「おじいさん、ネギばかり頼まないでください」
浅草のどぜうの駒形で、今はどうか知らないが無料のネギのおかわりを所望する父に、若い店員が言ったということば。
駒形のどぜうは、下ごしらえで生きたどぜうに酒をかけ、酩酊状態になった、このどぜうを甘味噌仕立ての味噌汁に入れて煮込み、ねぎをたっぷりのせて食べるのが流儀である。
卵とじの柳川鍋のほうが、どぜうの姿が直接は見えないので人気なようだ。
しかし父は甘いのが嫌いなのである。たんに天邪鬼なのかもしれないが。板敷きの座敷で、座布団に座って向き合いながら座卓のどぜう鍋を突いた。
この日は、たまたま東京に来た愚息が、かつて東京にも住みながら浅草に一度も行ったことがないことを知り、駒形に連れられて来られたわけだった。
日本酒は、こちらではスーパーでもよく見かける辛丹波だった。可もなく不可もない。もっと合いそうな酒がありそうな気がしたが、人気店だから、在庫を切らすことはできない。丹波の響きがいいのだろうか。
東京のどこかで関西のグルメフェアなるものが開催されていたが、「男なら食い物のうまい、まずいを口にするな」と教えられれ育ったた私でさえ、そのメニューのいい加減さに呆れ果てるしかなかった。
駒形のお客さんにも、大手メーカーの量産品の辛丹波を飲んで、丹波杜氏の技はこんなものだと思わないでほしいような気はする。本物の丹波の酒や食材を持ち込み、エコでオーガニックでロハスな人たちが多く住んでいそうな場所にアンテナショップを作ったら、熱烈に支持されるのではないかと思った。
Jくんの活躍が楽しみで仕方ない。農民一年目の今年は、オクラは出来すぎてしまったし、トウキビは本人いわくイマイチだったそうだ。私はそのどちらもおいしくいただいた。トウキビはたしかに市場に出すには小さすぎたようかけれど、しみじみ、うまかった。収穫ツアーを企画して、収穫したその場で生のままかぶりつくイベントでも企画したらどうだろう。トウキビのいちばんおいしい食べ方は、とれたてを生のままいただくことである。
組合員におみやげにしたサツマイモは、シルクとハロウィンの2品種で、大好評だった。若さはそれ自体が可能性である。今の私なら、10年間マンツーマン指導を受けても身につかないことを、若い人はたった1日、2日で理解して、ステップアップしていける。素晴らしい。
今日は某先輩におすすめした丹波グルメのはなしをしようと思ったのだけれど、それはまた機会を改めて。