
雪と立派なつらら、ぎらぎら、キラキラと目に楽しい。
そんな「目立つもの」のすぐ横に、ジッと見ると気持ちがふっと楽になる
場所があるのですね。私たちの世界はこんなコントラストで出来ています。
昨日から始めた連載小説? ホッとするだけの最弱魔法のはなし
「Qure!」2回
僕らがこんな嵐の中、どうして船のデッキの上で耐えているかといえば風が
突然向きを変えて、三十枚以上もある船の帆に異常が起きたとき、近くに誰か
いないと船が危険だからだ。降りるわけにもいかなし、これほど異常な体験だと
反対に笑いがこみ上げてくる。
三十名の同級生と船長以下乗組員、それとダーレン先生。生徒の教育ロボット
「セイラー」達を含めた約百名の命がこの船に命を預けている。
ペリオディック号、この船の名前だ。もしも僕らの一人が今日のように甲板の
上をどうどうと流れる海水に足をすくわれて、真っ暗な海へ落ちることになっても、
転落者の捜索はしないで航海を続けると、乗船時に船長に脅されているが本当だろうか。
同じ当直のノエルが時刻を告げる真ちゅう製の鐘、タイムベルを叩きにいったそのとき、
「うわーっ たっ、助けてくれー!」
しりもちをついた格好のまま彼が甲板上を海水と一緒に滑り下っていくのが見えた。

「あっ! ノエル! おい!」
思わず僕が声を上げた瞬間、今まで僕の隣に座っていた白い塊がすっと立ち上がり、
見事なフットワークで船の手すりに向かって走ったかと思うと、海に落ちる寸前に
助け上げた。そのまま僕らのところまで軽々と彼を運んで静かに降ろす。
「セイラー」はこの船に何十体か乗り組んでいる作業員ロボットだが、3号、5号、7号、
とバラバラな番号で呼ばれていて正確な数はわからない。この船の機関長の発明品だ。