方程式 (n:3以上の自然数)に自然数解(x,y,z)は存在しない、というフェルマーの最終定理は、1995年にワイルズにより最終的に解決をみた。
n=3の場合は18世紀にオイラーにより既に証明されていたとのことである。しかし、否定的解決というのは、どうも面白くない。「存在しない」より「存在する」方がなんだか有難い。ここでもラマヌジャンが鬼才を発揮してくれた。
は言わずと知れたタクシー数である。これは2通りに自然数の3乗の和であらわされる最小の数、というように説明されるが、
と書くと、もう少しでn=3の場合のフェルマー方程式の解になることがわかる。これだとなんだかな、という感じだが
くらいになると、「ウーム、惜しい」とうめきたくなる。
ラマヌジャンは、このような例が無数にあることを示してくれた。まず、 を以下により定義する。
この時、 が成り立つ。ちなみにnが小さい時のの値は次のようになる。
(以上、出典:「ひとけたの数に魅せられて」、マーク・チャンバーランド著、川辺治之訳、岩波書店(2016)のP107 )
どうして、こんな式を思いついたんだろうと誰もが不思議に思う。例えば、Hirschhorn氏は、以下の論文[1]、[2]、[3]でラマヌジャンはおそらくこのようにして導いたのだろうと書いている。
[1] M.D.Hirschhorn, An amazing identity of Ramanujan, Math. Mag. 3 (1995), 199-201
[2] M.D.Hirschhorn, A proof in the spirit of Zeilberger of an amazing identity of Ramanujan,
Math Mag. 4 (1996), 267-269
[3] M.D.Hirschhorn, Ramanujan and Fermat’s Last Theorem, Austral. Math. Soc. Gazette.,
Vol.31, pp.256–257, 2004.
2通りに自然数の3乗の和として表わされる自然数にはパラメーター解があることが知られている。[3]では、パラメータ解から、上で示したような近似解列を導いている。
本ブログの「タクシー数」でそのようなパラメーター解を示したので、[3]の例に倣って近似解列を求めてみる。
が、そのパラメータ解である。
ここで、右辺の2項目が±1となり、残りの3項が正数の3乗となるような整数u,vの列を作れればよい。
であり、行列式が±1の2行2列行列 で を変換しても、式の値は変わらないことに注意する。
かつ に注意すれば
となる。 として、最初のパラメータ解を変換すると
より、
となる。
ここからは、M.D.Hirschhorn [3]とまったく同じであるが、書いてみると
とおき、数列 を
で定める。この時、
とおくと
実は、この式はnが負でも成立することがわかる。但し、その場合は 必ず負となるので
とすれば良い。
絶対値が3以下のnについて表に示す。
結局、「タクシー数」で見つけたと思ったパラメータ解は、既知のものであることが分かった。
上の例は、 が肝であったが -1 以外の数で同様の現象があるか探してみた。
に戻り、 に着目し、 とおき、数列 を
で定める。この時、
とおくと
nが7以下の例を下表に示す。
パラメータ解において、ターゲットとする2次形式のuの2乗の係数が1であれば、vの2乗の係数 t について、同様なことが成立する。
というパラメータ解もある。u=1,v=0とすると
が得られる。このパラメータ解について、同様の近似解を求めようとしたがうまくいかなかった。2つの3乗数の和で2通りに表される解はすべて何らかのパラメータ解であらわされるのか、パラメータ解で他にフェルマー方程式の近似解列を発生するものがあるのか、など次から次へ話題が浮かんでくる。
また、上記「ひとけたの数に魅せられて」に3乗以外でフェルマー方程式の近似解列がないか、という感想が書かれていたが、nを3より大きい自然数,x,y,zを相異なる自然数、cを整数として
となる絶対値最小のcは求められているのだろうか。求められていないとすれば、みんなでcを探す競争をしても面白いかもしれませんね。
このようなことを考えていると、ディオファントス方程式についていろいろ学ばないといけないと思いますが、どなたか一緒に勉強しませんか。