夫の言動に悩まされて心身の不調を訴える妻の不定愁訴のことです。
妻源病(さいげんびょう)はその反対で、妻の言動に悩まされる夫…(以下略)。
その言葉を知った私は「そんなにしてまで婚姻関係を続けるの?親子関係ではないのだから紙切れ1枚でサヨナラできるのに」と不思議に思っていました。
が、先日のこと。
親戚の老夫婦の関係を聞いてとても驚きました。
親戚の老婦は2年ほど前から認知症を発症していました。
元々とても上品な方だったので、発症後にお会いしても私に「あんた誰?」どころか「どちら様?」とも尋ねません。
ニッコリ笑顔で私を見つめてご挨拶されるだけ。
以前のように、もう私のことを名前で呼びかけることは無くなりました。
その老婦のご主人は、数年前から怪我で入退院を繰り返しつつほぼ寝たきり生活でした。
そのご主人が今年初めにお亡くなりになりました。
するとどうでしょう。
その老婦の記憶力が随分回復してきたそうです。
ご主人はほぼ寝たきり生活だったので、夜中に目が覚めると妻を起こして、あれこれと話しかけたりしていたらしいのです。
老婦は、元々他人に尽くす世話焼きタイプの方だったので、夜中に何度も起こされてもお世話をしていたそうです。
ゆえにご主人が入院中は夜ゆっくり寝られて認知症が回復し、ご主人が退院して家で生活が始まると老婦の認知症が悪化するという生活でした。
それがご主人が亡くなったことで、認知症が回復して、目の輝きが戻ってきたと言うのです。
私はもしかして、これが夫源病?と初めて気がつきました。
そして共依存でもあり、妻源病でもあるのか、と。
世話焼きタイプの妻である老婦が、知らず知らずのうちに夫を依存させることになっていたそうです。
そして長年の生活によって、もう後戻りが出来なくなってしまった状態だったのです。
私が軽く別れればいいのに、なんて思っていた夫源病。
それはそんなに簡単な問題では無いと知ることになりました。
さてその老婦の今。
とっても元気だそうです。
大好きな園芸を楽しんでいるそうです。
認知症は完治しないので時々「お父さん(ご主人)はまだ入院しているから…」という発言はあるそうですが、それ以外は普通の暮らしが出来ているそうです。
老婦は、もう2度と私を名前で呼びかけてくれることはないでしょうけれど、人生の終盤で自分らしい生活ができることはとても大切なことだと気づかされました。