この時期になり,授業時間も少なくな,気になっていることなどをまとめています.特に授業に関連していることなどで,高校の教科書には記述がないことなどを中心に.
数学の大学入試問題を見てみても,明らかにある数学のテーマからの問題と思われる問題が散見され,そのような問題が繰り返し各大学で出題されてきています.しかし,教科書にはそのテーマの話の記述はなく,問題集などの解答にもまとまった解説がない.これが現実に受験生を教えていて,少なくとも私がいつも悩む瞬間でもあります.
そんな時,まとまってその解説をと考えるのは,教える側としても当然の帰結と思います.そんな思いから書き始めてみると,次から次と書いておかないといけないと思う事が出てきています.
今回は、チェビシェフの多項式でした。チェビシェフの多項式というのは
cos nθ=Fn(cosθ) sin nθ=Gn(sin θ)/sin θ
を満たす多項式で,Fn(x),Gn(x)をそれぞれ第1種,第2種のチェビシェフの多項式と言いますが,これまでも入試問題では何回も各大学で出題されています.そこで,この多項式について書き始めたのが最近のことです.書き始めるとなかなか終わりが見えないのですが,そこは受験生を意識して.とはいえ,数学を教えるという教育的な視点は忘れてはいけないと考えています.
入試問題の解説などもほとんどが断片的な解説であり,その結果,短くてもいいのでまとまった解説を書いてみたいという思いが常にあります.実際,入試問題の解説などの多くは,三角関数の2倍角や3倍角の公式か帰納的にチェビシェフの多項式を導いています.そんな中で,
この本の中で,著者の西田先生は高校生にも理解できるように,チェビシェフの多項式を複素数のド・モアブルの公式から定義されています.
この本は「大学でこれから数学を学ぼうとする人や,すでに専門課程で数学を学びつつある学生諸君にとっても,大きな意味で数学とは何かを知るのに役に立つと思います.」とその前書きにも書かれていて,高校の数学の先生にとっても読んでおきたい本です.
著者の西田吾郎教授(執筆時)は,私が大学生の当時,すでに教鞭をとられていて,私は直接講義を受けてはいませんが,教養部の時にお名前を拝見したことがあります.
時は過ぎ,高校の数学の教員として,以前京大の一般向けの数学講座で西田先生の講義を受ける機会がありましたが,その時の講義内容が実はこの本のベースになっています.よく練られて講義で感動した覚えがあります.このような講義を受けることから,高校教員として数学を教えることに関して,考えを新たにした記憶があります.それまでは教科書を教えることや入試問題を解説することで時間を費やしていることが多く,まとまった内容を話しすることが少なかったように思います.それは今も高校の数学の教員が置かれている状況かもしれません.そしてそんな状況から数学を学ぶ姿勢が失われていくように感じます.一般向けの先生の講座での作図問題からガロア理論への話などは高校生にも話せる内容だと思います.そういう意味で普段の題材の中でそこを起点として,数学の話をできるようにと私自身が意識し始めた時期でもありました.普段の教材,例えば入試問題や数学の練習問題でも、教員の意識を高めることで自ら数学を学ぶ動機になり得るとおもいます.
実はこの本のチェビシェフの多項式の記述内容と一致する入試問題が以下です.
この問題は西田先生が出題されたのでは?と思いますが.(続く)