『涼宮ハルヒの驚愕』 谷川流+いとうのいぢ 初回限定版
・予約していたのを忘れ、Amazonで2セット購入してしまいました。
・下巻の表紙絵、このミニスカブレザーの子だれ? 新キャラ? 敵なの味方なの? 前巻のメインキャラ・佐々木なのに忘却の彼方。しかし『分裂』を読みなおそうと思ったときには、もはや手遅れ。物語に引き込まれていた。
・上巻の終わりで、今度こそ本当の新キャラ渡橋泰水(わたはし・やすみ)登場。SOSに新入団員? みくるちゃんの意外な側面。
・「百億の陳謝と千億の感謝」(作者あとがき)。谷川さんも、この4年間、ほんとうに苦しみに苦しんだんだろうな。グノーシス主義、ヘーゲル、湯川秀樹。佐々木の語る言葉には、作者が考え抜いた軌跡だと思う。
・本作であらためて村上春樹へのリスペクトを感じた(チャンドラー風形容詞は第一作から)。「大当たりのネコ」は、ファンならすぐにピンとくる。猫にも当たりとスカがあるのだ。春樹文学との親近性には、すでにこんなご指摘もある。
西宮文学案内第3回 アニメ『涼宮ハルヒ』の「聖地」西宮レポ - きーぼー堂
http://d.hatena.ne.jp/keyboar/20101203/1291346320
・もちろん、本作のαとβのパラレルワールドの構想そのものは、最初からあったのだろう(『分裂』でも重要な伏線が張られている)。
・震災以降、ゼロ年代のポップカルチャーは、政治や社会から目を背ける現実逃避にすぎなかった……という議論を見かけるようになった。私も「アウシュヴィッツの後になおも詩を書くとは野蛮である」ということばを思い出すことがあった。しかし、文明の中の野蛮人として、アウシュヴィッツをもたらした文明を内側から食い破るのが、アーティストやクリエイターの役目でなくてなんだろう。
・震災はこの時代の破局や崩壊を、誰の目にも見えるようにしただけだ。ポップカルチャーの停滞も、3・11に始まったことではないだろう。グノーシス主義の「神」、邪悪さと気まぐれに満ちたこの世界の創造主をめぐる議論には、この時代への深い内省と洞察を感じる。『驚愕』は、『1Q84』と『アンダーグラウンド』の作者に対する、オウム事件世代からの回答あるいは連帯の表明かもしれない。
・ハルヒがSOS団以外では、料理も上手、世話好きで友達思いの、普通の女子高校生であることを示す描写が目につくようになった。母親のことも「おかあさん」と呼んでいるらしい(家族への言及はこれが初めて?)。料理上手になったのは、母親が味オンチだったかららしい。しかし下巻205ページ、ハルヒにこんな顔させてしまうなんて。うちの娘になんてことを!
・特典『涼宮ハルヒの秘話』は予想以上。キョンと佐々木の中学生時代を描いた書き下ろしストーリーは、ぜひ単行本に収録してほしい。佐々木ファンは、29ページに衝撃のカットが。
・特典には制作裏話も。いとうのいぢさんの仕事場風景はパラダイス。「憂鬱」は誰も読めないからと、タイトル別案があったらのを初めて知る(どれもやめてよかったね)。表紙デザイン没案の蔵出しは、新人研修に使いたいレベル。
・予約していたのを忘れ、Amazonで2セット購入してしまいました。
・下巻の表紙絵、このミニスカブレザーの子だれ? 新キャラ? 敵なの味方なの? 前巻のメインキャラ・佐々木なのに忘却の彼方。しかし『分裂』を読みなおそうと思ったときには、もはや手遅れ。物語に引き込まれていた。
・上巻の終わりで、今度こそ本当の新キャラ渡橋泰水(わたはし・やすみ)登場。SOSに新入団員? みくるちゃんの意外な側面。
・「百億の陳謝と千億の感謝」(作者あとがき)。谷川さんも、この4年間、ほんとうに苦しみに苦しんだんだろうな。グノーシス主義、ヘーゲル、湯川秀樹。佐々木の語る言葉には、作者が考え抜いた軌跡だと思う。
・本作であらためて村上春樹へのリスペクトを感じた(チャンドラー風形容詞は第一作から)。「大当たりのネコ」は、ファンならすぐにピンとくる。猫にも当たりとスカがあるのだ。春樹文学との親近性には、すでにこんなご指摘もある。
西宮文学案内第3回 アニメ『涼宮ハルヒ』の「聖地」西宮レポ - きーぼー堂
http://d.hatena.ne.jp/keyboar/20101203/1291346320
・もちろん、本作のαとβのパラレルワールドの構想そのものは、最初からあったのだろう(『分裂』でも重要な伏線が張られている)。
・震災以降、ゼロ年代のポップカルチャーは、政治や社会から目を背ける現実逃避にすぎなかった……という議論を見かけるようになった。私も「アウシュヴィッツの後になおも詩を書くとは野蛮である」ということばを思い出すことがあった。しかし、文明の中の野蛮人として、アウシュヴィッツをもたらした文明を内側から食い破るのが、アーティストやクリエイターの役目でなくてなんだろう。
・震災はこの時代の破局や崩壊を、誰の目にも見えるようにしただけだ。ポップカルチャーの停滞も、3・11に始まったことではないだろう。グノーシス主義の「神」、邪悪さと気まぐれに満ちたこの世界の創造主をめぐる議論には、この時代への深い内省と洞察を感じる。『驚愕』は、『1Q84』と『アンダーグラウンド』の作者に対する、オウム事件世代からの回答あるいは連帯の表明かもしれない。
・ハルヒがSOS団以外では、料理も上手、世話好きで友達思いの、普通の女子高校生であることを示す描写が目につくようになった。母親のことも「おかあさん」と呼んでいるらしい(家族への言及はこれが初めて?)。料理上手になったのは、母親が味オンチだったかららしい。しかし下巻205ページ、ハルヒにこんな顔させてしまうなんて。うちの娘になんてことを!
・特典『涼宮ハルヒの秘話』は予想以上。キョンと佐々木の中学生時代を描いた書き下ろしストーリーは、ぜひ単行本に収録してほしい。佐々木ファンは、29ページに衝撃のカットが。
・特典には制作裏話も。いとうのいぢさんの仕事場風景はパラダイス。「憂鬱」は誰も読めないからと、タイトル別案があったらのを初めて知る(どれもやめてよかったね)。表紙デザイン没案の蔵出しは、新人研修に使いたいレベル。