリングと言っていいのかどうか

野菜購入目的で先週に来ていたところ。

うなぎのお店があったので試しに食べに来た。

旬鮮広場 富田林直売店

その構内にあるうなぎのお店
鰻づくし八策 富田林店

うな丼やとうなぎが少なく見えたので重のほうにした。







若干、値がはる。が、通常の高い店よりは安い

味は、そこそこかな。もうちょっとタレがうまいと評価変ってたかも。

飯の次は、予定通りの買い物

このお店、野菜より果物が充実している。

すいかの時期だった。

青森リンゴが美味そうだったので、予定にはなかったが買ってみた。

走行距離の記録は忘れたので、ない。
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ちまちま中間手続26

2024-10-26 21:11:43 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続26

拒絶理由通知
新規性・進歩性・29条の2
 引用文献1には、還元剤添加と加熱処理の併用が記載されている。 
 また、引用文献2には、還元剤を含むヒ素化合物の除去薬剤が開示されている 。

意見書
 引用文献1の還元剤としては、炭素、硫安が例示されているが、水素化物、ヒドラジン、ジイミド、アルデヒドおよび糖類は、開示されていない。 
 引用文献2には、クロム等の有害金属を封入するための組成物が開示されており、その組成物中には、砂糖、セルロース、炭水化物等の還元剤が含まれることが記載されている。 
 しかしながら、引用文献2は、還元剤による有害金属の還元作用を一部に含んでいるが、最終的には、有害金属を封入するためのものであり、ヒ素を揮散させる本願発明とは全く異なっている。 
 したがって、引用文献1および2と本願発明とは全く異なっているので、本願発明は新規性を有し、特許法第29条第1項第3号の要件を満たしている。

 進歩性
 引用文献1で用いている還元剤としては、炭素、硫安が例示されているのみであり、この記載に基づいて、本願発明の「水素化物、ヒドラジン、ジイミド、アルデヒドおよび糖類」から選択される還元剤に想到することは容易ではない。 
 引用文献2の組成物は、還元剤を含んでいるが、最終的には有害金属を封入するための組成物ものであるので、本願発明のように、ヒ素化合物を揮散させることは引用文献2に基づいて容易に想到することはできない。 
 引用文献3には、アルミニウム精錬灰を還元剤として添加するとともに、このアルミニウム精錬灰の他に、木炭、石炭、コークス等の還元剤を用いる固形廃棄物の無害化処理方法が開示されている。 
 しかし、引用文献3の方法では、固形廃棄物中に含有される有害な6価クロムを還元剤の作用により還元して低原子価クロムにすることが記載されているだけであり、引用文献3の記載に基づいて、本願発明のように「ヒ素を揮散させる」ことは容易に想到できることではない。 
 引用文献4には、水素ガスの存在下、200~400℃で触媒と接触させることにより 芳香族ハロゲン化合物を処理する方法が開示されており、水素ガスの供給源として土壌中に添加されて用いられるでんぷんまたはショ糖が例示されている。 
 しかしながら、引用文献4の方法では、土壌から揮発してくる芳香族ハロゲン化合物と、同じく加熱による分解により土壌中から発生してくる水素とを気相にて反応させるものである。これに対して、本願発明では、土壌中に存在するヒ素を土壌中にて還元剤の作用により還元させ、その後に、還元されたヒ素を揮散させるものであり、還元剤を用いる点で共通していても作用機構は全く異なっている。すなわち、でんぷん等に水素を発生させる能力が知られていたとしても、「土壌中のヒ素を還元することができる」ということは引用文献4の記載から想到することは不可能である。 
 したがって、本願発明は、引用文献1~4の記載に基づいて容易に想到することができるものではなく、進歩性を有し、特許法第29条第2項の要件を満たしている。

 本願発明では、水素化物、ヒドラジン、ジイミドおよび糖類からなる群より選ばれる還元剤を用いており、固形体であるので、引用文献5の水素等の還元性ガスとは異なっている。 
 したがって、本願発明と引用文献5に記載された発明とは同一ではないので、本願発明は特許法第29条の2の要件を満たしている。

拒絶査定
 出願人は平成18年2月1日付け補正書により還元剤を特定しているが、先の拒絶理由で示した引用文献1に記載の発明では特に還元剤を限定しているわけではなく、さらに糖類が還元剤となることは引用文献2及び4により公知であるから、引用文献1に記載の発明において、当業者が還元剤という観点から公知の糖類を採用することに特段の困難性があるとは認められない。 
 また、本願明細書の記載を検討しても、出願人が特定する還元剤を採用したことにより格別予期し難い顕著な効果が奏されているとも認められない。 
 したがって、先の拒絶理由は撤回しない。

まだまだ力不足だった時代の失敗例

発明者視点からの相違点を発明者から示してもらいながら、実務専門家視点からの攻略ポイントを示せなかった。

本件の進歩性のポイントは、文献の組み合わせによる進歩性否定

このような場合は、主文献との相違点を徹底して検討することが大事

本件の場合、主文献と本件の選択すべき還元剤に相違点があった。主文献の立場から本件の還元剤を選ばないだろう、という観点から追及すべきであった。

具体的には、本件の特徴は、還元処理後の「ヒ素」を飛散させる点にある。

本件により選択した澱粉等ならば、還元処理後に残ったもの未反応のものも加熱処理によって分解して気化するので、ヒ素の飛散の邪魔にならない。

主文献にはそういった観点はないのではないか。それならば、副文献を組み合わせる動機付けはないだろう、と結論づけることもできたのではないか。


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