流山児事務所の「無頼漢」という芝居のプレビューを、両国・森下のベニサン・ピットという倉庫を改造したような小劇場へ観に行ってきました。
「すっごく破天荒でカッコイイ芝居!」が見終わった後の第一声です。
江戸時代の「天保の改革」水野忠邦のご時勢に、自由を求める河内山宗春ら6人の悪漢たちというストーリーなのですが、もともと歌舞伎の「上野初花」を、寺山修司が戯曲化して、仲代達矢主演で映画になったものだそうです。それを今回、佃典彦が書き直し、流山児が演出したのです。
冒頭の30人くらいが「お祭り一揆だ」と歌いながら踊りまくるオープニングは、迫力満点。座った席が最前列だったせいか、輪の中に引きずりこまれそうな雰囲気でした!
出色なのは、はまぐり慶太と劇団しきほう(うーん、どっかで聞いた名前だ)の「猫たち」(そのまんまじゃん)のシーンが大笑い。「ニャー」といいながら押入れから出てきた彼らが「メモリー」を歌いまくります。しかも団長役の悪源太義平が、今風に言うとカワおかしい!必見ですニャー。
そして寺山修司没後70年ということもあって、トレンチコートを着た寺山もどきも出るのがご愛嬌。寺山の詩がセリフとして語られると、こっけいな場面なのについ聞き入ってしまいます。その他にも、音楽や、青ひげなど寺山へのオマージュととれる場面がいっぱいです。
そのあとにくる場面が、今度は一転してカッコイイ。塩野谷正幸が出る事でビシッとシリアスな場面になるのです。バーの喧騒の中、1人寡黙に煙草の紫煙をくゆらす塩野谷は、怜悧な刃物のようです。実際この後、非情に刀で人を斬ろうとする場面は、鬼気迫るものがあります。
そして、一番カッコイイのが、宮様の使者と偽って悪玉の元へ乗り込む場面。いわゆる勢揃いというやつですな。Gメン並びになって口上を述べる姿は、まばゆいほど。
最期は非情だけど、そこがまたいいのです。
この舞台に華を添えたのが、美術セットだと思う。北斎の蛸とのからみの春画を下地にしたスクリーンを左右に配置し、そこに映像を投影して状況をイメージ化することで、プラスアルファの表現ができている。そして、正面上部も廊下のように行き来することができるようにしたことで、舞台と、その上部、そして舞台も前後2分割の奥行きを感じさせるような空間ができている。そして顔見世のそれぞれの役者ごとにしきられた襖が効果アリ!だった。通常だと左右の大襖を開いて勢揃いだが、役者ごとに仕切られた襖は、それぞれのシルエットが個性を際立たせ、カッコよさを倍増させた。
ともかくオススメの舞台になったことは間違いない。