徒然映画日記。

食わず嫌いは卒業し何でも観よう。思い切りネタバレありの「観た帳」です。

ニキフォル  知られざる天才画家の肖像

2008年06月07日 | ★★★★




ニキフォル知られざる天才画家の肖像
おすすめ度
製作:2004年 ポーランド
製作:ジュリアス・マチュルスキ
監督:クシシュトフ・クラウゼ
脚本:クシシュトフ・クラウゼ ヨアンナ・コス
出演:クリスティーナ・フェルドマン ロマン・ガナルチック イエジ・グデイコ ルチアナ・マレク アルトゥール・ステランコ
キャッチコピー:神さまがくれた色使い。

ポーランドの画家ニキフォルと、彼の晩年を支えた男性を描いた伝記映画「ニキフォル  知られざる天才画家の肖像」です。

1960年のポーランドはクリニツァ。役所で働きながら画家としての活動に励むマリアンは、事務所の一角に小さなアトリエを持っていました。ある冬の日、一人の老人がアトリエに入ってきます。彼の名はニキフォル。マリアンは、アトリエに居座りマイペースに振る舞うニキフォルに大いに困惑します。しかし、肺病に侵された彼を見放す事も出来ず渋々面倒を見始めます。芸術に精通したマリアンには確かな審美眼がありました。アトリエで共に過ごす時間の中で彼は、ニキフォルの絵の素晴らしさに気付きはじめます。そして彼は家族と過ごす時間よりニキフォルの世話を優先するようになり、妻ハンカは不満を募らせ、平和だった家庭に亀裂が生じはじめます。

生涯画家として描き続ける事にこだわるニキフォルとそれを献身的にサポートするマリアンとの微妙な関係がとても切なくて胸が締めつけられます。クリニツァの静寂な雪景色も印象的でした。

私はこの作品を観るまでニキフォルの事を知りませんでした。なので、ここで彼の事を少しお勉強。

ニキフォルは(1895~1968年)は言語障害のため、周囲とのコミュニケーションがうまくはかれなかったため、観光客相手に絵を売る事で生計をたてていました。作品のほとんどは水彩画で、鉄道の駅や汽車、田園風景、聖堂、工場、役所などをモチチーフに生涯4万点もの作品を残したそうです。ニキフォルの才能は晩年に高く評価され、アール・ブリュット(フランス語で「加工されていない生の芸術」という意味で「アウトサイダー・アート」「障害者アート」を指す意味もある)の先駆者としても知られるようになったといわれています。

小柄な老人、ニキフォルを演じるのはなんと男性ではなくクリスティーナ・フェルドマンという女優さん!ビックリです。自由奔放で頑固で偏屈なアーティストを見事に演じ上げています。

久々の芸術家の伝記ものでしたが、とても良質な作品に大満足です。


ニキフォル 知られざる天才画家の肖像@映画生活
前田有一の超映画批評



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パンズ・ラビリンス

2008年06月06日 | ★★★★



パンズ・ラビリンス
おすすめ度
原題:El laberinto del fauno 英題:Pan's Labyrinth
製作:2006年 メキシコ スペイン アメリカ
製作:ベルサ・ナヴァロ アルフォンソ・キュアロン フリーダ・トレスブランコ アルバロ・アウグスティン
監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ
出演:イヴァナ・バケロ セルジ・ロペス アリアドナ・ヒル マリベル・ヴェルドゥ
キャチコピー:だから少女は幻想の国で、永遠の幸せを探した。

第79回アカデミー賞で撮影・美術・メイクアップの3部門を受賞したファンタジー大作「パンズ・ラビリンス」です。

舞台は1944年、内戦終決後のスペイン。仕立て屋だった父を亡くした少女オフェリア(イヴァナ・バケロ)は妊娠中の母(アリアドナ・ヒル)と共に再婚相手の待つゲリラが潜む山奥へと向かいます。独裁政権軍でレジスタンスの弾圧を指揮する冷酷で残忍なヴィダル大尉が新しい父親です。大尉にもそこでの生活にも馴染めないオフェリア。そんな彼女の前に妖精が現れ、森の中の迷宮へと導かれます。そこではパンという迷宮の番人が待っていました。そして、オフェリアを魔法の国の王女であると言い、魔法の王国に戻るために3つの試練を与えるのでした。

うわあ…。

やられました。

ファンタジーもたまにはいいかな?とかなり軽い気持ちで観始めたんですが…。

凄い作品でした。

本が大好きな少女の空想の世界。
内戦が続く中で反りの合わない義父の元での辛い現実の世界。
このふたつの世界が交錯しながら物語が進行します。

あまりにも辛すぎる現実世界。
そんな世界から逃避するために、少女は空想をします。
現実と空想のギャップが悲しくて、虚しくて、とても切ないです。

こんなファンタジー、観た事ないです。

やられました…。


パンズ・ラビリンス@映画生活
前田有一の超映画批評



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ゆれる

2008年06月03日 | ★★★★



ゆれる
おすすめ度
製作:2006年 日本
製作:熊谷喜一
監督・脚本:西川美和
出演:オダギリジョー  香川照之  伊武雅刀 早川 勇 新井浩文  真木よう子
キャッチコピー:あの橋を渡るまでは、兄弟でした。

やっと観ました。色んな人からおすすめされていた西川美和監督の「ゆれる」です。

故郷を離れ、東京で写真家として活躍する弟・猛(オダギリジョー)。母親の法事で久々に帰省し、兄・稔(香川照之)と昔の恋人・智恵子(真木よう子)と再会します。猛と智恵子が一夜を過ごした翌日、3人は渓谷へと向かいます。猛が智恵子を避けるように吊橋を渡り林の中で写真を撮っているとき、智恵子が渓流にかかる吊橋から落下します。その時、近くにいたのは稔だけ。事故だったのか、事件なのか。そしていよいよ裁判がはじまりますが…。

足元がおぼつかない古い吊橋から
下を見た時に沸き起こる不安や恐怖のような——。
まさに「ゆれている」ときの心理を見事に描いた作品。
これ以上ないぴったりなタイトルですね。

香川照之の演技が凄いです。
哀愁漂う背中の演技は本当に惹き付けられました。
洗濯物をたたむ後姿なんてもうたまりません。

幼馴染みの死により今まで封印していた思いが爆発してしまう兄。
華やかな弟の人生とは対照的に家業を継ぎ、いつも人に為に地道に頑張ってきたはずなのに。
淡い恋心を抱いていた幼馴染みの気持ちは弟に傾いていた。
彼女の死に対する罪悪感。

対して

自由気ままに生きてきた自分とは対照的に地元に残り信頼関係を築き上げ周囲からの人望も厚い兄。どんなに頑張ったってあんな風には生きられない。
そんな兄に起こった「事件」
兄の変貌に戸惑う弟。
兄を助けたい、と弁護士の叔父の事務所や刑務所に通うも
それは兄を助けいという純粋な気持ちからなのか?
今までの兄への負い目をこの事件を機に解消したかったのか?
あるいは自分への影響を恐れての行動なのか?
建て前か?本音か?
(全部正解な気もするが。)

物語がすすむにつれ、ふたりに感情移入してしまい何とも言えない気持ちになりました。兄の居る私。自分ならどうするだろう、と考えずにはいられません。



ラストの稔の笑顔がこの作品の唯一の救いでした。


ゆれる@映画生活
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新幹線大爆破

2008年06月02日 | ★★★★





新幹線大爆破
おすすめ度
製作:1975年 日本
製作:
監督:佐藤純弥
脚本:小野竜之介 佐藤純弥
出演:高倉健 山本圭 織田あきら 宇津井健 千葉真一 小林稔侍 福田豊土 山下則文 滝沢双 千葉治郎 志村喬 永井智雄 丹波哲郎

引き続き70年代の作品をば。先日邦画好きの女性からおすすめしていただいた作品「新幹線大爆破」です。この作品、キアヌ・リーブス主演の「スピード」の下敷きになった作品なんだそうです。

約1,500人の乗客を乗せたひかり109号博多行は定刻どうり東京駅を発車します。列車が出発して間もなく、国鉄本社公安本部に109号に爆弾を仕掛けたという電話が入ります。仕掛けられた爆弾はスピードが80キロ以下に減速されると自動的に爆発するというものだったのです。

おすすめしてくれたのは20代のお嬢さんなのですが、何と彼女は健さんファン。うーん、渋いぜ。あんなに目を輝かせておすすめされたら観ない訳にはいきません。きっと凄い作品に違いない!と期待をして観賞。

なんと良い作品でした〜。
期待し過ぎるとがっかりしてしまう事が多いのですが、期待以上の良作!
パニック系サスペンスとしての素晴らしさはもちろんですが、それ以上に心惹かれたのは事件を通じ交錯する様々な人間模様。焦躁、絶望、狂気、様々な心情が描かれた群像劇としての出来も秀逸でした。

自動車工場の経営に失敗し、一家離散してしまった沖田哲男(高倉健)。
渋い。
渋すぎる。
何があっても慌てない。
無駄な台詞は一切なし。
その存在だけでひとりの男の人生を饒舌に語る健さん、男前です。

元過激派で、反骨精神旺盛の古賀勝(山本圭)。
彼は、見ていてとっても切ない。
元過激派ということでも分かりますが、ある意味彼は時代に取り残された男なんですね。志半ばで挫折した改革。その時にぽっかり空いた心の穴を埋めたくてこの犯行を持ちかけたんですね。
何かを成し得るために。
うーん、しょっぱい。

沖田を慕う19歳の元整備工大城浩(織田あきら)。
彼はこの犯行グループの最年少。まだあどけなさが残る素直でかわいらしい青年。事の重大さを本当に分かっていたのかな、と思ってしまうほど幼い。うーん。

挫折という共通点を持った男たちが「誰も血を流さない完全犯罪」を計画し実行に至るまでの犯人側のバックグラウンドが何とも切ないのです。

また、彼らと対峙する

正義感の塊のような男、運転司令長(宇津井健)。
人名救済を第一に、的確に状況を判断し指令を出す優秀な司令官。事件が長引きはじめ非情な決断をせまられる一連の場面は心が熱くなります。

ひかり109号を運行した青木運転士(千葉真一)。
一瞬たりとも気を抜けない緊迫した密室の中でとんでもない運行を強いられます。緊張、焦躁、誰にぶつけて良いか分からない怒り。元SL運転士というプチ情報もはさみつつテンションの高い役をダイナミックに演じています。

…とまあ、こういう究極の状況下なので、当然人間のエゴはむき出しです。乗客たちもまた然り。妊婦、女医、3兆円の取引を控えた商社マンなど様々な事情をかかえた人間たちの背景もきちんと描かれています。

スリリングな展開にハラハラしながら全神経を画面に傾けた2時間半。
これは是非スクリーンで観てみたい作品のひとつです。
どこかでリバイバル上映されないかな?

隠れた名作との出会いに感謝です。

新幹線大爆破@映画生活
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親切なクムジャさん

2008年05月31日 | ★★★★




親切なクムジャさん
おすすめ度
英題:SYMPATHY FOR LADY VENGEANCE
製作:2005年 韓国
製作:イ・チュニョン
監督・脚本:パク・チャヌク
出演:イ・ヨンエ チェ・ミンシク クォン・イェヨン オ・ダルス キム・シフイ・スンシン キム・ブソラ・ミラン
キャッチコピー:最後の復讐が、一番哀しく、美しい。

「復讐者に憐れみを」「オールド・ボーイ」の“復讐シリーズ”第3弾「親切なクムジャさん」です。ちなみに、またしても前作2作品は未見です(笑)。

清楚で美しい容姿からは想像できない残酷な手口で世間を震撼させた幼児誘拐事件の犯人クムジャ(イ・ヨンエ)。彼女は服役中、誰に対しても親切に笑顔で接することから皆から「親切なクムジャさん」と呼ばれ親しまれています。13年間の服役を終えて出所した彼女は、自分を陥れたペク先生(チェ・ミンシク)に復讐するため、出所した囚人仲間に協力を依頼します。

一人の男性の裏切りから人生を狂わされた女性の復讐劇。彼女自身も、わが子を人質にとられ、どうしようもない状況に追い込まれていた被害者のひとりなんですね〜。シリアスなテーマにも関わらず、どこかおどけたコメディ的要素をあわせ持つ作品でした。

ひょうひょうとしたクムジュさん。一見何を考えているかさっぱり分かりません。復讐に関しても、緻密に計画されているようにも見えますが、かなり大胆な手口。詰めも甘く、「こんなんで大丈夫なの?」と、違う意味ではらはらしました。とはいえ終盤ににかけ、あっと驚く仕掛け(?)があり、物は語一気に血生臭い展開になります。

それぞれの性格や心の動きが浮き彫りになる「共犯者」たちが「順番待ち」をするシーンはとても心に残ります。とっても短いシーンですが皆の苦悩に満ちた過去を伺い知る事が出来ます。

またケーキ(ザッハトルテかなあ?すごく美味しそう!)を食べるシーンもなかなかエグい。「ひと仕事」終え何とも言えない空気に包まれた中で、口座番号を差し出すひとりの女性。それに続けと言わんばかりに全員が、メモを渡します。うーん。したたか。人間の本質を垣間見たような気分。ある意味ふっ切れた様子の被害者家族とは対照的に、抜け殻のようになったクムジャさんの姿が印象的でした。

今さらジローですが「復讐者に憐れみを」「オールド・ボーイ」も観てみようと思います〜。

親切なクムジャさん@映画生活
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13/ザメッティ

2008年05月16日 | ★★★★




13/ザメッティ
おすすめ度
原題:13 TZAMETI
製作:2005年 フランス
製作・監督・脚本:ゲラ・バブルアニ
出演:ギオルギ・バブルアニ オーレリアン・ルコワン パスカル・ボンガール
キャッチコピー: 13人のロシアン・ルーレット─それは、運命を狂わせる邪悪なゲーム。

予告編を観て、いい臭いがした「13/ザメッティ」。やっと観ました。

22歳のセバスチャン(ギオルギ・バブルアニ)は、屋根の修理をしながら何とか家族を養っています。ある日、クライアントのフランソワ(フィリップ・パッソン)が薬物の過剰摂取で急死してしまいます。実はフランソワ自身もお金に困っていて、セバスチャンは彼の死によりそれまでの手間代をもらい損ねてしまいます。

フランソワは亡くなる直前に「近々大金を手にする仕事をする」と周囲にもらしていました。そして偶然にその「仕事」をするための“封筒”を手に入れたセバスチャン。封筒の中には、パリ行きのチケット、ホテルの領収書、13と書かれた札が入っていました。

緊迫感のある作品でした。
何となく先が読めるストーリーではあるんですが、そんな事気になりません。だって見せ方が素晴らしいんですもん。最後まで観る者を飽きさせない緊張感溢れる演出、スタイリッシュな映像、演者のパワー。うーん。これはちょっとハマっちゃいそう。観ている間中手汗びっしゃでした(笑)

セバスチャン演じるギオルギ・バブルアニ君の表情がみるみる変わっていくんですね~。温厚で心優しい青年が狂気に満ちた世界に足を踏み入れることで、すっかりサイコな感じに・・・。あの目つきはスゴイ。

サスペンスなので今回もこの辺でお開きとさせていただきます~。
(いまさらですが)サスペンス好きな方にはオススメの1本ですっ。


13/ザメッティ@映画生活
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ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習

2008年05月10日 | ★★★★




ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習
おすすめ度
原題:Borat: Cultural Learnings of America for Make Benefit Glorious Nation of Kazakhstan
製作:2006年 アメリカ
製作:サシャ・バロン・コーエン ジェイ・ローチ
監督:ラリー・チャールズ
脚本:サシャ・バロン・コーエン アンソニー・ハインズ ピーター・ベイナム ダン・メイザー トッド・フィリップス
出演:サシャ・バロン・コーエン ケン・デイヴィシャン パメラ・アンダーソン
キャッチコピー:バカには理解できないバカです

カザフスタンのレポーター、ボラットがドキュメンタリーを撮影するという体で繰り広げられるはちゃめちゃコメディ作品「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」です。

カザフスタン国営放送のレポーター、ボラットは政府の命令で、アメリカの文化を学ぶためにニューヨークへと旅立ちます。早速ユーモア指導、フェミニスト主義の女性団体らと対談します。そこでまさかの下ネタや、女性蔑視満載の言動を繰り返すボラット。そんな彼にあきれ果てる「善良な」アメリカ国民たち。

ある晩ホテルのテレビで見た美女(パメラ・アンダーソン)に一目ぼれしたボラット。彼女のハートを射止めるために当初の予定を大幅に変更し、パメラの住むカリフォルニアへ向かいます。

強烈な下ネタ、人種差別、偏見に満ちた言動、数々の奇行(爆)
こういうのを「問題作」っていうんです!


この作品、公開からもう1年経つんですね。いつもお世話になっているブロガーさんたちのレビューを読んですごく気になっていた作品のひとつ、ようやく観ました~。

あー・お腹痛い。とにかく笑わせていただきました。
力いっぱい真面目に悪ふざけする男たちは最低だけど最高です(笑)

「ボラット」が、イギリスのコメディ番組の人気キャラと知り、なるほど納得。いかにもテレビ的な企画ですもんね。かなり過激なので、人によってはものすごく不快になる作品かもしれないですね~。

あー。笑った・・・。
真夜中のカーボーイのパロディ、イラっとしました(爆)。・・・笑っちゃいましたけど。


ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習@映画生活
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バッド・エデュケーション

2008年05月06日 | ★★★★




バッド・エデュケーション
おすすめ度
原題:La Mala Educación
製作:2004年 スペイン
製作:ペドロ・アルモドバル アグスティン・アルモドバル
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル フェレ・マルティネス ダニエル・ヒメネス・カチョ ハビエル・カマラ ルイス・オマール レオノーラ・ワトリング
キャッチコピー:究極の愛か、欲望か。

スペインの巨匠ペドロ・アルモドバルの半自伝的作品「バッド・エデュケーション」です。

1980年、マドリード。新進気鋭の映画監督エンリケ(フェレ・マルチネス)のもとに、幼馴染のイグナシオ(ガエル・ガルシア・ベルナル)と名乗る美青年が、自作の映画脚本「訪れ」を手に突然訪ねてきます。イグナシオ。それは16年前に少年時代を共に過ごした神学校寄宿舎での親友の名前。久々に再会したイグナシオの印象は随分変わっていました。彼は、アンヘルという芸名で俳優をしていると積極的に売り込んできます。エンリケはそんなイグナシオに違和感を覚えますが、持ち込んだ脚本には、彼ら2人にしか知りえない少年時代の悲しい思い出が描かれていました。脚本を読み終えたエンリケは、創作意欲を掻き立てられ映画化を即決します。しかし、どうしても男を信じることが出来ないエリンケはイグナシオの故郷を訪ね、そこで衝撃的な事実を知ることとなります。

んがあ。

またまた「濃い」作品です。
アルモドバル作品は本当に濃いです。
今回も鮮やかな映像美といかがわしいほど妖艶で濃密な世界を堪能させていただきました~。

ガエル・ガルシア・ベルナルとフェレ・マルティネス。
タイプの違う男前に惚れ惚れ。美しかったです。
ハビエル・カマラ、今回も味わい深い役をコミカルに演じていました。
少年時代のイグナシオを演じていたナチョ・ペレス可愛らしかったです。

脚本も凝ってます。
現在
過去
イグナシオの作品(エリンケの映画)
この3つのエピソードを巧みに交錯させながら観客を謎解きの旅へと誘います。
ぐいぐいと引き込まれ、あっという間の106分。

これが半自伝的だってのがまたスゴイ。監督の人生も作品に負けず劣らず「濃い」んだろうな~。


バッド・エデュケーション@映画生活
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クワイエットルームにようこそ

2008年04月30日 | ★★★★


クワイエットルームにようこそ
おすすめ度
製作:2007年 日本
製作:長坂まき子 今村景子 菅原直太
原作・脚本・監督:松尾スズキ
出演:内田有紀 宮藤官九郎 蒼井優 りょう 妻夫木聡 大竹しのぶ
キャッチコピー:わたしは ここ で 生まれ変わるのだ

「恋の門」に続く松尾スズキ監督長編第2作目、「クワイエットルームにようこそ」です。

雑誌のフリーライターをしている佐倉明日香(内田有紀)は、ある朝目覚めると見知らぬ白い部屋にいました。そこは「クワイエットルーム」と呼ばれる、女子専用の精神病院の閉鎖病棟。自殺願望者、拒食症患者、過食症患者、などなど個性的な患者たちとも馴染めずにひたすら戸惑うばかりの明日香ですが・・・。

松尾スズキの同名小説が原作の、一人の女性の心の葛藤と再生のヒューマンドラマです。

ひたすらハイテンションな「恋の門」とはまた一味違う作品でした。精神病院が舞台ということで重くなりがちなテーマですが、さらりとした描写で独特のユーモアも盛り込まれ、「節」炸裂。

頼りがいなさそうな愛すべき駄目(?)男を演じたクドカン、よかったです。あの不器用な優しさが妙に切なくて。俳優・宮藤官九郎をはじめて素敵だと感じました。

蒼井優ちゃん。今までにないキャラクターを見事に演じてましたね~。でも・彼女はどんな格好をしてもどんなキャラでも、透明感があります(喜)

りょうのナースぶりはカッコーの巣の上での婦長役のルイーズ・フレッチャーを彷彿とさせました。静かに「規則」を重んじるクールなナースぶり、怖くていいです。

もちろん、主演の内田有紀も。難しい役を熱演。なんだか彼女は離婚してから更にキレイになった気がします。

しりあがり寿、塚本晋也 、庵野秀明などなどバラエティ豊かなカメオ出演などなど、とにかく演者が豪華なのもこの作品の魅力のひとつです。

ひと癖もふた癖もある病んだキャラクター山盛りで、テーマもディープなのに、鑑賞後は妙に爽やか。後味のよい作品でした。

一見自分とは関係のない世界のようにも映りますが実はそんな事ない気がします。「あっちの世界」と「こっちの世界」はそれほど隔たりがないのかも。

クワイエットルームにようこそ@映画生活
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ヴェロニカ・ゲリン

2008年04月08日 | ★★★★





ヴェロニカ・ゲリン
おすすめ度
原題:Veronica Guerin
製作:2003年 アメリカ
製作:ジェリー・ブラッカイマー
監督:ジョエル・シューマカー
原作: キャロル・ドイル 
脚本:キャロル・ドイル メアリー・アグネス・ドナヒュー
出演:ケイト・ブランシェット ジェラルド・マクソーリー シアラン・ハインズ ブレンダ・フリッカー バリー・バーンズ サイモン・オドリスコール コリン・ファレル


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ハサミを持って突っ走る

2008年03月31日 | ★★★★



ハサミを持って突っ走る
おすすめ度
原題:RUNNING WITH SCISSORS
製作:2006年 アメリカ(日本未公開)
製作:デデ・ガードナー ブラッド・グレイ ライアン・マーフィー ブラッド・ピット
監督:ライアン・マーフィー
原作:オーガステン・バロウズ
脚本:ライアン・マーフィー オーガスティン・バロウズ
出演:ジョセフ・クロス アネット・ベニング アレック・ボールドウィン ブライアン・コックス

オーガステン・バロウズの自叙伝的小説を映画化したコメディ作品「ハサミを持って突っ走る」です。

アルコール依存症の父と、繊細な心を持つ詩人の母と暮らしていたオーガスティン。諍いが絶えない両親は遂に離婚することになります。そんなある日、母は突然育児放棄します。残されたオーガスティンは母のカウンセラーをしているドクター・フィンチのもとに預けられます。そこに待ち受けていたのは、乱雑にちらかったピンクの家で暮らす奇天烈なな家族たちでした。

強烈な作品でした。まともな人がほとんど出てきません。
これが実体験に基づくお話だってことが、「人生は驚きに満ちている」って感じでした。

アル中の父。
精神不安定な母。
風変わりなドクターフィンチ。
片付けられない女、フィンチの妻アグネス。
父を崇拝する娘ナタリー。
愛していた男から出してもらった大学費用を実父に使い込まれてフィンチの家に養子に出されたホープ。
フィンチの患者で養子の少年性愛者二ール。

みんな間違いなくド変人。でもどこか憎めないから不思議です。

ある日突然生活環境が変わり、パンチの効いた人間に囲まれて生活することを強いられた、弱冠14歳のオーガスティン。フィンチの家では誰もオーガスティンに何もいいません。門限もない、勉強しろとも言われない。「自由」なことに「不自由」を感じ不安になる、居場所が見つけられない。すごく切ないですね。それでも彼は自分を見失わず何とか現状を打破しようともがくんですね~。

あと、アグネスの生き方が切ないんですよね。一生懸命働いてフィンチの学費を作り、いざ医者になってもちっとも生活が安定しない。彼女なりに一生懸命家族を守ろうと必死なのに、報われない。

雑然としたキッチンにオーガスティンが来て涙を浮かべて「グラタンを作って」っていうシーン、たまりません。素直なオーガスティンは無意識にアグネスの心をとかしていくんですね。っていうか、オーガスティンも「母親」を求めていたんですね。

暗~い過去を背負った人たちが繰り成す不条理エピソード満載の作品ですが、観た後妙なすがすがしさを感じてしまいました。

ハサミを持って突っ走る@映画生活
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ホリデイ

2008年03月30日 | ★★★★


ホリデイ
おすすめ度
原題:The Holiday
製作:2006年 アメリカ
製作:ナンシー・メイヤーズ ブルース・A・ブロック
監督・脚本:ナンシー・メイヤーズ
出演:キャメロン・ディアス ケイト・ウィンスレット ジュード・ロウ ジャック・ブラック イーライ・ウォラック
キャッチコピー:人生に一度だけ、誰にでも運命の休暇がある

桜の季節になぜかクリスマスにぴったりの作品を。ハートウォーミングなラブストーリー「ホリデイ」です。

クリスマス休暇直前に失恋をした2人の女性。傷ついた心を癒すため、見知らぬ土地に旅立つ事を衝動的に決心したアマンダとアイリス。ネットを通じて知り合った二人は、ロスとロンドン近郊にあるお互いの家を2週間だけ交換する事になります。新しい土地で彼女たちを待っていたのは、美しい家と思い掛けない出会いでした。

ジャック・ブラックが出てるなあ。と思い何となく手にした作品でしたが、妙にハマったみたいで、不覚にもちょっと泣いちゃいました(驚)お約束の御伽噺だと端からわかっていたのに。(私、疲れてる??)

映画広告の予告編を作るアマンダ、映画音楽を作る作曲家のマイルズ、古きよきハリウッドで活躍した脚本家アーサーなどなど。登場人物が映画界で活躍しているという設定もあり、小ネタが多くて楽しかったです。

両親が離婚した15歳以来涙が出ないアマンダ(それって立派な病気なんじゃ?)。
今の映画界にちょっぴり批判的な元脚本家の老人アーサー。
めっちゃくちゃ可愛いグラハムの2人のお子。



たまりませんな。
私は、老人と子供と弱ってる女性を見るとだめなのです。
ただただ「恋愛一直線」でなかったのが良かったんですねー、きっと。

キャスティングもばっちりで、鑑賞後に「あー、よかった。」と素直に思える作品でした。
何かとお酒を飲んでるシーンが多くて観てると妙にワインが飲みたくなりました。



ホリデイ@映画生活
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さらば冬のかもめ

2008年03月27日 | ★★★★



さらば冬のかもめ
おすすめ度
原題:The Last Detail
製作:1973年アメリカ
製作:ジェラルド・エアーズ
監督:ハル・アシュビー
原作:ダリル・ポニックサン
脚本:ロバート・タウン
出演:ジャック・ニコルソン ランディ・クエイド オーティス・ヤング ナンシー・アレン




さらば冬のかもめ@映画生活
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THE JUON -呪怨-

2008年03月26日 | ★★★★





THE JUON -呪怨-
おすすめ度
原題:THE GRUDGE
製作:2004年 アメリカ
製作:サム・ライミ 一瀬隆重
監督:清水崇
脚本:清水崇 スティーヴン・サスコ
出演:サラ・ミシェル・ゲラー ジェイソン・ベア クレア・デュヴァル ウィリアム・メイポーザー ケイディ・ストリックランド 石橋凌 真木よう子 尾関優哉 藤貴子 松山鷹志



THE JUON/呪怨@映画生活
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