BFI 51st London Film Festival: Lust, Caution Premiere
映画「
ラスト・コーション」
アカデミー賞で話題をさらった「
ブロークバック・マウンテン」の
アン・リー監督の話題作、日比谷で観ましたが、大入り満員だった。
とかく宣伝では主演の
トニー・レオンと
タン・ウェイのメイクラブシーンばかり喧伝されているが、むしろ、衣服を着けた2人の抑えた演技の方がなまめかしいから、是非注目。
嘘が実になっていく男と女の駆け引きが、目やしぐさなどで表現されており、特に後半、日本軍お抱えの料亭で、タン・ウェイが唄と踊りをトニーの前で披露するシーンは、2人の関係が敵味方なく愛情で結ばれたことと同時に、悲劇への予感を感じさせるシーンで、この映画の1番の見どころではないだろうか。
とはいえ、この映画ではセックスシーンも主役2人の位置関係の変化が如実に現れており、普通の映画でお飾り的に挿入されるのとは違って大変重要なことは否めない。ただし、そういう場面はほんの一握り、あってもぼかしがらくだのももひきのようで、最初1時間はでてきませんので、宣伝につられてHシーンを目当ての方は見ないほうがよいだろう。
かのシーンについては…。
トニー演じるイーは日本軍と親密なため、常に暗殺の危機にさらされている。劇中、2人の女刺客に狙われたとあるように、女性にも気を許せない。だから、タン演じるマイ夫人ことワン・チアチーとの最初の逢瀬のときには両手を縛り、暴力的に女性が何もできない姿勢でということになるのだろう。別にイーが変な趣味があるとか、サディスティツクな性癖があるのではないのがその後わかる。
その後、何度かからみのシーンがある。当初、男は女の顔が見えないように見えないように片腕で遠ざけるのだけれど、愛情が進むにつれて、正面に向き合って愛を交わせるようになる。その分岐点に、女が枕で男の視野を遮るのですね。男は実は闇が怖い。はじめて女に弱さを見せた。そこから、男は1人の女性として彼女に向き合い、このタイトル「色、戒」の「戒=指輪」へと進んでいくのだ。
指輪について言えば、大事なキーワードなのですが、あんなおばちゃんがするようなゴテゴテの指輪はないだろうと思った。一緒に見に行った人も言っていたし、隣の人も笑ってしまっていたとか。やはり、お国が違うとセンスも違うようで、大事なシーンで「アレッ」と思ってしまった。あと、中国の方は腋毛は剃らないのかなと(仏映画でも見かけますが)。これも大事なシーンで興が…。
サブストーリーでは、主役2人の他に、女をスパイに仕立てていった大学の演劇部の同級生たちというのがいるんだけど、この中のリーダーで、恋人づらをしている男クァンが本当にひどい男なのだ。
対外的には美男で優等生、理想に燃えるリーダーなのだが、自分の好きな女をスパイに仕立てて既婚という形で標的に近づけさすため(処女ではいけないからと)目的のためしょうがないといって、女性経験のある友人に抱かせる(せめて恋人きどりなら自分がすればいいのに)。危険な任務に再び彼女を引き込み、愛していると今更言い、自分は直接関わらないなんて、こんなひどい男がいるだろうかと、世の女性たちは憤るに違いない。とにかくこの人さえいなければ主人公の女性はこんな人生を歩まずに済んだといえるほど最悪な男なのだ。さわやか系
ワン・リー・ホンだからこそ余計合っているということか。
個人的にはウォン・カーウァイ監督の「花様年華」の方が、スタイリッシュで何も無いのに濃密な感じがした。でも、トニーの渋さや、タンの媚た目つき、女優らの衣装などから、観てもいい映画の1つではあろう。