q≠0,1の非負整数
の位数∞の整数解について考える。結果を先に記すと以下のとおりである。
(命題) 楕円曲線E: q≠0,1の非負整数 の位数∞の整数解はqが以下のときに限り存在する。
l,k: 自然数、n:0でない整数
このとき、は位数∞の整数解。また、 は位数2の整数解であり、
(説明)
(x,y)が楕円曲線Eの整数点とする。 (lは自然数、nの素因数の指数は1) と平方数と非平方の積に分けると、
は (kは自然数)
でなければならない。したがって、
より
となる。nを-nとすれば求める式となる。この時
よって、
は、Eの整数点となる(位数∞であることは示す必要がある)。
次に PとQ= (1,0)を結ぶ直線の方程式は
であり、この直線とEの交点のうちP,Q以外の点は である。
したがって、P+Qはこの座標のy座標の符号を逆転させた点である。 (説明終)
この命題より、Pが整数点のとき P+Q も整数点になるのはkがlの倍数になっている時に限る。
また、Pの整数倍は整数点にはなりそうもない。よって、異なる(l,k,n)に対しqの値が同じになれば楕円曲線Eのランクが2以上になる可能性が高い。
簡単のために以下l=1とする。この時、
である。k,nの値が小さい場合のqの値を計算してみると下表のとおりである。
k n |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
2 |
3 |
9 |
19 |
33 |
51 |
73 |
99 |
129 |
163 |
3 |
7 |
16 |
31 |
52 |
79 |
112 |
151 |
196 |
247 |
4 |
13 |
25 |
45 |
73 |
109 |
153 |
205 |
265 |
333 |
5 |
21 |
36 |
61 |
96 |
141 |
196 |
261 |
336 |
421 |
6 |
31 |
49 |
79 |
121 |
175 |
241 |
319 |
409 |
511 |
7 |
43 |
64 |
99 |
148 |
211 |
288 |
379 |
484 |
603 |
8 |
57 |
81 |
121 |
177 |
249 |
337 |
441 |
561 |
697 |
9 |
73 |
100 |
145 |
208 |
289 |
388 |
505 |
640 |
793 |
(赤字は、素数)
この表より、素数ではq=73,31,79 について異なる(l,k,n)の組よりその値が得られる。そこで、上の命題より整数点を求めてみると、
● q=73:
(l,k,n) = (1,6,2) のとき P1=(-1,12) が整数点。 P1+Q=(37,216)
= (1,1,9) のとき P2=(-8, 9) が整数点。 P2+Q=(9,8)
であり、P1+P2=(499/49, -5760/343), P1-P2=(19,-72) となる。
CoCalcで計算すると、この場合の楕円曲線の有理点群のrankは2である。
● q=31:
(l,k,n) = (1,3,3) のとき P1=(-2,9)が整数点。 P1+Q=(11,30)
= (1,1,6) のとき P2=(-5,6)が整数点。 P2+Q=(6,5)
であり、P1+P2=(9,-20), P1-P2=(33,-184)となる。
CoCalcで計算すると、この場合の楕円曲線の有理点群のrankは2である。
● q=79:
(l,k,n) = (1,5,3) のとき P1=(-2,15)が整数点。 P1+Q=(27,130)
= (1,3,6) のとき P1=(-5,18)が整数点。 P2+Q=(14,39)
であり、P1+P2=(9,4),P1-P2=(129,-1456)となる。
CoCalcで計算すると、この場合の楕円曲線の有理点群のrankは2である。
なお、83 以外のq<100の素数で楕円曲線Eの有理点群のrankが2となるのはこの3つのみである。83については、Cocalcで計算結果が出なかった。
● q=421:
(l,k,n)=(1,1,21), (1,5,12), (1,9,5), (2,7,4), (3,11,-3) が条件を満たす。
ここで が解ならば も解、 が解ならば も解、なのでそのような解は除いた。他にも解があるかもしれない。
CoCalcで計算すると、この場合の楕円曲線の有理点群のrankは3である。
qをうまく定め、多くの整数点を有するようにすれば、対応する楕円曲線Eのrankは大きくなる可能性があると思われる。