三日目
天候:、途中
(二回)
行程:東沢2,400mBP(二俣インゼル)4:45-東沢乗越6:15-水晶小屋7:20-鷲羽岳8:40-三俣蓮華岳10:45-双六岳12:05-双六小屋13:20-抜戸岳17:40-笠ヶ岳キャンプ場18:50
朝起きると、ありがたいことに晴れていた。
眼下にはこの二日間で歩いてきた沢筋が黒部湖まで延々と伸びている。
三日目の今日は長丁場。
まずは稜線に上がって少しでも笠ヶ岳に近い位置まで進みたい。
登山地図のコースタイムで休憩時間抜きでも12~13時間かかるようだ。
BPを撤収し、左俣を詰めて行く。
朝のうちは水が冷たそうで心配だったが、水流脇が階段状の登りになっていて、それほど濡れずに上がっていける。
途中で下を見下ろすと、自分が泊まった二俣から少し上がった右俣の所に黄緑色のエスパースが小さく見えた。
昨日言ってたもう一人の単独行者だろうか。
さらに登ると雪渓。
沢靴のフェルト・ソールと雪渓の相性はあまり良くないはずだが、この時期の雪渓は水っぽいのかスプーンカットの上にフラットに置けばそう滑ることは無い。
雪渓が終わると最後は踏んでいくのが躊躇われるような野生のお花畑を掻き分けて東沢乗越へ。
やっと稜線に出た。ホッと一息ついたところで、単独の山ガールがやってくる。
まだ買ったばかりという一眼デジカメを持っていたので写真を撮ってあげた。
お返しにオヤジも一枚
水晶小屋の登りでは、さらに別の京都弁?山ガールと話をする。
黒部ダムから上がってきて笠ヶ岳までテント三泊で行く予定だと言ったら、「そのザックによく納まりますねー。」と感心された。
前回の穂高に較べて今回は釣りと焚火があるので、沢靴、釣り道具、そして酒は欠かせない。
さすがに28Lザックは無理で40Lにしたが、それでもスカスカ。見た目はせいぜい二泊三日小屋泊まりといった感じか。
この辺り、昔から「裏銀座コース」と呼ばれていて、銀座だから女性が多いのか?
山ガールも(小屋泊まりでも)一人でこの辺まで歩けるようなら、一応合格でしょう。
「水晶岳まで(ピストンで)行きますよね。」と誘われたが、先が長いのでパス。ちょっと残念。
小屋の女性従業員が言うには、今は晴れているが、また午後から崩れるとのこと。ここ数日、ずっと不安定な天気らしい。
水晶小屋
多少、雲が湧いているが、鷲羽岳、三俣蓮華岳、双六岳と稜線伝いに進む。
この辺り、登山者はそれなりに多いが、穂高や剣と違ってまさに北アルプスのど真ん中にいるという感覚があって、実にイイ。
遠くに見える雲ノ平や黒部五郎岳など緑の稜線と白い雪渓のコントラストが何とも鮮やかで、「天上の楽園」という表現がピッタリ。
来年の夏は雲ノ平にこもり、午前中は周辺の小沢を登り、午後はビール&昼寝なんて計画を早くも考える。
鷲羽岳への登り
三俣山荘への下り
三俣蓮華岳
このあたり山ガールもいるが、トレイル・ランナーもちらほら。
ただ、登りにしろ下りにしろ、彼らはけっして自分たちから道を譲ろうとしない。
ウチら一応走っているんで道、空けてよね、といった無言の圧力を掛けられているようで、ちょっといただけない。
また、その先では偶然にも一昨日、平ノ渡しまで一緒だったおじさんとすれ違う。
このおじさん、見た目はかなり華奢なのだが(←そればっかり)、昨日は読売新道を一気に登り、今日は双六まで行ってから黒部五郎と休み無しに駆け巡っていて、ちょっと驚く。
しかし、予報どおり、双六岳の登りで早くも雷雨に見舞われる。
雷が近くに落ちそうな気配は無かったが、こんな午前中から降られていたら、とても笠まで行けそうにない。
また、雨に気を取られていたせいか、ある指導標に騙され、本当は一直線に双六小屋まで抜けられるところを、わざわざ双六岳をピストンする形のコースになってしまった。
これで少なくとも30分のタイムロス。
また、三日目とあって疲れが出てきたのか、双六小屋への下りで左足首にイヤな感じの痛みが出てくる。
昨年痛めた箇所だが、もう走ったりしても大丈夫だったのに、なぜここに来て・・。
特に下りがダメで、もしこのまま雨が降り続けるようなら、今日は双六小屋泊まりとし、明日は最短距離でリタイアしようかと日和った気持ちになる。
双六小屋への下り
それでもまだ時間が早いので、双六小屋で小休止後、とにかく行けるとこまで行くことにする。
午後になると、双六から笠ヶ岳方面へ進む人は、距離が離れているせいか、ほとんどいない。
この先、まだ鏡平もしくは杓子平経由とエスケープ・ルートは2コース残されているので、いざとなったらそちらへ降りよう。
弓折岳の登りでは、本日二度目の雷雨。
登山道は水溜りに覆われ、もうどうにでもなれといった感じ。
←コヤツが雨男か?
左足は痛みを増し、平らな道でも半ば引きずるような感じだが、やはりここまで来たら笠まで行かないともったいない気がして意地で歩く。
ペースは遅々として進まず10kg程度なのにザックも重く感じてきて、遥か昔のおぞましい記憶、大学山岳部での夏合宿を思い出してしまった。
一旦晴れるが、抜戸岳への登り、秩父平と呼ばれる辺りでまた鬱蒼と暗くなる。
本日三度目の夕立かと覚悟したが、今度はどうにか堪えてくれた。
抜戸岳周辺
左手、雲の合間に槍・穂の姿を眺めながら稜線を行くが、抜戸岳は頂上までがやたら遠い。
道はトラバース道となっているので、途中ザックを置いてピストンで登っておく。久しぶりにブロッケンを見る。
抜戸岳頂上と歩いてきた道
陽が西へ傾き、オレンジ色の陽射しの中、タラタラと続く稜線を一人歩いていく。午後4時を過ぎると、さすがにここらを歩いている者など誰もいない。
12時間行動となり、そろそろ今夜の天場を確保しなければ。
笠ヶ岳はまだまだ遠い感じで、せめて頂上まで一時間圏内の所にテントが張れれば上出来である。
あと少しあと少し・・・と歩き続けたが、さすがに日没が近づいてきた。
次に平坦な所が見つかったらどこでもいいから今日はそこで終わりにしよう。そう思ったら突然、眼前の薄闇の中にテントが一つ。
誰かが適当な所に張っているんだなと思ったが、よく見ると他にもテントが間隔を空けて建っている。
すぐ脇に絶好の平坦地を見つけたので、ザックを降ろし、自分もそこに張る。
ようやく一息ついて改めて地図をよく見たら、いつの間にか笠ヶ岳のキャンプ場までたどり着いてしまっていた。
夕暮れの天場
本日の行動時間、休憩も含めてだけど約14時間。
我ながらよく歩いた。
沢中二泊後の平坦地はやはり落ち着く。
残りの酒を飲んでメシ食って爆睡・・・。
【写真集・三日目】