地面の目印 -エスワン-

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4次楕円曲線 その2

2018-07-16 18:39:42 | 数学

 その2と書いたが、以前書いた4次楕円曲線の記事とのつながりはない。また、内容のほとんでは、通常の3次の楕円曲線である。前置きはこれくらいにして、楕円曲線

   

 の有理点を考える。ここでmは平方因子を持たない自然数とする。mが正の有理数のときは、

    ここでm’は平方因子を持たない自然数。aは有理数。 

とすれば

   

となるので、mが正の有理数のときでも平方因子を持たない場合に帰着できる。

 

 Q上の楕円曲線の有理点全体は有限生成アーベル群(モーデル・ヴェイユ群)であることが知られている。今、この群の階数(ランク)を考える。Cocalcによるm<100の結果から

 

予想

   mが奇数のとき、m≡1または7(mod8)の時、ランク1

           m≡3まはた5(mod8)の時、ランク0

   mが偶数のときは、改めて 2m (mは平方因子を持たない奇数)と書き換えれば

           m≡5または7(mod8)の時、ランク1

           m≡1または3(mod8)の時、ランク0

を立ててみた。この予想の例外は、m<100では、m=21, 51, 85の時のみであり、その時のランクは2である。ちなみにm<100のモ―デル・ウェイユ群のランクと位数無限大の生成元は下表のとおりである(予想が成り立たない場合を黄色で網掛けした。)

上の予想は、mが奇素数のとき、m≡1まはた7(mod8)のときランク1、それ以外ではランク0となる。

反例があれば教えていただけれありがたいです。

    

ちなみに、yの2乗がxの2次式のとき、つまり

  

の場合は、(0, m)という有理数解があるので、有理数解をパラメータ表示できる。

 

xの4次式の場合、つまり

  

のときは、式を変形して

  

であり、

  

は、4次楕円曲線の記事の方法でWeierstrass標準形に変形すると

  

であり、この楕円曲線のランクは1であり、(-1,1/2)という位数無限大の生成元を有する。

 したがって、元の4次楕円曲線  さらには、 についても、mが何であっても無限個の有理数解を有する。


メモ3

2018-05-20 11:32:33 | 数学

  を満たす有理数は、の場合のみである。

 

 なぜなら、両辺を掛け合わせると、  したがって、 これが成立するのはの場合に限る。とすると、である。とするととなり、である。とすると、となる。とするととなり、。したがって、必ずとなる。

 

同様に 非平方有理数について

を満たす有理数は、の場合のみである。

 

なぜなら、2式の両辺にをかけると

 よって、より、上に述べたことよりとなる。その時、元の式に戻るとである。は非平方有理数であるので、これが成り立つのはのときに限る。

 

異なる非平方有理数については、

 は  と非自明の例がある。


タクシー数 その11

2018-05-04 09:26:30 | 数学

 タクシー数 その10 で真の意味において実2次体の5乗和で2通りに表せる例を示した。ここでは、その求め方を記しておく。

…(A)

の有理数解 k, δ, b について

 

とするとき、

 

であった。ここでt、t'が有理数の2乗であれば、s≠s'のとき2通りの5乗和で表されることがわかる。なぜなら、とすると5乗和が等しいので  これより となり矛盾。とすると 両辺を足して となり矛盾。

 とおくと  であるので(A)は、

 

となる。左辺の中カッコ内をv、また、r=δ/kとおくと

 

但し、

  とおくと、上の等式は

  となる。この有理数解が存在するとしてその一つを  とすると、一般解は、有理数gを用いて

  である。よって

  より 

  より

よって、T=mgとおきkをTを用いて表すと、上式は

  

となる。上式の左辺をYとすれば、このY,Tに関する4次式が有理点を有する、つまりT,Yに関する楕円曲線となれば、uが有理数解として求まる。

 

次にuとu’の関係からu'の満たすべき関係式を求める。

  より

  したがって、

 

 

 と の右辺はともにTの2次式の積である。積の左項は同一、右項はrの関数と見た時、rを-rに置き換えた式となっている。この式の左辺をY'とすれば、Y'、Tに関する4次式の有理点を求めればu'が求まる。

 

次に、の解を具体的に求め、u,u'が有理数となる場合を探してみる。

  

より

 が有理数の平方のとき、  は解である。

 が平方数でない場合、r=-7/15の場合など個別の解は見つかるがパラメータ解についてはよく分からない。

そのため、以下、 は平方数、であるとする。このとき、

 

である。この2つの3次式の有理点で共通のT座標を有する点が見つかれば、有理数の5乗和で2通りに表される例が見つかることとなる。

よりY, Y'に共通T座標の有理点があれば、 にも共通T座標をもつ有理点がある。結局、これらTについての3つの3次式または4次式のうち2つに共通のT座標を持つ有理点が見つかれば有理数の5乗和で2通りに表される例が見つかることとなる。

 

 タクシー数 その10であげた実2次体の5乗数で2通りに表される例を求めてみる。

➀ 片方が有理数の場合

r=-3/5とする。また、 とする。

この時、Yの式は

 

変形して

 

を得る。この楕円曲線の有理点の位数0の生成元をCoCalcにより求めると

 (18176,523776) と (39625,442875)

を得る。前者からは、 が負となる解が得られる。したがって、実2次体の例にはならない。

後者から、 なる解が得られる。

これをもとに、をもとめ、共通因子を排して、

 

を得る。

 

② 双方が実2次体の例

 とする。

 の の係数 が平方であれば、この4次式は有理点を有する。  とおくと、

 

これが、有理数の平方となるためには、つまり の有理数解を求めればよい。この一般解は、 である。一方、 なので、

 ともパラメトライズされる。 より  を得る。

よって、jを平方として  とすれば、4次式が有理点を有することになる。

  とおけば、

  よって、

 

これを本ブログの「4次楕円曲線」に記した手法でWeierstrass標準形に変換して有理点を探せばよい。

 

今、j=4したがって、r=-15/17とすれば、楕円曲線

 

を得る。この楕円曲線の位数0の有理点をCoCalcにより求めると

(-646647040/24137569,-4628556134400/118587876497), 

(-154717983680/6975757441,-2457482401059840/582622237229761), 

(-525982144/24137569 , -659062103040/118587876497)

を得る。

 最初の生成元より、逆変換してTの値を求め、Yの2乗を計算すると負の値になる。したがって、実2次体の例とはならない。この生成元の2倍は、

(41608541225/96550276,12315552262099515/948703011976)

となり、同様の計算をすると以下が得られる。

   

これをもとに、をもとめ、共通因子を排して、

を得る。 

 の有理点のうち、Yの有理点となるものがないか、いくつかのrについて計算したが、なかなか有理点にはなりそうもない。やはりあてずっぽうではうまくいかない。

 どなたか一緒に探しませんか。


タクシー数 その10

2018-04-15 15:35:00 | 数学

 タクシー数(9)で 実2次体整数の5乗和で2通りに表せる例をたくさん探し出す方法をみた。そこで示した例は、右辺と左辺で異なる2次体に属するので本当の意味では実2次体整数の5乗和で2通りに表せる例とは言えなかった。

 真の意味で実2次体整数の5乗和で2通りに表せる例として以下がある。

 

 これらの等式は幾つでも作れそうである。そのの求め方は、次回報告したい。しかし、√ が外れる例は今のところ見当もつかない。


フェルマー方程式n=3の近似解

2018-01-28 10:39:12 | 数学

方程式  (n:3以上の自然数)に自然数解(x,y,z)は存在しない、というフェルマーの最終定理は、1995年にワイルズにより最終的に解決をみた。

 n=3の場合は18世紀にオイラーにより既に証明されていたとのことである。しかし、否定的解決というのは、どうも面白くない。「存在しない」より「存在する」方がなんだか有難い。ここでもラマヌジャンが鬼才を発揮してくれた。

 

は言わずと知れたタクシー数である。これは2通りに自然数の3乗の和であらわされる最小の数、というように説明されるが、

  

と書くと、もう少しでn=3の場合のフェルマー方程式の解になることがわかる。これだとなんだかな、という感じだが

  

くらいになると、「ウーム、惜しい」とうめきたくなる。

 ラマヌジャンは、このような例が無数にあることを示してくれた。まず、 を以下により定義する。

 

この時、 が成り立つ。ちなみにnが小さい時のの値は次のようになる。

 (以上、出典:「ひとけたの数に魅せられて」、マーク・チャンバーランド著、川辺治之訳、岩波書店(2016)のP107 )

 

 どうして、こんな式を思いついたんだろうと誰もが不思議に思う。例えば、Hirschhorn氏は、以下の論文[1]、[2]、[3]でラマヌジャンはおそらくこのようにして導いたのだろうと書いている。

 [1] M.D.Hirschhorn, An amazing identity of Ramanujan, Math. Mag. 3 (1995), 199-201

 [2]  M.D.Hirschhorn, A proof in the spirit of Zeilberger of an amazing identity of Ramanujan,

       Math Mag. 4 (1996), 267-269

 [3]  M.D.Hirschhorn,  Ramanujan and Fermat’s Last Theorem, Austral. Math. Soc. Gazette., 

      Vol.31, pp.256–257, 2004.

 

 2通りに自然数の3乗の和として表わされる自然数にはパラメーター解があることが知られている。[3]では、パラメータ解から、上で示したような近似解列を導いている。

 本ブログの「タクシー数」でそのようなパラメーター解を示したので、[3]の例に倣って近似解列を求めてみる。

 

が、そのパラメータ解である。

 ここで、右辺の2項目が±1となり、残りの3項が正数の3乗となるような整数u,vの列を作れればよい。

  であり、行列式が±1の2行2列行列  で  を変換しても、式の値は変わらないことに注意する。

 

 かつ  に注意すれば

 

となる。 として、最初のパラメータ解を変換すると

 

より、

  

となる。

 ここからは、M.D.Hirschhorn [3]とまったく同じであるが、書いてみると

  とおき、数列  を

    で定める。この時、

  とおくと

   

実は、この式はnが負でも成立することがわかる。但し、その場合は  必ず負となるので

   

とすれば良い。

 絶対値が3以下のnについて表に示す。

 

 結局、「タクシー数」で見つけたと思ったパラメータ解は、既知のものであることが分かった。

  •  余談(その1)

 上の例は、  が肝であったが -1 以外の数で同様の現象があるか探してみた。

 

に戻り、 に着目し、  とおき、数列  を

    で定める。この時、

    とおくと

   

 nが7以下の例を下表に示す。

 パラメータ解において、ターゲットとする2次形式のuの2乗の係数が1であれば、vの2乗の係数 t について、同様なことが成立する。

 

  • 余談(その2)

 

というパラメータ解もある。u=1,v=0とすると

 

が得られる。このパラメータ解について、同様の近似解を求めようとしたがうまくいかなかった。2つの3乗数の和で2通りに表される解はすべて何らかのパラメータ解であらわされるのか、パラメータ解で他にフェルマー方程式の近似解列を発生するものがあるのか、など次から次へ話題が浮かんでくる。

 また、上記「ひとけたの数に魅せられて」に3乗以外でフェルマー方程式の近似解列がないか、という感想が書かれていたが、nを3より大きい自然数,x,y,zを相異なる自然数、cを整数として

 

となる絶対値最小のcは求められているのだろうか。求められていないとすれば、みんなでcを探す競争をしても面白いかもしれませんね。

 このようなことを考えていると、ディオファントス方程式についていろいろ学ばないといけないと思いますが、どなたか一緒に勉強しませんか。