KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

稲子岳南壁・左カンテ 【北八ツ】

2009年07月21日 | アルパイン(無雪期)

天候:
同行:Ju9cho氏

 三連休に予定していた穂高が悪天により見送りとなったため、最後の一日だけ利用して上記へ転進。
 前夜のうちに登山口の「稲子湯」先まで入り仮眠。
 人気で便利な南八ツに較べて人はほとんどいないだろうとタカをくくっていたら、予想外のクルマの数!
 まぁさすがに全部が稲子の南壁に行くわけじゃないとは思うが。

 翌朝は4時半スタート。
 アプローチは脇を小沢が流れる緑溢れる気持ちの良い小径。良く茂ったシダ類の葉が原始の森を思わせる。
 途中から、かつての林業の際に使われた旧いトロッコの軌道跡なども現れ、どことなく郷愁を誘う。
 ニュージーランドまで行かなくても、引けをとらないバック・パッキング・トレールがここ北八ツにはある。

  
 軌道跡の残るトレール        恐竜ではありません。倒木です。

 一時間ほどで「しらびそ小屋」。
 静かな「みどり池」。その向こうに天狗岳や稲子岳など北八ツの山々。
 もう少し歳をとってガツガツとした山登りに飽きたら、こういう所にのんびりテントを張って好きな本を読みながら好きな時にビールを飲み、そして好きな時に近くを散歩するような山旅をしてみたい。

  風情のある「しらびそ小屋」

  みどり池と天狗岳

  みどり池と稲子岳

 そこからさらに中山峠への道を進む。
 樹林越し、右手に稲子岳の南壁が望める辺りから適当に森の中に入っていく。
 目印となるそれらしいものは特になし。
 見当をつけて藪の中を分け入って行くと、そのうち疎らに付けられた赤テープを発見。
 こうなればしめたもので、それを追って次第に急になってくる草付き斜面を這い上がっていく。
 上部で二手に分かれて偵察。
 私が先行し、ずっと左手、ガラガラの堆石の押し出しを詰めていくと、カンテの左側壁に残置スリングを発見するが、取付がイマイチ判然としない。
 そのうち右下の方で「取付が見つかった。」とJu9cho氏からコールが掛かる。
 行ってみると基部の潅木に赤テープ。そこからルート伝いに残置ハーケンの列がはっきり見て取れる。

 登山口からここまで休みを入れて約2時間。ガチャ類を身に付け準備を整える。
 取付はそれほど広くないので、今の立ち位置から奇数ピッチをJu9cho氏、偶数ピッチを私が受け持つ。
 ピッチ・グレードはどこもせいぜいⅢ+~Ⅳ級程度らしいので、特に順番にこだわりはない。
 Ju9cho氏はファイブ・テンのアプローチ・シューズのままで十分と言うが、私はせっかく持ってきたのでアナサジを履く。(ライオンはどんなに弱い相手でも全力を尽くすと言うし・・・ちょっと違うか?)

1P目 28m  Ju9cho氏リード
 少し幅のある凹角内のフェース。
 Ⅲ級程度とJu9cho氏は甘く見ていたが、やはりそれよりは少し歯応えがあるよう。
 それでも出だしのフェースでランニング一つ取った後は、ろくにプロテクション取らずに行ってしまった。

  1P目、リッジ状フェースを行くJu9cho氏

2P目
 25m 私がリード。
 V字状の溝からリッジ。
 途中、ネジが緩んではいるが、ペッツルのハンガー・ボルトまで打たれてあった。
 空間に出て、背後の天狗岳など見晴らしの良いピッチ。
 ただ、このところ自分ではすっかりフリー・モードでなっていて、久々のアルパインはホールドがどれもこれも動きそうで、ちょっと怖い。
 ビレーするJu9cho氏からも「くれぐれもボルダー・ムーブはしないように!」と釘を刺される(^^;)

  2P目のリッジ

3P目 25m J氏リード
 見晴らしの良いテラスからチムニー状の凹角から左上へ抜けるピッチ。
 晴れてはいるものの、この頃から標高2,000mらしい冷たい風が吹きつけて、そこそこアルパインらしき「演出」をしてくれる。
 チムニーの右手、薄被りのフェースにもボルト・ラダーが見える。
 かつての人工ルートのようだが、高度感、露出感ともになかなかで、もしフリーで取り付いたら、かなりシビれるに違いない。(支点の強度が定かでないが。)

  3P目チムニー

  3P目終了点

4P目 40m 私がリード。
 V字状の立ったフェース(クラック?)からリッジ、ガラガラの浮石テラスに上がってもう一つ小垂壁。
 難しくはないが、変化に富んだなかなか楽しめるピッチ。
 最後のフェースはほぼ垂直で、A0用の切れ掛かったスリングも残置されていてパワー勝負かと思わせるが、正面の岩に隠されたアンダー、そして落ち着いてフット・ホールドを見つければ、キレイに抜けられる。
 上がった所のピッチの終了点には、最近打ち足されたピカピカのリング・ボルト2本が待っている。

  
 4P目のリッジ。赤↓にJu9cho氏がいるの、わかります?

  4P目ラストの垂壁

5P目 20m J氏リード。
 もう頂上の安定した土の斜面がすぐそこに見えているが、最後のピナクルに残置ハーケンが見えたので「おまけ」として登っておく。
 立ってはいるが、正面のフレークに沿ってまっすぐ越えられる。

  
 5P目。正面のクラック沿いに直登する。

 終了点でロープを解き、風が強いので頂上の木陰に入って小休止。
 特に急ぐわけでなく、むしろじっくり味わうようにして登ったにも関わらず、所要時間は2時間弱。
 頂上はコマクサの群落という話だったが、季節がちょっとズレたのか、まぁ申し訳程度に咲いていた。

  終了点近く

  頂上に咲くコマクサ

 帰りはまだ二人とも登ったことのない「ニュウ」というピーク経由で下山。
 稲子岳~ニュウのコースは地図には正式な登山道として明記されていないようだ。
 ところどころ赤テープに導かれながらの道程だが、それ故に原生林の中を歩いている趣がある。
 ニュウは360度の展望が望めるピークで、北八ツの山々はもちろん富士山、そして思いのほか残雪の多い槍・穂の姿もはっきりと見えた。
 天気に恵まれた本日は小学生の遠足団体ご一行様で賑わっていた。

  
 ニュウ山頂より硫黄岳(左)と天狗岳

 二人ともかねてよりこの「ニュウ」という奇妙な山名の由来が気になっており、「やっぱり元はだろうか?まさか英語のNewじゃないよな。」などとおバカな会話を交わしていたが、帰り道の道標でやはり「乳」が正解だったと判明。

  「うーん、ダイレクトといえばダイレクトだけど・・。」
  「まあ、それでも(ちち)と書くわけにもいかないでしょう。」とこれまた、おバカな会話を続けつつ下山。
 特に早足で歩いたわけでもないのだが、結局、正午前には駐車スペースにたどり着いてしまった。

 野辺山周辺で昼飯を済ませ、13時過ぎには中央道に入ったにも関わらず、既にその時点で上りの渋滞30km超。
 ETCの休日割引はありがたい限りだが、どうにかならないもんか。

【お節介ながら、ルートの注意点など】
・登山道から取付まではイマイチわかりにくい。赤テープを探しつつ、岩壁のやや左を目指すこと。
・岩は概ねしっかりしているが、カタカタ動く大岩がルート中の随所にあるので慎重に。4P目途中の浮石帯で落石を落とすようでは要修行?
・ルートは特にトポが無くても、残置のピンを追いつつ、登りやすい所を選んでいけば間違いなし。
・岩角でけっこうロープが屈折するので、ランナーはヌンチャクより長めのスリング+カラビナの方が良い。(アルパインなら当たり前か。)
・他ルートもあるようだが、岩壁基部の堆石状況を見ると、かなり脆そう。安全で快適なクライミングを楽しみたいなら、左カンテ以外はやめといた方が良さそう。



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
行ってみました (安齋)
2010-06-04 12:10:44
ぴかぴかのリングボルト2本はなぜか地面に落ちていました。
返信する
ボルトの謎 (現場監督)
2010-06-07 20:58:45
安齋さん、こんばんは。はじめまして。

ボルトが落ちていたとのこと。
謎ですねぇ。
埋め込みが甘くて抜けてしまったのか、それとも一時流行った金属泥棒が慌ててしまって持っていくのを忘れたのか

稲子南壁はそう何回も行くとこじゃないけど、静かな雰囲気がいいですね。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。