「月ときつねオバさん霜夜物語り」
三日三晩大荒れの風が
油断すると
ピシャリと耐えられず
枝から手を離した
ギザギザ枯れ葉が 思いを残した
頬を打つ
寒風に強張った顔にはこれは 辛い
ヒーッだよ
しっぽがピンと立ってしまう
だからあちこち風のないところ
寒くないところばかり探してうろついた
三日三晩ね
枯れ薄の葎にもぐりこもうとして
数百匹の雀達にどやされ
大きな楠の根方にゆくと
寝ぐらにしていたメス鹿にあわゆく蹴飛ばされにもなった
そしてようやく 辺りをワッセワッセとかき回す風が止んだ!
風・音が止んでホッ!
でも、寒いのは寒い、ドンドン寒い!!
とにもかくにも、立ち止まりとりあえず「どっこいショ!」
お月さんか東の裸木の中で、阿弥陀籤
それを眺めているあいだに いつの魔にか コックリ・コックリ
たぶん食べ物の夢をみたんだね、よだれが出かけて口をぬぐったのを夢うつつに。ミルクの匂いがしていたから、多分マカロニグラタンの夢。
ホタテ貝の貝柱やアサリの味がたっぷり、玉ねぎ、とろとろチーズに焦げたパン粉…
ブルルと震えがきて。あまりの明るさに見上げると、十六夜のお月サンがニンマリ
辺りは霜降りの野に。 フッと見るとシッポが下霜でシッポが白く輝いている。そして前足も頭も
そして霜の青いお仕着せが着せられていたのさ
きつねのおばさんは、霜夜からお月さんの下僕になったとさ。