ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその14-生まれてはみたけれど

2012年02月08日 | 邦画
身につまされる風刺喜劇

小津安二郎、言わずと知れた日本の名匠で彼の撮った「東京物語」あまりにも有名である。
独特のテンポで進められる会話・画面構成とも一度好きになったらたまらなく魅力的である。
その彼が撮った傑作喜劇がこの「生まれてはみたけれど」だ。
物語は東京郊外に引越したサラリーマン家庭の兄弟が同じく近所に引越してきた父親の勤める会社の重役の息子とのいきさつから始まる。
兄弟の子分になった会社重役の息子は兄弟の言うことなら何でも聞く様になる。
ある日会社重役の家に招かれた家族はそこで会社での勤務風景を撮った8ミリを見せられる。
自分の父親が一番偉いと思っていた兄弟だったがそこに映し出された光景を見て....。
サラリーマンならこの映画を観ると身につまされる思いがあるだろう。
しかし小津は実にドライに可笑しく物語を綴ってゆく。
私は日本の名匠の中でも小津安二郎は天才肌の監督ではないかと思う。
多分彼ならどんな映画でも撮れたであろう。
しかし小津は後年、常に「親子の関係とはなにか」を問いかける作品ばかりを撮っている。
その最高傑作が前述した「東京物語」である。
「生まれてはみたけれど」は小津の後年の作品を観ている人には是非お勧めする一本である。
1932年公開、サイレント映画。