児童書の編集をしていた頃、企画書をあげるのは出版の半年前だった。だから春には秋に出る本の企画をやっている。どんぐりやら、落ち葉やらきのこやら、コオロギやスズムシやら、そんな写真ばかり眺めているので、ふと桜など見ると、「10月なのに狂い咲きか。異常気象だなあ」とトンチンカンなことを思ったりした。脳内では、オーストラリアのように完全に季節が逆転していた。
こんなことを思いだしたのも、夏休みシーズンに向けたキャンペーン企画の依頼が来たからだ。その頃には復興も進み、消費マインドも回復しているだろうとクライアントはいう。そうなればいいと思う。しかしそううまくいくのか。
巨大地震・巨大津波に原発事故が重なり、リビア情勢、さらに北アフリカ・中東の革命情勢。「世界はかくある」という歴史の地軸が揺らいでいる。歴史が動く。
近所の学校の桜は、2日前に見たときには、まだつぼみだった。東日本大震災の死者・行方不明者は2万6千人を超えたというニュースを聴けば、源氏ではないが、「今年ばかりは喪に服せよ、薄墨色に咲け」と呟きたくもなる。しかし歴史も、巡る季節も、花のいのちも、誰にも止めることはできない。