体力の衰えを感じる昨今、せいぜい歩けるうちに北アルプスのメイン・コースをトレースしていこうと思い立ち、まずはその第一弾。
今回は焼岳-西穂-奥穂-北穂-槍までを二泊三日のテント泊で。 (本当はもう一泊して笠ヶ岳までの予定だったが、台風が近づいているので行く前からは気持ちは断念。)
ちなみにこのコースで過去に歩いたのは1979年(古っ!)の冬に山岳会の合宿で西穂から奥穂まで。
後はピークをその都度登っているだけで、ラインとしてはほとんどトレースしていない。
一日目
天候:
行程:中の湯6:10-焼岳9:50-西穂山荘14:05-西穂16:25 (単独)
前夜、横浜を深夜バス「さわやか信州号」で出発。 (座席は窮屈であまり「さわやか」ではないが・・・)
夏山シーズンということで今の時期、バスは沢渡で地元の低公害バスに乗り換え、釜トンネルの入口「中の湯」で降ろしてもらう。
他に二組下車。私は準備を整え、後からのんびり出発したが、肝心の焼岳への登山口がよくわからない。
釜トンネル入口の駐在員二名に聞いたところ、左手のちょっと行った先に登山道があったような・・・という返事。
これを信じたのがそもそもの間違いだったが、その前に私が持っていたのは1993年版(今から18年も前)の昭文社のエアリア・マップ。
まだ、中の湯も移転前、安房トンネルも開通前の地図で、そこには釜トンネルのすぐ脇から登山道が延びている。
とりあえずトンネルから左へ200mほど先、土嚢の積まれた工事現場の脇に古い指導標を見つけ、そこから登り始める。
最初のうちは踏跡もあったが、すぐに無くなり、左手に復旧工事中の大きな土砂崩れの跡を見ながらザレと藪こぎで上がって行く。
先の二組は本当にこんな悪い道を上がっていったのだろうか。沢登りの詰めでルートをミスったような急斜面でかなり悪い。
そのうち完全に道を誤っていることに気付いたが、今さら正しい道を探して登り返すのも面倒なので、そのままコンパスと勘を頼りに適当に詰めていく。
この辺りは熊がよく出ると釜トンネルのおじさんに注意されたが、もはや自分がいる場所は完全にそのテリトリー内。実際、熊が住んでいそうな穴倉をいくつも見かけた。
用心のためホイッスルを吹き鳴らしながら、背丈を越える熊笹を掻き分けていく。
結局、怒涛の藪こぎをすること約二時間。ようやく正規の登山道に出てホッ。 (←こんなのばっか)
後から聞いたところでは、現在は移転後の中の湯温泉の裏手(国道旧158号の7号カーブ?)あるいはもっと先の駐車場のある安房峠の所から焼岳の登山道が延びているとか。
自分の採った藪こぎコースはラインとしてはショート・カットだが、体力的には大幅にロス。
結局、焼岳までたっぷり四時間もかかってしまった。
焼岳は今回が初めて。
登るにつれ硫黄の匂いで、早くも温泉&
ビールが恋しくなる。
山頂はツアー客も含めて多くの登山者で大賑わい。
落ち着かないので、写真を数枚撮って早々と退散する。
焼岳には山上湖があり、見た感じディカプリオの映画「ザ・ビーチ」の舞台となったタイのピピ島を思わせ、ちょっとテントを張って一泊したい場所である。
眼下の焼岳小屋は間近に見えるが、小一時間ほどかかる。
小屋は鄙びた感じで、なぜか玄関脇に高齢のご一行様がずらりと並び、湯治場風?
ここから先、西穂山荘への道は人の数もグッと減る。
樹林帯の道で、朝一の藪こぎ、さらにこの日の暑さもあってちょっとグッタリ。小休止してはそのまましばらく居眠りしてしまう。
今年のGWにこのコースを逆から歩いて焼岳に行こうとしたが、やはり地形が複雑でトレースが無いと自分には無理だったというのが改めてわかった。
西穂山荘に到着。
雪の無い時期に、ここに来るのは初めて。
ものすごい賑わいで、色とりどりのテントがビッシリ張られている様子は、まるで夏の湘南海岸。
暑さで水をだいぶ消費してしまい、山荘で水2L+ポカリのペットボトルを調達。
今回はテント泊だがあまりストイックにならず、水などはコンビニ代わりに山小屋で補給することにした。
本当は一日で焼岳経由で奥穂まで行くつもりでいたが、ここにきて自分の思い上がりを痛感。
とりあえず行ける所まで行くことにする。
独標までの登りはかえって雪のある時期の方が登りやすい感じ。
頂上では、おばちゃんたちが「ここから先は上級者だけが行く道だから。」などと話していたので、見た目、完全に日帰りハイカーの私は注意されそうだったが、彼女らがよそ見しているうちにサッサと擦り抜ける。
独標からの最初の下りはちょっと悪い。
その先、西穂までは13ぐらいの小ピークがあり、13→12→11・・・とカウント・ダウンする形でアップダウンが続く。ピラミッド・ピークは8峰。
独標から先は天場が少ない。
なるべく先に進みたかったが、夕立も来そうな気配だったため、そろそろ天場を探しながら進む。
結局、西穂山頂の一角に一人用テント一張り分の平らなスペースを見つけ、そこに陣取る。
冬だと風が厳しそうだが、張り綱用の岩は十分。360度の展望が広がる最高のスペースだ。
一つ先のピークでは四人組がやはりテント泊のようで、夕暮れの中、彼らの黄緑色のエスパースが蛍のように光ってなかなか幻想的だった。
写真集(一日目)