「即答するバカ」という本が売れているようです。
「おまえも読め! 最近の若い者の口の利き方がなってない! おまえの教育不足だ!」というわけで、偉い人から私の手元にも回ってきました。ちなみに、100万部を超えたという、『伝える力』は、各ルートから回ってきたて、手元に3冊あります。しかしこの手のアンチョコビジネス本って、Amazonのカスタマレビューに目を通しているだけで、読んだ気分になれちゃう本ばかりですね。
しかし、たまにビジネス書を読むのもいいものです。『即答するバカ』も、それなりにおもしろかったです。私も遊んでみることにしました。
例1
「この仕事頼む」
「無理っす」
デジタル世代のレスポンスの早さには、なぜか一昔前のMS-DOSを思い出してしまいます。きっとおじさんがまたタイプミスをやらかして、コマンドまたはファイル名を間違えてしまっただけなのでしょう。若者に何かを期待する前に、こちらは大人なのですから、指示の出し方こそ大切なのです。
だから、MS-DOSな若者たちには、指示は簡潔明瞭に行きましょう。
例2
「おう! おまえ今月中に新規売上1億あげてこいや!」
「む、無理っす」
「この役立たずが! 注文がとれるまで帰ってくるな!」
パワハラで訴えられるので、マネしたらだめです(誰もしません)。
しかし即答する困ったちゃんは、若者に限りませんね。
例3
「どうするんだ」
「トラスト・ミー」
という人もいましたね。今回の民主党代表選の鳩山さんの「ボクは何だったのでしょう」には、呆れて笑ってしまいました(おれに聞かれてもなあ)。
しかし若者たちも困っているらしい。こんな記事を見かけました。
「無理難題を言うクライアントへの対処法、まずこのひと言から!」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100719-00000000-woman-ent
「とくに、経験が少ないときには、無理な注文があるたびにストレスを感じてヘトヘトになってしまいます。そうならないコツは、クライアントからもらう課題をゲーム感覚で解決していくことなんですが、なかなかそういう気持ちに切り替えるのは難しいところ。
そこでおすすめなのが、どんな無理難題がやってきても、まず「なるほど~」という第一声からはじめること。こうすると、そんな無理難題を言っているのは、理由があるんだろうという前向きな思考からスタートすることができるのです。」
ゲーム感覚は大事。ジェットコースターのような納期綱渡りも、ナマコのようにストレスで内臓をぶちまけてしまいそうな修羅場も、アトラクションのようにキャーキャーいいながら楽しんでしまえばいいのです(無責任)。これも次のステージに進むためのイベント。新しいスキルが身についたとか、経験値があがったとか思えたらベストなのでしょう
しかし、第一声の「なるほど~」という返しは、ビミョーだなあ。こちらが他人事のように思っているという印象を与えかねないリスクがありますよ。実際、昔、お客さんのクレーム電話に、第一声、「なるほど」と答えてしまった私は、「何が『なるほど』なんですか!」とメチャクチャ切れられてしまった記憶があります。
やはり相手の立場に立って考えてみることが大切なんですね。その大事な原則を、私は忘れていました。
無理難題を言うお客さんも、他の誰かに無理難題をいわれているケースが圧倒的に多いのです(ワンマン社長が突然思いついた、アホ上司のスタンドプレー、突発クレーム、その他)。嘘でもいいから(!)、営業には「お困りですね」とお客さんに親身になり、味方になる姿勢が大事なのです。
もちろん、どう考えても実現困難な無理難題もあるわけです。だからといって、いきなりお客さんに反論してはいけません。グッとがまんして、心をいったん無にすることが大切です。
そのためにも、第一声はお客さんのいったことを、オウム返しに復唱してみるのがいいと思います。「明日までに超特急で納めてくれ」といわれたら「明日までにご入り用ですね」と相手の要求を、とりあえず繰り返してみる。
実際それが可能かどうは別にして、こういうオウム返しの会話を続けていると、相手も自分の要求が聞き届けてもらえたような気がして、激高した感情も次第にやわらいできます。だんだん冷静に考えてくれるようになってくれます。
その間に、こちらにも、どうこのクレームに対処したらいいのか、「考える時間」「考えるゆとり」が生まれます。「明日まで」といっても、午前なのか午後なのか、23時59分でもいいのか、明日中に手元にほしいだけで、お客さんもサバを読んでいて3日後でも間に合うのかによって、それぞれ対処法が異なるわけですから。
対面の場合は、まずは「このたびは誠に申し訳ございませんでした」とでも、深々かつ長々と頭を下げるところからスタート。別にクレーム処理の場に限りませんが、呼吸するときは、背筋をしゃんと伸ばして、鼻呼吸で腹式呼吸を心がけましょう。自然に声に張りや重みが出て、信頼感を相手に与えることができます。ちろん、口調や言い方はソフトに礼儀正しく。会社の代表として、堂々とした印象を与えることが大事です。
とりあえず、クレームのときの即答は禁物ですね。感情的になっている相手に対する不用意な発言が、自分や会社を追い込むことになります。「クレーム処理の極意は、即答する前に一呼吸おくこと」と、最初の話に戻るのでした。
最新の画像[もっと見る]