大阪市が17日、職員の懲戒処分数を「半年間で40件以内」に抑える目標が達成できなかったとして、局長級以上の幹部75人に給与の一部を自主返納させ、連帯責任を問う方針を出したと報じられています。
※大阪市の幹部、給与一部返納へ 懲戒40件超え連帯責任(朝日新聞)
http://www.asahi.com/national/update/1217/OSK201212170145.html
※不祥事の削減目標未達で給与返納 大阪市副市長ら(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASHC17030_X11C12A2AC8000/
これは全くおかしいことです。確かに「職員の懲戒処分を減らす」という市民受けしやすい事象ですが、これでは、懲戒処分になるような不祥事を減らすのか、懲戒処分そのものを減らすのかがわかりません。幹部が給与まで減らされるのでは、不祥事をもみ消して懲戒処分を減らそうとする可能性もあります。
しかし問題はそれだけではありません。数値目標が絶対的な基準となってしまうこと、「達成しなければ給与削減」というような規定がなくとも、「自主返納」を強制するという形で縛りがかかり、未達成に対する制裁措置が事実上科せられることとなり、職員に厳しい重石となって降りかかってくることです。
これが教育の場にもちこまれるとどうでしょう。
以下で触れたように、大阪市教育振興基本計画「素案」には、とんでもない数値目標が列挙されています。
(よびかけ)大阪市教育振興基本計画「素案」へのパブリックコメントを出そう
たとえば
「学校園で認知したいじめについて、解消に向け対応している割合を100%にします。」
こんな数値目標が掲げられたら、先生はおそらく保身に走ってしまい、いじめを認知したくなくなるでしょう。
「中学校卒業段階で英検3級程度以上の英語力を有する生徒の割合を30%以上にします。」
年度末に未達成の可能性があったりしたら、受験に忙しい中学3年生に対して、英検の受験をさせて、目標達成を目指さなければならなくなります。
「「自分にはよいところがあると思いますか」の項目について、「当てはまる(どちらかといえば、当てはまる)」と答える児童生徒の割合:全国平均以上」
全国平均がわからないから、目標を達成するために「とにかく「当てはまる」に○しておいて」と生徒に言わなければならなくなります。
さらに学校ごとに目標達成率が明らかにされるようなことがあれば、あるいは公表されなくとも校長会などで議論になれば、未達成の学校の校長に「自主返納」という無言の圧力がかかり、管理職へ教員へと波及していきかねません。現実の学校や子どもの現状を無視した数値目標というしかありません。
しかもこれに学校選択制が加わってくれば、小・中学校の教員は数値目標達成だけを目的として血眼になって働き、児童・生徒の募集に力を尽くさなければならなくなるでしょう。あらゆる数値目標について、“平均点を下げそうな子どもお断り”、“問題を起こしそうな子どもお断り”、“歓迎 優秀な子ども”となってしまいます。
目標未達成について、連帯責任として給与の自主返納を強制するのは全くおかしいことです。
このような数値目標が教育の場に持ち込まれることを非常に危惧します。
(ハンマー)