橋下市長は5月23日、市職員の政治活動の規制を厳格化し、違反した者に対して刑事罰を科すという前代未聞の条例案を明らかにした。7月の臨時市議会で提案する方針という。
この「職員政治活動罰則条例」なるものは、
・政党の機関誌の発行・配布、
・集会などで拡声機を使って政治的目的をもった意見を述べること、
・デモ行進に参加すること、
など、
市職員が政治活動に関わることを厳しく規制・禁止し、違反した場合は2年以下の懲役などの刑事罰が盛り込まれている。
今でも自治体職員の政治活動は地方公務員法で制限されているが、刑事罰の規定はない。さらに「新条例」では自治体職員地方公務員法の対象外となっている市営地下鉄・バスの乗務員や清掃職員ら現業職、公営企業職員の政治活動に対しても幅広く規制するという。
橋下市長は新条例に関し、“地方公務員の規制を国家公務員並みにする”と言うが、国家公務員の政治活動の規制自体が違憲の疑いがあるという高裁判決が出されている。
2003年に元社会保険庁職員が、「しんぶん赤旗号外」を配ったとして国家公務員法違反に問われた事件で、東京高裁は10年3月、被告に逆転無罪を言い渡している。
この判決は、国家公務員法にある政治活動の規制が日本国憲法で認められた「思想・表現の自由」に抵触するおそれを指摘している。つまり、橋下市長の言う「国家公務員並みに」ということがそもそも、おおきく時代に逆行しているのである。
しかも「赤旗号外」事件そのものが、公安当局が周到な準備の元に活動家を狙い打ちにして無理矢理「国家公務員法違反」で逮捕した異常な事件であった。
先にも見たように、政治活動規制の対象には、ビラ作成、街頭でのビラくばり、機関紙発行・配布、集会参加、政治的発言、デモ参加等およそ考えられる一切の政治活動、表現活動、言論活動が含まれる。ホームページやブログでの発信、ミニコミ紙の作成なども含め、一切の政治活動が、選挙期間中か否かにかかわらず規制される危険がある。
橋下市長にとっては、具体的にどのような行為が規制対象になるのかはおそらく関係ない。なぜなら、大阪市の職員に対して、「政治活動をやったら逮捕されるかもしれない」という恐怖心を植え付けて萎縮させ、組合活動や政治活動をやれない状況を作り出すことが目的だからだ。
こんな条例案が通ってしまったら、教職員をはじめ全ての公務員が思想・良心の自由、言論の自由、表現の自由を奪われてしまう。絶対許されない。条例提出方針を白紙撤回すべきだ。
※公務員と政治 大阪市は刑罰案撤回を(5月25日)(北海道新聞)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/375003.html
※大阪市、職員の政治活動に罰則…条例提案へ(読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120523-OYO1T00577.htm?from=top
※職員の政治活動に罰則=規制条例を検討-大阪市(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012052300417
※市職員の政治活動、国家公務員並みに 橋下市長が方針(朝日新聞)
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201205230045.html
※【激動!橋下維新】職員の政治活動制限、罰則付きに 大阪市が独自条例提案へ(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120523/lcl12052312470000-n1.htm
※職員の政治活動に罰則 大阪市、国家公務員並みの条例化検討(中国新聞)
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201205230126.html
※大阪市、政治活動に罰則検討 地方公務員で全国初(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012052301001229.html
※大阪市:職員の政治活動に刑罰 条例案をまとめる(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20120523k0000m010119000c.html
※大阪市:職員政治活動罰則条例 関係者から疑問の声も(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20120523k0000m010121000c.html
(ハンマー)