これは、中国の「全唐詩」(清の康煕帝の勅命で編纂された唐時代の詩を集めた漢詩集)の巻732に載っている日本の長屋王の作った漢詩。
読み下し文は、河出書房新社「古典の事典」によれば、
山川は域を異にし
風月は天を同じうす
諸々の仏子に寄せて
共に來縁を結ばん
長屋王(684-729)は奈良時代、聖武天皇のもとで左大臣にまでのぼった人物。
彼は、千の袈裟を作り、その縁に「山川異域、風月同天、寄諸佛子、共結來縁」の文字を刺繍して唐に贈ったといわれています。
鑑真和上(688-763)の伝記である「唐大和上東征伝」では、和上が日本への渡航を決意するにあたって、
このエピソードを紹介しています。
「全唐詩」においても、この詩の説明文に、長屋王が袈裟に刺繍をして中華に寄贈した旨の紹介があり、
続いて「眞公因泛海至彼國傳法焉」という文言があります。
これは字面から判読すれば、「因って鑑眞公は海を渡って彼國(日本)に至り法を傳えた」という意味のようです。
長屋王といえば、1988年、奈良市二条大路南における、奈良そごうデパート建設中の工事現場から
大量の木簡が発見され、そこが長屋王の邸宅跡地と特定されました。
デパートは開業しましたが、うまくいかなかったらしく、現在はイトーヨーカドーが入っています。
跡地の一角にある長屋王家木簡紹介の碑
そごうデパートの名残、イトーヨーカドーにしてはちょっと豪華な入り口と、長屋王邸跡紹介の碑。
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イトーヨーカドー最上階から、夕暮れせまる平城宮跡と復元された大極殿をのぞむ。
屋上から撮った生駒山の夕景(2013年2月撮影)
長屋王も幾度となくこの景色を眺めたことでしょう。
ところで、長屋王が贈った袈裟が、中国のどこかに残っていないでしょうか。
まさか ね。
* 主な参考資料
中華書局出版「全唐詩」巻七三二
河出書房新社「古典の事典」唐大和上東征伝
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