茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

亭主ぶり客ぶり

2008-09-12 10:43:17 | 茶の湯エッセイ
 まだまだ暑いとはいえ、さわやかな風が吹き、セミに変わりやさしい虫の音が聞こえると、着実に季節は移り変わっていると感じます。
 秋になると、お茶会の機会も増えてきます。楽しみにしていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
 大寄せ茶会となると、席中に並ぶのは知らない人の寄せ集めで、濃茶や薄茶を頂くほんの一時間程のおつきあいとなり、お茶でよく言われる“一期一会”を実感するのは難しいものとなります。それでも、抹茶を頂くひととき、季節を感じながら幸せな気分になりますね。
 まだ大寄せの茶会を手伝ったり、伺ったりで、こじんまりした茶事や茶会に参加することは少ない私ですが、少ない茶会経験の中でも様々な方をお見かけします。やはりなんといっても席主の亭主ぶり、正客の客ぶりが素晴らしい時は、席の楽しさも倍増し、勉強にもなり、充実した気分で席をあとにできます。一方で、残念ながらがっかりする席というのもあります。席主が道具自慢に走ったり、正客が全く席主との会話もせず、席の趣向や道具について話が聞けない、客の態度が悪いなど。皆様はいかがでしょうか。

 先日聞いた話にはまたなるほどと思いました。
 ある会で、現役が身内での茶会を開き、OBをお招きしたところ、その席の中で席主に対し、OBは道具吟味をしたり、注意をしたりしたのだとか。結果、その日の為に一生懸命準備した現役は、OBに対して感謝よりも、つまらない気持、不満の方が募ってしまったと。多分、注意したOBも悪気はなかったのでしょう。先輩として茶会とはこういう風にするものとよかれと思って指南したつもりだったのでしょうが、完全に注意する場所を間違えてしまいました。注意するなら、終わった後、「いい席だったけれど、ここはこうした方がよりよくなった」とアドバイスの形にすればよかったのに。
 先日見たテレビ番組で、歌舞伎の勘三郎さんの稽古風景が紹介されていました。彼は役者を大きな声で笑い褒め、ある時は呼んで小声で何かをささやいていました。取材者が「さっき呼ばれていましたけど小声で何を話していたんですか」と聞くと「注意をされていた」。
勘三郎さん曰く、「誰だって人の前で注意されるのは厭でしょう。それぞれ大人でプライドもあるし。」
 アドバイスと注意はちょっとした言い方やされる場所で違ってくるのだろうと思います。
 ちょっと話がそれました。

 先生はおっしゃいます。
「茶道ではまずは基本を知り、守ることが大切。けれど、お茶会やお茶事に行ったら、席主の趣向次第で基本でないことがたくさんある。そういう場では、基本という概念を捨て、亭主の気持ちや道具に込められた心を感じ、思いを汲み、一緒に楽しむ。あの点前・道具立て、間違っているわねと指摘したり、正客に恥をかかせたり、基本を主張したりすべきではない。基本は来るべき本番で臨機応変に動ける為、大きな心で楽しむ為に勉強するのですよ。」
 茶道において“形”や“決まり事”は大切だけれど、それ以上に大切なものは他にある。
 もちろん、“形”や“決まり事”をマスターしなければただの自己流、型なしの茶道になってしまう。日々基本を学びつつ、茶会でどこまでそれを趣向として昇華させていいのかがわかるほどの力量をつけなくてはならない。人を感動させるおもてなし、言葉、相手への思いやり、学ぶことは知識以外にもたくさんあると実感する話だった。

 私も大学茶道部の先輩として後輩の茶会にお招き頂くことがあります。道具や点前はもちろん今参加させて頂く茶会に比べればつたない部分があります。でも、学生らしい取り合わせや一生懸命さの方が嬉しく、茶会に向けて皆で準備し、茶会デビューした自分たちを重ね、懐かしくほほえましく、大いに楽しんでしまいます。
 お稽古とはいえ茶事に参加したり、小間で濃茶を頂く機会などに恵まれるとそれだけで嬉しく感動するばかり、そう言ったら、「それはまだ見るもの全て新しいことばかりで道具などの知識がないからよ」と言われたことがあります。それもそうだけど、年や経験を重ねても、呼んで頂けることに深く感謝し、楽しむ気持を忘れないようにしたいなあと思ったものでした。
 どんなレベル、どんな形の茶会であれ、今自分たちのできる範囲で一生懸命考え、客をおもてなしする、それを客も受け止め、一緒に楽しむ、両方繋がった時に“一期一会”の実感が持てるのではないかと思います。
 秋のお茶会シーズン、大いに楽しみましょう。

プラス思考
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10 コメント

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一期一会 (ユーカ)
2008-09-12 13:33:45
お久しぶりです。
以前、Yukaでコメントさせていただきました。
また拝見させていただきます。
よろしくお願い致します。

現在、海外で茶道を通じた知人が身近にいなくて
寂しい思いがあります。
でも、おっしゃるように、手持ちの不揃いな茶道具
を活用しながら気楽に(言い方が変ですが)楽しめる
サークルをつくろうかと考えています。
私も過去に教えていただいた師匠が知識も深くきちんとした方でした。ですので、お手軽に始めるのも
考えものだなぁ~と。しかし、ふとしたことから
アメリカ人が和菓子をお好きでご自身が、
とても素敵なものを作られお茶を楽しまれている
姿を拝見して、なにも形ばかりにとらわれずに
そこにいる「心持ち」が大切なのかも、と思える
ようになりました。

たまごさんのお話、とてもためになります。
新鮮な気持ちで学ばせていただくことが多いです。
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Unknown (komachi)
2008-09-14 11:09:34
お久しぶりです
気が向いた時だけコメントさせていただいています

 たまご様の先生のお話しは本当に心に響きます。
私はどんなお席でも、ご亭主の客をもてなし、喜んでもらいたいという気持ちが感じられて、いつも喜んで帰ります。私自身のレベルが高くないということなのかもしれませんが、茶会、茶事を催すための準備の大変さを思うと、あれこれ文句をいう気にはなれません。良い事も、感心しないことも他人様の姿から学ぶ事が多くあり有り難い事だと考えるようにしています。
 これからの季節楽しみましょうね。
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良き師♪ (ぶり)
2008-09-16 08:49:10
先生のお言葉とこの記事そのものをシミジミ味わっています。
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一期一会 (m-tamago)
2008-09-17 18:16:40
ユーカさん、お久しぶりです。またご覧いただけるとのこと、うれしい限りです。

>手持ちの不揃いな茶道具を活用しながら気楽に(言い方が変ですが)楽しめるサークルをつくろうかと考えています。
>なにも形ばかりにとらわれずにそこにいる「心持ち」が大切なのかも
素敵ですね。茶道が好きで、できる範囲でやり始めてみるとまた違った風景も見えてくるのではないかと思います。いい道具を見たり、知ったり、使ったりすることも大事で魅力的ではありますが、道具にとらわれてはつまらない。それぞれの環境でそれぞれの茶道への心持ちで取り組みたいですね。

そのサークルの楽しい様子をまた知らせて下さいね。
返信する
嬉しいです (m-tamago)
2008-09-17 18:31:40
komachiさん、こんにちは。
コメント下さり、嬉しいです。

本当に私も先生の言葉は何を聞いても心に響くものばかりです。先生からは茶道の枠を超えて人間として学ぶことが多いです。

>茶会、茶事を催すための準備の大変さを思うと、あれこれ文句をいう気にはなれません。
本当にそうですね。自分で茶会、茶事を催したことはありませんが、年数を重ね、点前だけでなく水屋のお手伝いをするに至って、本番を迎えるにあたっての準備の大変さを知ることができました。

>良い事も、感心しないことも他人様の姿から学ぶ事が多くあり有り難い事
おっしゃる通り。感心しないことも反面教師。いろいろな方と交わって学びたいと思いますし、自分の姿も見られていることを意識して行動しなければと思います。振り返り反省点がいっぱい!
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良き師 (m-tamago)
2008-09-17 18:33:13
ぶりさん、こんにちは。
本当に、先生のお言葉は宝物です。これからも頑張ってたくさんの言葉を聞き、身につけたいと思います。



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お茶会 (チャチャ)
2008-09-18 21:46:26
私も茶道を永くしていると どうも 気がつくところがでてくるようになりましたが でも 客ぶりというのも
勉強だと反省し 楽しむようにしています。
来月 ホテルで無料の茶会を催します。私のようなひよこがするには 道具も経験もないので 批判をうけそうで
不安でいっぱいです。でも 最近は 行動することのほうが大事なようにも感じています。
そんなとき 協力してくれたり やさしい言葉はなりよりの応援で うれしいものです。
一期一会、道具も技術もないので 愛嬌でもてなしますか?(笑)
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客ぶり (ジジのママ)
2008-09-21 20:32:36
大寄せのお茶会できっとバリバリのお茶の先生をされてそうな方がそのお茶会の批判(お道具組や趣向など)をお連れの方に話されていた事がありました。
近くに座っていると聞きたくなくても耳に入って嫌な思いをした事があります。
青年部というまだまだお茶の世界ではひよっこの私たちがするお茶会は道具も立派なものはなくアイデアで趣向を凝らすぐらいのことしかできないお茶会です。
やはりご注意や批判を受けることもありますがその場では皆さんお褒めの言葉だけで水屋や後日にご注意を受ける事がありまたその言葉はとっても勉強になります。
時と場所をわきまえる事で同じ言葉が価値あるものに変わってきますね。
たまごさんの先生のお言葉、私も心に留めてさせていただきました。
素敵なお話ありがとうございます。
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お茶会 (m-tamago)
2008-10-06 09:36:23
チャチャさん、こんにちは。

>来月 ホテルで無料の茶会を催します。
>最近は 行動することのほうが大事なようにも感じています。
お茶会、盛況で大成功だったようですね。おめでとうございます。
一生懸命さというのは伝わるでしょうし、何よりチャチャさんのお人柄のなせるわざですね。
おもてなししよう、楽しもうという気持ちを忘れずにお互い頑張りましょう~。


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客ぶり (m-tamago)
2008-10-06 09:44:54
ジジのママさん、こんにちは。

>時と場所をわきまえる事で同じ言葉が価値あるものに変わってきますね。
本当にそうですよね。ごもっともとは思っても、やはりおおっぴらに注意されるというのは嬉しいことではありませんし、場をわきまえての言葉はその方が本当に自分のことを思ってくれているんだと感じられて素直な気持ちで受け止められますよね。
 お茶の場だけでなく、気をつけようと思います。
 


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