日程:2014年3月21日(祝)~22日(土)
w/ M田氏
笊ヶ岳(ざるがたけ)は、山梨・静岡の県境、南アルプスの前衛(東側)に位置する。
登山口から頂上までの標高差は二千m超で、その傾斜は甲斐駒の黒戸尾根以上。また、頂上からは南アルプス南部の山々が一望できるということで、M田師匠からは一度は味わっていただきたいと言われていた。
先月二回の大雪がはたしてどれだけ残っているか、怖いもの見たさ(?)で師匠ともども出かけてみた。
一日目(3/21)
天候:一時
行程:老平(登山口)8:40-広河原(渡渉点)-山の神-桧横手山14:30
朝4時、師匠をピックアップし出発。
笊ヶ岳は横浜からだと中央道でも東名経由でもほぼ同じ距離となるが、今回は中央道河口湖ICから本栖湖を抜け国道300号経由とする。
本栖湖から先で峠のワインディング・ロードとなるが、おそらくこのルートが一番近道で、高速代も安く済む。
登山口である老平の無料駐車場に車を停め、登山開始。
先月は1mを超える積雪で孤立しただろうこの地域もさすがにひと月経つと雪は無い。
「熊出没注意」の看板のあるゲートを越え、しばらく林道を行く。
老平の登山口(駐車8台くらい可)
右手に岩壁、左下に川を見ながら、岩をくり抜いたトンネルや吊り橋、崖から進路を塞ぐようにほとばしる冷たい滝を避けながら進んでいくと、やがて広河原と呼ばれる渡渉ポイントに到着。
ここが最初の鬼門で、はたして渡れるかどうか。積雪期なので雪に埋まっていて大したことないだろうと思っていたら、これが意外と水量多い。
赤テープのある渡渉点はとても渡れる感じではなく、しばらく上流など見て回るがそちらもダメ。
それでも30mほど下流に飛び石伝いに渡れる箇所が一つだけあって、何とか最初の鬼門を切り抜けた。
対岸に渡ってすぐにジクザクの急登。これが「山の神」と呼ばれる地点まで小一時間ほど続く。
この辺りではまだ雪が少なく、落ち葉の道を一気に高度を稼ぐが、出だしから厚着をしていたため大汗をかく。
一時間ほど登り、「山の神」から上でボチボチ雪が現れる。
今回、怒涛のバンザイ・ラッセルを期待(心配?)していたのだが、予想に反して少し前のワカントレースがあり、そのステップがほど良い感じに凍り付いて階段状になって歩きやすい。
これはちょっと拍子抜け。
師匠は密かに記録的大雪後の一番乗りを狙っていたようだが、私は「楽は拒まず」。ここまで来てラッセル敗退も何だかなぁと思っていたので、素直に嬉しい。
朝のうちは晴れていたが、日中は小雪混じりの北風が吹き、結構冷える。
結局、トレースのおかげで持参したワカンは一切使うことなく、ストックとツボ足のまま初日の宿泊予定地、桧横手山に到着。
樹林帯の平坦地に師匠のエスパースを張り、本日の行動を早めに終了。
自分一人だと冬でもつい暗くなるギリギリの時間まで行動してしまい、いつも快適でない寝床となってしまうが、やはり雪の時期は午後3時、遅くとも4時には切り上げた方が余裕があっていい。
昨日まで体調絶不調で、よほどドタキャンしようかと思ったが、体調も戻り、やはり来て良かった。
夕方から北風が強くなり、テントがバサバサと煽られるが、早々と夕食をとり明日に備えて眠りに就いた。
二日目(3/22)
天候:無風
行程:桧横手山4:40-布引山6:30-笊ヶ岳8:30~9:00-桧横手山(撤収)11:30~12:30-広河原-老平16:20
朝3時過ぎ起床。
夜半まで北風がうるさかったが、今は無風で月も出ている。
サブザックに行動食とテルモス、念のため私だけワカンを持ってヘッデン・スタート。
桧横手山から布引山へはまた胸を突くような登り。
昨日からのトレース跡はまだ続いて雪の階段となっており、本日も大助かり。順調に高度を稼ぐ。
トレースは白根南嶺の稜線と合流するとそのまま北へ進路を変え、笊ヶ岳へと続く。
左手、木の間越しに南ア南部の巨峰群がチラチラ見え出すと布引山。
ここで前を歩く師匠がテントを発見。トレースは数日前のものと思えたが、どうやら付けたのはこのテントの主。
テントの大きさから見ると、2~3人のパーティーか。
笊ヶ岳へ向かう
布引山から笊へは少しだけ鞍部へ下って最後は再び登り返す。途中、右側(東側)にはちょっとした雪庇があったりする。
そして、急な雪稜を登り詰めると、ようやく笊の頂上。
本日は無風快晴。噂通りの360度の大展望が広がる。
左奥から北岳、仙丈、塩見、荒川、赤石、聖、光・・・。
右手は小笊の向こうに富士山。沼津湾に伊豆半島、その向こうには大島も見える。
笊ヶ岳頂上からのパノラマ(※音楽付き)
山頂の隅には年配の人、先ほどのテントの主が一人休んでいた。
トレースの御礼を言い、話を聞いてみると何と雨での一日停滞も含めて老平からここまで四日がかりでラッセルしてきたらしい。
この急登、それも深雪の中をたった一人で!見たところ自分より大分年上のようだが、その気力と体力には畏れ入った。
もっとも向こうにしてみれば、我々が昨日登り始めてもう頂上に着いてしまったことに驚いたようだったが。
おそらく最初は深かったラッセルも一回ワカンで踏まれた後に雨が降り、その後また冷え切ったために我々の時はとても歩きやすいステップになったようである。
とにかく感謝あるのみだが、聞くとこの方、単独行が多いようで、この正月には北岳、以前の三月には赤石岳と一人でかなり登り込んでいるらしい。
やはり、世の中には隠れたツワモノがいるもので、私などはまだまだヘタレで「要修行」であることを改めて知らされる。
頂上からの景色を十分に眼に焼き付けて、下山にかかる。
積雪期の南ア南部は登ったことがなく、笊から見た山々はどれも魅力的に思えたが、その中でも特に聖岳の東尾根が美しく見えた。ここはいずれ登らなければ。
きつかった登りも下りは足を前に出せばどんどん進む。
桧横手でテントを撤収、再び重くなった荷を担いで今日中に下ってしまうことにする。
雪のある所はともかく、下りはかえって雪の無い山の神から広河原間が落葉で滑りやすく、疲れた足には慎重さを要した。
ここ、慣れてない人がヘッデン下山になるとけっこう滑落するんじゃないかと思う。
最後の鬼門と心配していた帰りの渡渉も無事クリア。
あとは最後の林道をトボトボ歩いて、夕暮れの老平集落に到着。
積雪期の笊、確かに黒戸尾根と同程度(傾斜は笊の方が明らかに急)のシンドさだったが、同じ二日間だったら昨年五月の間ノ岳弘法小屋尾根~農鳥岳の方が自分にはキツかった。
ヴィラ雨畑
下山後は「ヴィラ雨畑」で貸切入浴(500円)。いつもの相模原「金太郎」で消費したカロリーを倍返しにしてもらって〆。
お疲れ様でした。
写真集「春の笊ヶ岳」
笊ヶ岳お疲れ様です!実は、ここを流れる奥沢谷。
狙ってるんですヨ!
この写真だとGWだとまだちょっと無理そうですかね。
下のゴルジュから2泊3日かかるので、なかなか簡単に遡行できる沢じゃないんですけど・・・
奥沢谷、今回我々が行った一般ルートで途中徒渉する沢のようですね。
南アは思ったより雪解け早いと思いますが、今年に限ってはたしかにあの大雪なのでGWの沢は厳しいかもしれませんね。
それにしても、あの標高にして二泊三日の沢ですか!
登山道にしてあの傾斜ですから、沢はどんな風になっているやら。
今年も夏に海外プロジェクトを予定しているのでしばらくそちらにシフトした山が続きますが、夏以降はまた沢も行きたいのでよろしくお願いします。
笊ヶ岳でお会いしたkiha58です。
「隠れたツワモノ」ではなく、へたれおやじです。
お2人のスピードにはびっくりです。(私が鈍いのですが)
360度の映像、懐かしいですねぇ。
(ん、怪しい人影が...)
弘法小屋尾根の記録も迫力ありますねぇ。
憧れます。
写真も取って頂き、ありがとうございました。
滅多に自分撮りしないので、貴重な物になるかもです(笑
また宜しくお願いします。
P.S 聖東尾根、大唐松尾根今年がチャンス?池山吊尾根からの白根三山も監督さんなら1泊2日で充実すること請負います。
まさか先行者がいるとは思わず、途中のテントも大きかったので、単独だと知って驚きました。
kihaさんが登った時はかなり潜ったでしょうね。数日遅れの我々の時は完全に雪の階段で、結局、持ってきたワカンは一度も出番が無かったです。
kiha58とは機関車から来ているのてしょうか?まさに人間機関車ですね。
雪の南アルプスはアプローチの大変さと山が大きいので今まであまり足を運びませんでしたが、静かで雄大なのがとても気にいりました。
ところで下の方の橋で鉄の手すりが大きくひん曲がっていたのに気づきましたか?あれ、我々が登った前日はちゃんと真っすぐだったんですよ。鹿が落石でも落としたですかね。謎です・・・。
M田さん、笊なかなか足に応えました。
それでも二日間バンザイラッセルのあげく半分も登れなかったという状況を想像していたので、kihaさんのおかげで登れて良かったです。
私の聞き間違いだったかもしれないけど、M田さんが赤石東尾根と言った一番きれいな雪稜が実は聖の東尾根みたいです。あそこは登りたいですね。
雪の時期の池山吊尾根から白根三山一泊二日!まさかそれは無理でしょう?