脳内一人旅日記・改

登山、ロードバイク、一人旅好きのつれづれなるブログ。

屋久島旅行記・4 寒さと飢えの中…

2006年05月23日 | 登山記
江川卓の魔球はコシヒカリということで、屋久島旅行記その4いきます。
前回は恐怖のホーンテッドマンション、むしろ、病院坂の首くくりの家をほうほうのていで脱出、日も暮れている屋久島山中でさあこれからどう夜を過ごそうか、ところから始まります。

高塚小屋での宿泊が不可能となった以上、どこかで野宿するしか選択肢はありません。M君と二人で顔を見合わせしばし御前会議の後、高塚小屋対策特別措置法及び縄文杉野宿法が参議院本会議にて強行採決されました。

もうすでに辺りは暗くなっています。縄文杉へ向け、元来た道をマッハ文珠で引き返します。

縄文杉前へ猫バスで到着。二人とも疲労の局地です。荷物を降ろしそれをそのまま枕にして地面に寝そべります。

その後、あの高塚小屋での怪奇現象について、あれは霊の仕業だ、いやポルターガイストだ、いやいやユリ・ゲラーだ、いやいやいやエスパー伊東が入っているかばんだ、などと白熱した議論を展開。肉体的のみならず精神的疲労をさらに深める結果となりました。

そんなこんなで21時頃には二人とも深い眠りへと落ちていきました。


…もう0時を回った頃でしょうか。おいらは身震いと共に目が覚めます。
なんかすげぇ寒ぃ!
日中とは比較にならないほど気温が下がっています。加えて木の葉の間から雨も落ちてきていました。

山の天気は変わりやすいからなあ。はっはっは

しかし、事態はそんなのんきなことを言ってられるほど平易な状況ではなくなっていました。いわゆる「準備」というやつが致命的に欠けていたのです。

われわれ二人パーティの装備品・所持品は、防寒着はうすっぺらいYシャツ一枚、食料はせんべい、飴玉などのお菓子類がごく僅か、地図やらライトやらはありましたが、あとはガラクタです。

どんだけ山をなめていたんでしょう。いわば、ひのきのぼうとぬののふくでバラモスに対峙するようなものです。


ここで、M君も数千年の眠りから目が覚めます。嵐に乗って飛行石を持つものを迎えに来たようです。
M君がさわやかに、そしてすこやかに起床した時を同じくして、雨足がさらに強まります。

ざぁぁぁーーーー!!!!!ぎゃあーーーー!!!


木の葉に当たる雨音はショパンの調べどころではありません。ウィーン少年合唱団がメロディに合わせて微妙に体を左右に揺らしているのがなんか分からないけどムカつく、つまりはそんなところです。


また、雨と共に気温もさらに低下し体の震えも止まらなくなっていました。震えで歯がガタガタいって、それが断続的になっています。超高速ビートです。この時の歯のガタガタは高橋名人の16連射にも匹敵するでしょう。歯のガタガタでスターソルジャーをやらせたら超高得点間違いありません。


食料不足も深刻です。屋久島に到着してから今までまともな食事をしてないわけですから。簡単に言えば、「飢え」です。別に女に飢えてるわけでもお金に飢えてるわけでもありません。食べ物に飢えてるのです。この豊かな国、日本で!
北朝鮮ばんざーい!将軍様ばんざーい!


この飢えた状況を簡潔に示すと、名作「火垂るの墓」を想像するのに難くはありません。

清太「せつこぉ!!!」

節子「ニィちゃん、ウチ、う○こびちびちやねん」


そんな状況を思い浮かべながらサクマドロップをおいらとM君で分け合うという極限の状態に瀕していたわけです。

こうして、時間が経過するにつれ、事態の深刻さ、混迷の度合いはいっそう深まり、いやおうなく、寒さと飢えがそれを実感させていったのでした。


しかし、とにもかくにも、切り抜けるしかありません。日が昇って明るくなれば安全に下山できますから、それまでなんとか生き延びようと、二人して誓いを立てます。生きろ!森と共に!というアシタカの声もかすかに聞こえてきました。

屋久島その5へ続く