goo blog サービス終了のお知らせ 

KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

南ア・大武川一ノ沢~石空川北沢下降(二日目)

2011年06月05日 | 沢登り

天候:
行程:起床4:30-出発5:55-6段150m大滝下7:50-大滝落口9:15-稜線12:10-下降開始-北沢大滝-南沢出合17:15-林道終点18:50-精進ヶ滝林道デポ地19:20

 先週が仕事でかなり神経を擦り減らす日々だったので、夜は思いのほかよく眠れた。
 タケちゃんが焚火を起こしてくれ、ラーメンで朝食。

 一発目にいきなり50m級の滝が控えていて、朝から冷たいシャワーかよと覚悟していたが、それほど濡れずに越えることができた。

 

 しかし、二俣を過ぎてからいよいよ一ノ沢も本性を現わしたようで、滝が次から次へと出てくる。
 岩も硬いのばかりでなく、掴んだ途端にガバがボロボロ崩れたり、まったく気が抜けない。
 イヤらしいところはタケちゃんがリードし、上からロープを出してもらう。

 滝の大きさも次第に大きくなってきて、やがて前方の遥か上、とんでもないのが木々の間に見え隠れし始める。
 
 6段150m大滝!

 
 
 でかいっ!
 昨年行った篠沢の大滝、黒戸尾根直下の七丈瀑も大きかったが、こちらもなかなかのスケール。まさに天から水が噴き出し、流れ落ちている感じ。
 アイスではよく登られているようだが、無雪期の大滝直登はよほどの時間と周到な準備、それによほどのクソ度胸が無ければまず取り付く気はしない。
 威圧的な巨大な姿に、ただ「いやー、参りました。」と言って笑うしかない。

 しばし大滝を眺めた後、右岸のガレ・ルンゼから大高巻き開始。
 ガレを詰め上がってもまだ大滝の半分ほどの高さしか届かない。
 途中から右手の落口目指して斜めトラバース気味に上がっていくが、途中にハーケンが打てそうも無いボロい壁があったりして結構悪い。
 ここもタケちゃんがフリーで越え、上からロープを出してくれた。Ⅳ級ぐらい?

 本流に戻る手前は深く切れ込んだ枝沢があり、側壁が立っていて安易にルートを選べない。
 それでも、うまく獣道を繋いで行くと、ドンピシャで大滝の落口にたどり着くことができた。
 「登山体系」のトポではこの大高巻きだけで1時間半はみておきたいとあるが、たしかにそれだけの時間はかかる。

 さらに登山体系では「大滝の上は一変しておだやかになる」などと書いてあるが、これはウソっぽい。
 実際は10m前後の滝がもういい加減にしてくださいと思うほどにまだまだ続く。

 

 無雪期はあまり人が入っていないせいか、この辺りはもう野生の王国といった感じで、流れの角を曲がると巨大な鹿がビュンビュン飛び跳ねていたりする。

  

 やがて、ようやく水涸れとなり、獣道らしき微かな踏跡を上がっていく。
 藪漕ぎはないが詰めは長く、やがて木々の幹に間隔を置いて赤テープが確認できるようになる。
 おそらくアイスの人たちが使っているのだろう。
 地図と地形と赤テープを照合しながら東の方角へ歩を進めると、途中、「カミュ」の空瓶が転がっている岩小屋などがある。

 

 だいぶ登って、さらに次のピークへのギャップへ差し掛かるところで、そろそろこの辺だろうと見当をつけ、今度は南側の谷筋に向かって下降開始。
 この辺りだったか、先を行くタケちゃんが前方に熊の姿を確認!
 離れていたので良かったが、かなりデカいヤツだったらしい。
 それからは二人して声を出しながら進む。

 そのうち突然、斜面が切れ落ちてきた。
 樹林に覆われてはっきりしないが、どうやら岩峰の上にいるようで、ここから懸垂開始。
 幸い支点となる太い木はたくさんある。

 まずは一回目の懸垂。木の枝で引っかかりやすいのでピッチは短めに切る。
 で、一本降りてロープを回収。しばらくはスルスルと引けたが、突然、ビクとも動かなくなってしまった。 
 ・・・マジ?
 もう一度、引っ張る。やはり動かない。ウソでしょう、どーして?
 ロープは1本の折り返しだし、もちろん末端に結び目など作っていない。

 とにかくビクともしないので、しかたなく私が登り返す。
 壁は岩というより脆い土とブッシュのミックスで、ホールドは良いのが無く、足を置いても自分の重みでスタンスがズブズブ崩れてしまうイヤらしさ。
 思った以上に不安定でランナーを取る余裕も無い。
 タケちゃんに下でビレーしてもらい、後はロング・フォール覚悟のゴボウで上がる。

 やっと登り返すと、ロープがプルージック結びのように途中の枝に絡みついていた。
 濡れていたので、予想以上に摩擦が効いてしまったのだろう。
 これで時間を30分以上ロス。 

 その後、懸垂をさらに2ピッチ。これ以上、引っかからないよう、ロープは慎重に回収する。
 そういう意味では、一回目でミスをしたのは不幸中の幸いだったのかも。
 その後の登り返し不可能の箇所で引っかかっていたら、二人とも完全にアウトだっただろう。

 

 やがて水音が聞こえてきて、北沢に合流。
 時間はだいぶ押してきているが、後は沢筋に沿って下るだけだからと安心したのもつかの間、やがて今度は前方に明らかにそれとわかる光景が見えて唖然とする。

 落口・・・?それもかなり大きな滝であることが容易に想像できる空間が前方にある。
 北沢の50m大滝!
 当初の予定では、大滝の下で北沢と合流し、沢の下りは簡単に済むはずだったのだが、我々がいるのはまだ北沢の上流のようだ。
 安心していたところで、いきなりのドンデン返し。さすがのタケちゃんもこれはマズイ!と思ったようだ。

 50m大滝は右岸から懸垂、途中トラバースも交えて2ピッチで何とか下に下りることができた。

 

 その先は右岸にけっこう歩きやすい巻道を見つけて、しばらくは安心して高度を下げる。
 だが、実際にはまだまだで、次第に夕暮れが近づいてくる。

 やがて、ようやく北沢と南沢の分岐が見えてくる。
 ハーケン1本打ってゴルジュ滝を懸垂で降りる。すると、今度は束ねておいたロープの一方の端が釜の下の倒木の根に引っかかって取れなくなってしまう。
 うぅーっ、もう勘弁してほしスな気分で、ズブ濡れになって回収。・・・寒い。

 

 行動時間も10時間を越え、ヘタレな私はちょっとした小滝を横にジャンプして飛び移るところも思い切りが無く、タケちゃんの肩を踏み台にさせてもらう始末。 (えらいスンマセン。)
 さらに最後は短いが足の届かない釜まであって、まさか夕方5時過ぎに泳がされるとは思わなかった。
 歳と共に体温調節が鈍くなっているので、マジ低体温症になりそう。

 

 沢が一瞬落ち着いたところで、ようやく右岸に巻道らしきものが見えてくる。
 ここから車をデポしてある精進ヶ滝林道へは不明瞭な山腹をトラバースしていく。ここが最後の難関。
 目印となるテープを木の幹に見つけ、それに導かれて下山を急ぐ。

 しばらくはテープを確認できたが、途中で道を見失ってしまう。
 本日は曇りで樹林帯の中は薄暗い。
 これはもはや本日中には下山不能、明日は無断欠勤か?といった状況になってきた。
 たぶん他のメンバーとだったら、これ以上ヘタに動くと本当に道に迷いそうなので、行動中止してビバークしていただろう。
 しかしながら、ここはリーダーに全幅の信頼を寄せて、ヘロヘロになりつつも付いていく。
 おそらくタケちゃんにしてみれば、もう一泊延長という事態は何としても避けたいという、それ相応のプレッシャーを感じていただろう。

 踏跡も無い滑りやすいブッシュの斜面を延々とトラバースし、最後は高度計と二万五千の地形図を頼りにタケちゃんが判断、涸れた沢筋を下っていく。
 本当にこの方向で合っているのか。 (全幅の信頼と言いながら、最後は大丈夫かいなとけっこう不安だった・・・。)

 で、やがて先を行くタケちゃんから意味不明のコールが届く。
 追い付いてみると、もう薄暗くてよくわからなかったが苔に覆われた石垣があって、それは確かに人が造ったものだった。
 最後の最後で人工物を見つけて驚くのは、まさに映画「猿の惑星」のラスト・シーンのよう。こちらはハッピー・エンドなので良かったが。

 疲れた身体に鞭打って林道を進み、ようやくデポしてあったタケシ号に再会。愛しのFit!
 一日延長せず、何とか無事に下山できた・・・。

 

 その後、私の車も回収し、最後は地元の「ガスト」でガス欠となった胃を満たす。
 お疲れさんでした。

 私にとっては今シーズン一本目の沢始め。
 「来週は(休みたいから)雨でもいいかも。」とタケちゃんが言うぐらいだから、十分に濃過ぎる内容で完全燃焼。一ノ沢自体は思いのほかイイ沢でした。
 とりあえず、次回はぜひ「癒し系」でお願いします。 (たぶん聞いてもらえないだろうけど・・

 
 
 タケちゃんの記録はこちら



最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
いやぁー(^^)ゞ (takeshi)
2011-06-13 20:46:57
お疲れ様でしたぁー!

ルートミス?計画ミス?
いづれにしろ余計なご苦労をおかけしてしまい
すみませんでしたm(_ _)m

振り返ってみると
『情熱大陸・一ノ沢』
って感じです!

今度は癒し系にしましょうか・・・?(笑)
返信する
Unknown (M田)
2011-06-13 22:52:12
沢の方は予想どおり?充実しましたね。甲斐駒周辺の沢、鳳凰三山西面の沢は下降が難しいルートが多いですね。石空川、所ノ沢、倉沢あたりが面白そうですが、取り付くには中々の気合が要りそうです、、、一ノ沢のアイス、魅力的ですね。

当方は同週土曜、須走口から富士山に行ってきました。頂上から七合目迄一気の尻セードで30分、2時間ちょっとで駆け下りて中山二郎に行く予定が中井でオーバーヒート、タクシー帰宅自宅目前であわやの交通事故車横転と中々こちらも充実?しました。尻セード、D君がエライ気に入ったらしく、今度は男らしくブルーシートに包まって、超高速尻セードを決めたいものです。
返信する
Unknown (現場監督)
2011-06-14 23:02:22
> タケちゃん

 いやいや、今回もお世話になりました。
 昨年の篠沢以上にワイルドで、とても充実しました。

 詰め上がった先の稜線が視界が利かないのと下降路がはっきりしないため沢の記録が少ないんでしょうが、一ノ沢自体は変化に富み、なかなかイイ沢でした。
 とりあえず「朝帰り」になって女房にしどろもどろの言い訳(?)をしなくて済んで良かったです。

 また、よろしく。


> M田さん

 あの辺りはとにかくデカイ滝がドカドカありますね。
 沢登りの人も釣り人もそんなに多く入っていないようなので、まだまだ探せば秘密の大滝がどこかに隠れているかもしれません。

 そちらもなかなか大ハード(?)だったようで・・・まさか乗ってたタクシーが横転したわけじゃないですよね。
 Dスケくんは富士山冬季単独登頂の次は、ガチガチのアイスバーンで尻セードですか。
 ブルーシートに包まれて・・・「富士の青い稲妻」と呼んであげましょう。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。