地面の目印 -エスワン-

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メモ8 (ある楕円曲線の整数解)

2019-06-16 14:03:39 | 数学

 q≠0,1の非負整数 

の位数∞の整数解について考える。結果を先に記すと以下のとおりである。 

 

(命題) 楕円曲線E:   q≠0,1の非負整数 の位数∞の整数解はqが以下のときに限り存在する。

     l,k: 自然数、n:0でない整数

このとき、は位数∞の整数解。また、 は位数2の整数解であり、

    

(説明) 

(x,y)が楕円曲線Eの整数点とする。 (lは自然数、nの素因数の指数は1) と平方数と非平方の積に分けると、 

    は   (kは自然数)

でなければならない。したがって、

    

より

    

となる。nを-nとすれば求める式となる。この時

     

よって、

    

は、Eの整数点となる(位数∞であることは示す必要がある)。

 

 次に PとQ= (1,0)を結ぶ直線の方程式は

    

であり、この直線とEの交点のうちP,Q以外の点は    である。

したがって、P+Qはこの座標のy座標の符号を逆転させた点である。            (説明終)

 

この命題より、Pが整数点のとき P+Q も整数点になるのはkがlの倍数になっている時に限る。

また、Pの整数倍は整数点にはなりそうもない。よって、異なる(l,k,n)に対しqの値が同じになれば楕円曲線Eのランクが2以上になる可能性が高い。

 

簡単のために以下l=1とする。この時、

 

である。k,nの値が小さい場合のqの値を計算してみると下表のとおりである。

        k 

   n 

3 

19 

33 

51 

73 

99 

129 

163 

16 

31 

52 

79 

112 

151 

196 

247 

13 

25 

45 

73 

109 

153 

205 

265 

333 

5

21

36

61

96

141

196

261

336

421

6

31

49

79

121

175

241

319

409

511

7

43

64

99

148

211

288

379

484

603

8

57

81

121

177

249

337

441

561

697

9

73

100

145

208

289

388

505

640

793

                                (赤字は、素数)

この表より、素数ではq=73,31,79 について異なる(l,k,n)の組よりその値が得られる。そこで、上の命題より整数点を求めてみると、

 

● q=73:

(l,k,n) = (1,6,2) のとき P1=(-1,12) が整数点。 P1+Q=(37,216)

      = (1,1,9) のとき P2=(-8, 9) が整数点。 P2+Q=(9,8)

であり、P1+P2=(499/49, -5760/343), P1-P2=(19,-72) となる。

CoCalcで計算すると、この場合の楕円曲線の有理点群のrankは2である。

 

● q=31:

(l,k,n) = (1,3,3) のとき P1=(-2,9)が整数点。 P1+Q=(11,30)

   = (1,1,6) のとき P2=(-5,6)が整数点。 P2+Q=(6,5)

であり、P1+P2=(9,-20), P1-P2=(33,-184)となる。

CoCalcで計算すると、この場合の楕円曲線の有理点群のrankは2である。

 

● q=79:

(l,k,n) = (1,5,3) のとき P1=(-2,15)が整数点。 P1+Q=(27,130)

         = (1,3,6) のとき P1=(-5,18)が整数点。 P2+Q=(14,39)

であり、P1+P2=(9,4),P1-P2=(129,-1456)となる。

CoCalcで計算すると、この場合の楕円曲線の有理点群のrankは2である。

 

なお、83 以外のq<100の素数で楕円曲線Eの有理点群のrankが2となるのはこの3つのみである。83については、Cocalcで計算結果が出なかった。

 

●  q=421:

 (l,k,n)=(1,1,21), (1,5,12), (1,9,5), (2,7,4), (3,11,-3) が条件を満たす。

 ここで が解ならば  も解、 が解ならば  も解、なのでそのような解は除いた。他にも解があるかもしれない。

 CoCalcで計算すると、この場合の楕円曲線の有理点群のrankは3である。

 

 qをうまく定め、多くの整数点を有するようにすれば、対応する楕円曲線Eのrankは大きくなる可能性があると思われる。

 


メモ7 (ある楕円曲線の有理数解 その2)

2019-01-27 10:40:48 | 数学

 メモ6で p=113のとき、 の位数∞の有理数解について記した。これは、本ブログの4次楕円曲線 その2 で述べた予想

   (予想)

   素数pがp≡±1 (mod8)のとき、次の楕円曲線C

            

   の有理数解のなすアベール群のランクは1である。

 

に関連していることを示した。ここでは、ある条件で得られるp≡1(mod8) の素数について、楕円曲線

 

        (A)

 

の位数無限大の有理数解を求める方法を記す。

 楕円曲線(A) は

  

とも書ける。ここで、 と  がともに有理数の平方になるようなTが求まれば楕円曲線(A) の有理解が求まることになる。そこでCocalcを用いてpが小さい場合に生成元及びその2倍を求めてみた。

 

 このように生成元も若しくはその2倍について、 及び  がともに有理数の平方になることが期待される。そこで、正の有理数a,bを用いて

 

とおき、Tを消去すると

 

  の分母の最小公倍数を δ とすれば

    ただし、

である。よって、この方程式の整数解 をR,E,δ のうち  を満たすものを求めれば楕円曲線(A) の有理点が求まることになる。

 

 上の表で  及び  が ともに有理数の平方となる有理点についてR,E,δを求めδ, R+E, R-Eを記したのが下表である。なお、δ, R, Eはすべて自然数とする。

この表より と書けることが期待される。そこで以下と仮定する。

そのとき、

      の自然数解 R,E,δ について  が平方数であれば

 は楕円曲線(A)の有理点である。

 

 まず、

RとEが互いに素な場合、の自然数解 R,E,δ は自然数m,nを用いて

 

と書けることに注意する(RとEが素でない場合について、最後の(追記:2019.5.12)を参照)。

  のとき、  より

     

  のときは、

     

である。したがって、R+EおよびR-Eは平方数と平方数×2のペアであることがわかるが、上表を見ると p=41及び113,137以外は、平方数がpの2乗を因子を含むことが特徴的である。p=41及び113,137の場合も生成元の2倍を用いればR+Eが平方数かつpの2乗の因子を含むことがわかる。そこで、以下の2つのケースを仮定して検討する (2x平方数の方がpの2乗の因子を含む場合は(追記:5.12)を参照)。

ケース1:R+Eが平方数でpの2乗の因子を含む

ケース2:R-Eが平方数でpの2乗の因子を含む

ケース1の場合:

 

なので、n=pn’ と分解される。したがって、pδ=2mnより、 よって

  この条件はmとn'が平方数であれば満たされる。

    

より R-pδ が平方数であるための条件を考える。まず,自然数 α,βにより

 

とあらわされる場合を考える。例えばn及びmが奇数の場合である。上表の場合はそうなっている。なお、この場合はnが偶数のとき、mも偶数となるので、mとnは互いに素ではなくなる。

m>nとすれば

 

したがって、mが平方数とすれば、自然数c,dにより

   

となる。このとき、

  がp×平方数となればすべての条件が満たされることになる。

m<nのときは

   

したがって、mが平方数とすれば、自然数c,dにより

   

となる。このとき、

   がp×平方数となればすべての条件が満たされることになる。

 

以上より、ケース1の場合は、以下の(x,y)が有理点となる。

  

ケース2の場合:

   

なので、n=pn’ と分解される。したがって、pδ=2mnより、よって

   この条件はm, n'が平方数であれば満たされる。

   

より R-pδ が平方数であるためには,ケース1の場合と同様の考察により、自然数α,βにより

   

とあらわされる。ケース2の場合は、m>nであるので、

   

したがって、mが平方数とすれば、自然数c,dにより

     

となる。このとき、

    がp×平方数となればすべての条件が満たされることになる。

以上より、ケース2の場合は、以下の(x,y)が有理点となる。

    

上表にあげたのはp=97を除き、すべてケース1の場合であった。

上の議論を振り返ると、ケース2はケース1でをーEに置き換えた場合に相当する。また、m>nとm<nの違いはβを-β、つまり、dを-dに置き換えた違いに他ならない。

したがって、cを自然数、dを整数としたときに、

    とおき、nがp×平方数の形になれば、以下の(x,y)が楕円曲線(A) の有理点となる。

    

次に

  

とあらわされる場合を考える。上に記した場合と同様議論を行うと

  がp×平方数となればよい。このとき、以下の(x,y)が楕円曲線(A) の有理点となる。

    

 

 表1は、200以下のp≡1(8)の素数について、c,|d|が3000以下の時に、n'が自然数の平方になるケースを示したものである。なお、pに対応する(c,d)のペアは1つとは限らず、表はそのうちの一つのみ掲載している。あわせて上に示した式より有理点を具体的に求めた.

 

表2は、200以上1000以下のp≡1(8)の素数について、n'が自然数の平方になるケースを示したものである。なお、pに対応する(c,d)のペアは1つとは限らず、表はそのうちの一つのみ掲載している。

がp×平方数の形をしている場合は、である。

がp×平方数の形をしている場合も、である。

表からわかるように、1000以下の素数でもcまたは|d|はかなり大きな数となるようである。

このうち,857、977についてはCoCalcより求めた有理点より逆算した。また、929については、CoCalcでも求められなかった。

 

 結局、自然数c, 0ではない整数dに対し

 または  がp×平方数の形をしていれば、楕円曲線  は位数∞の有理点を持つことになる。

問題は、すべてのp≡1(8)の素数が、この条件を満たすかどうかである。

(2019.4.30 一部修正)

 

(追記:2019.5.3)

p=929のとき、CoCalcで gens() として楕円曲線(A) の有理点を求めるとうまくいかないが,  これをgens(descent_second_limit=16)とすると解が求まった。limitのデフォルトは12 である。この解よりc,d,m,nを求め表2を補った。

 

(追記:2019.5.12)

・RとEが互いに素な場合、pで割りけるようである。その場合R/p, E/pをR,Eに置き換え同様の議論を行うと  がpx平方数の場合に帰着する。

・2×平方数の方がpの2乗の因子を含む場合についても、詳細は省略するが、  がpx平方数の場合に帰着する。

 


メモ6 (ある楕円曲線の有理数解)

2018-12-02 12:31:38 | 数学

 いきなりであるが、素数pをp≡±1 (mod8)として   の位数∞の有理数解を考える。CoCalcを用いればすくなくともpが小さい時は、なんらかの解を出してくれる。

ところが、p=113とするとエラーとなってします。どうしたらよいか。

 

 またまた、話は変わって、本ブログの4次楕円曲線 その2 で素数pがp≡±1 (mod8)のとき、次の楕円曲線C

   

の有理数解のなすアベール群のランクは1であるとの予想を述べた。また、p<100についてCoCalcで求めた位数∞の有理数解の表を示した。ここで

  

なる楕円曲線C'を考え、C,C'の有理数解のなす群をそれぞれC(Q)、C'(Q)とあらわすと

次式であらわされる写像 C(Q)→C'(Q) がある。

  

 この関係式を用いてCの有理数解からC'の有理数解を求めることを考える。

 p=113のとき、Cの位数無限大の有理数解を同じくCoCalcで求めると、どういうわけかエラーメッセージが出てしまうが、その中に、(x,y)=(-41,1020)が有理数解であることが示されている。この解を上記の関係式を用いて(T,U)に変換すると (15361/144,-865045/1728) が得られ、冒頭の問題が解決できた。尤も位数が∞であることを示す必要はあるが。


メモ5 (楕円曲線のランクの計算例)

2018-09-16 17:50:47 | 数学

 の有理点についてSilvermanとTateによる”Rational Points of Elliptic Curve”(1994年第2版。 以下、[Sil]と記述する。)に説明があった(p97からのExample 4)。それによると、

 

A. rankは2以下

B. p≡7 または 11(mod 16)のとき rank 0

C. p≡3, 5,13,15 (mode) のとき rank 1と予想されている。

D. p≡1(mod 8)のとき rank 0 または 2 と予想されている。

 

AとB(p≡7(mod 16))は演習問題(p105の3.8)になっている。AとBは以下のようにしてわかる。                                                 

 先ず、[Sil]記載の関連事実を整理する。

 

①モ―デルの定理(P88):

 Cを以下の方程式で与えられる整数係数3次非特異曲線とする。

  

この時、C上の有理点のなす群C(Q)は有限生成アーベル群である。

 

②命題1 (P79):

 CとC’を以下の式で与えられる整係数の楕円曲線とする。

       

ここで、   

T=(0,0) とし、O, O’をアーベル群C, C'の零元とするとき

 (a) 以下で定義される準同型 Φ:C → C' があり、その核は{O,T}である。

 

 

 (b)  (a)と同じプロセスをC'に施すと、Φ’:C' → C'' があり、C''は(x,y)→(x/4,y/8)によりCと同型である。したがって、以下で定義される準同型 ψ:C' → Cがある。

 

 また、  は、2倍写像  である。

                                                         

③命題2(P85, P91):

 注:命題2と[Sil]に記されているわけではない。

C, C'は命題1と同じ楕円曲線、Γ=C(Q)、Γ’=C’(Q)とおき、rをΓのランク、

 

α:Γ → Q*/Q*2を

 α(O)=1 (mod Q*2)

 α(T)=b (mod Q*2)

 α(x,y)=x  (mod Q*2)

 

とし、α’:Γ’ → Q*/Q*2も同様に定めるとき、以下が成り立つ。

 

 αは準同型である。また、=#α(Γ)・#α’(Γ’)/4 である。

 

④ランクの求め方(P93)

i. かつy≠0 ならば 

   ここで、の約数 

と書ける。

ii. したがって、方程式 ここで  に解(M,e,N)、M≠0がある時、楕円曲線の有理点が見つかり、はαの値域に入ることになる。

 

 

以上の準備のもと、A.とB.を証明してみる。

今、   とする。

A. rankは2以下 を示す。 Cについてb=pなので、 として1,-1,p,-pが考えられる。対応する方程式は

(i) 

(ii) 

(iii) 

(iv) 

 

である。(ii)と(iv) にM≠0となる解はない。よって (mod Q*2)である。

C’ついて b=-4pなので、 として±1、±2、±4、±p、±2p、±4pが考えられる。上と同様の考察により。考えるべき方程式は

(i) 

(ii) 

(iii) 

(iv) 

(v) 

(vi) 

(vii) 

(viii) 

(ix) 

(x) 

(xi) 

(xii) 

の12個である。よって、

(mod Q*2)

である。ここで1と4、-1と―4、pと4p、-pと-4pはmod Q*2 で等しいので、 

(mod Q*2)

である。

よって、③より、 =#α(Γ)・#α’(Γ’)/4≦2・8 / 4 =4 

したがって、r≦2 となる。

 

B. p≡7 または 11(mod 16)のとき rank 0 を示す。

(i) については (M,e,N)=(1,0,1) なる解がある。

(ii) 

 M偶数とするとNも偶数なので矛盾。したがって、Mは奇数。同様にNも奇数

    e偶数とすると  矛盾。

    e奇数とすると  矛盾。よって(ii)の解はない。

(iii)  N偶数なので2N'とおく。M,eは奇数。

   より  よって p≡1または15(mod16)

(iv)  N偶数なので2N'とおく。M,eは奇数

   よって、p≡1または3(mod16)

(vi)  N,eは奇数 M偶数のとき 

 よってp≡1(mod8) である。 

M奇数のとき  よって、p≡5(mod8)である。

(vii)  M,Nは奇数 e偶数のとき  

よってp≡1(mod8)

e奇数のとき よってp≡5(mod8)

(viii)  M,Nは奇数 e偶数のとき 

よって、p≡7(mod8)

e奇数のとき  p≡3(mod8)

(ix)   (iv)でM,eを入れ替えた式に相当する。よって、p≡1または3(mod16)

(x)   (iii)でM,eを入れ替えた式に相当する。よって、p≡1または15(mod16)

(xi)   (ii)でM,eを入れ替えた式に相当する。よって、(xi)の解はない。

 

以上より、p≡7 または 11(mod 16)のとき、(ii), (iii),(iv),(vi),(vii),(ix),(x)の解はない。

よって、 (mod Q*2)

=#α(Γ)・#α’(Γ’)/4≦2・2 / 4 =1 より r=0 となる。 

 


メモ4 (楕円曲線の加法公式)

2018-08-05 17:47:46 | 数学

楕円曲線にアーベル群の構造が入ることはよく知られており、加法の定め方も良く説明されているが、P=(x1,y1)とQ=(x2,y2)が楕円曲線上の点である時、P+Qの座標値をPとQの座標値から明示的に示す式は、演習問題としてよく出される。但し、具体的な式にはあまりお目にかかれないので、ここに書き留めておきたい。

 

 Weiestrass 標準形 

     

で考えると複雑になるりすぎると思われるので、a1=a3=0のケース、すなわち

    

で考えることとする。

 楕円曲線上の原点でない2点をP=(x1,y1)とQ=(x2,y2)とする。

 

○ x1≠x2の場合

PとQを結ぶ直線の方程式は

    

とあらわされる。この直線が楕円曲線と交わるもう一つの点をR=(x3,y3)とすると、P+Q=-R=(x3,-y3) である。最初にx3を求める。

    

より、x3の次数に沿って整理すると、

     

ここで、b’、c'はx1,x2,y1,y2の有理式。根と係数の関係より、

   

また、y3については   

     

である。したがって、

   

本当は、x3などは使わずもっと直接的に書きたかったが、見通しが悪くなるのでやめた。

 

○ x1=x2 の場合

P≠Qであれば、P+Qは原点。

P=Qのときは、Pで楕円曲線に対する接線を引き、楕円曲線と接線とのもう一つの交点をR=(x3,y3)とすると、P+Q=-Rである。楕円曲線の方程式を微分して

   

よって、接線の方程式は、

    

楕円曲線と接線の交点は、

   

より、

   

ここで、b‘’、c‘’はx1,y1の有理式。根と係数の関係より、

    

また、y3については   

      

よって、

   

である。最初に大見えを切った割には大した結果になりませんでした。悪しからず。