鉄製のテーブルとイスが置いてあるベランダで
女は満月を眺める。
椅子に座って、飲み物をだして
女は満月を眺める。
一陣の風が風呂上りの体の下腹部を吹き抜けていくのを感じて
女は満月を眺める。
心の中で何か疼くのを感じて
女は満月を眺める。
月の無慈悲な女王になった自分を思い描いて
女は満月を眺める。
無慈悲な女王は男の犠牲者が必要だ、と思って
女は満月を眺める。
携帯電話をとりだしアドレス表をよびだして
女は満月を眺める。
何年も会っていない男のアドレスを選択して
女は満月を眺める。
この男が「結婚しようと」と言ったが、断ったことを思い出して
女は満月を眺める。
男に電話をかけ、男の「はい、なんですか」という声をきいて
女は一瞬、何かに包まれる。
しかし、直ぐに、いつもの習慣に促されて、
無言で電話を切る。
女は男との今までのことを忘れる。
女は久しぶりに、医者から出された睡眠薬を飲まずに眠る。
女は満月を眺める。
椅子に座って、飲み物をだして
女は満月を眺める。
一陣の風が風呂上りの体の下腹部を吹き抜けていくのを感じて
女は満月を眺める。
心の中で何か疼くのを感じて
女は満月を眺める。
月の無慈悲な女王になった自分を思い描いて
女は満月を眺める。
無慈悲な女王は男の犠牲者が必要だ、と思って
女は満月を眺める。
携帯電話をとりだしアドレス表をよびだして
女は満月を眺める。
何年も会っていない男のアドレスを選択して
女は満月を眺める。
この男が「結婚しようと」と言ったが、断ったことを思い出して
女は満月を眺める。
男に電話をかけ、男の「はい、なんですか」という声をきいて
女は一瞬、何かに包まれる。
しかし、直ぐに、いつもの習慣に促されて、
無言で電話を切る。
女は男との今までのことを忘れる。
女は久しぶりに、医者から出された睡眠薬を飲まずに眠る。