数学教師の書斎

自分が一番落ち着く時間、それは書斎の椅子に座って、机に向かう一時です。

数学の入試問題について(1)

2021-02-24 07:47:44 | 数学 教育
 この時期になり,授業時間も少なくな,気になっていることなどをまとめています.特に授業に関連していることなどで,高校の教科書には記述がないことなどを中心に.
 数学の大学入試問題を見てみても,明らかにある数学のテーマからの問題と思われる問題が散見され,そのような問題が繰り返し各大学で出題されてきています.しかし,教科書にはそのテーマの話の記述はなく,問題集などの解答にもまとまった解説がない.これが現実に受験生を教えていて,少なくとも私がいつも悩む瞬間でもあります.
 そんな時,まとまってその解説をと考えるのは,教える側としても当然の帰結と思います.そんな思いから書き始めてみると,次から次と書いておかないといけないと思う事が出てきています.
 今回は、チェビシェフの多項式でした。チェビシェフの多項式というのは
  cos nθ=Fn(cosθ)   sin nθ=Gn(sin θ)/sin θ
を満たす多項式で,Fn(x),Gn(x)をそれぞれ第1種,第2種のチェビシェフの多項式と言いますが,これまでも入試問題では何回も各大学で出題されています.そこで,この多項式について書き始めたのが最近のことです.書き始めるとなかなか終わりが見えないのですが,そこは受験生を意識して.とはいえ,数学を教えるという教育的な視点は忘れてはいけないと考えています.
 入試問題の解説などもほとんどが断片的な解説であり,その結果,短くてもいいのでまとまった解説を書いてみたいという思いが常にあります.実際,入試問題の解説などの多くは,三角関数の2倍角や3倍角の公式か帰納的にチェビシェフの多項式を導いています.そんな中で,
この本の中で,著者の西田先生は高校生にも理解できるように,チェビシェフの多項式を複素数のド・モアブルの公式から定義されています.
 この本は「大学でこれから数学を学ぼうとする人や,すでに専門課程で数学を学びつつある学生諸君にとっても,大きな意味で数学とは何かを知るのに役に立つと思います.」とその前書きにも書かれていて,高校の数学の先生にとっても読んでおきたい本です.
 著者の西田吾郎教授(執筆時)は,私が大学生の当時,すでに教鞭をとられていて,私は直接講義を受けてはいませんが,教養部の時にお名前を拝見したことがあります.
 時は過ぎ,高校の数学の教員として,以前京大の一般向けの数学講座で西田先生の講義を受ける機会がありましたが,その時の講義内容が実はこの本のベースになっています.よく練られて講義で感動した覚えがあります.このような講義を受けることから,高校教員として数学を教えることに関して,考えを新たにした記憶があります.それまでは教科書を教えることや入試問題を解説することで時間を費やしていることが多く,まとまった内容を話しすることが少なかったように思います.それは今も高校の数学の教員が置かれている状況かもしれません.そしてそんな状況から数学を学ぶ姿勢が失われていくように感じます.一般向けの先生の講座での作図問題からガロア理論への話などは高校生にも話せる内容だと思います.そういう意味で普段の題材の中でそこを起点として,数学の話をできるようにと私自身が意識し始めた時期でもありました.普段の教材,例えば入試問題や数学の練習問題でも、教員の意識を高めることで自ら数学を学ぶ動機になり得るとおもいます.

 実はこの本のチェビシェフの多項式の記述内容と一致する入試問題が以下です.

この問題は西田先生が出題されたのでは?と思いますが.(続く)
 

本屋さんの思い出

2021-02-21 01:54:18 | 日記
 名古屋駅の近くにある、「ジュンク堂」書店は職場も近いので少なくとも毎週1、2回は足を運ぶ書店です。少し前から、半藤一利氏のコーナーが作られて、前回紹介した本等が並んでいます。

 私の住んでいるところは三重の田舎なので、近くに書店そのものもなく、また昔は地方の町にもそれなりに本屋さんはあり、岩波書店の本も置いてありましたが、今やその本屋さんもなくなり、あっても学術的な本はほとんど置いてないのが現状です。

 たまに行く東京や京都では、必ず立ち寄るのは大型書店です。東京で言えば、丸の内の丸善や日本橋の丸善、そして神保町の東京堂書店。京都では丸善です。丸の内の丸善や京都の丸善は喫茶店も店内にあるので、長時間居る時はそこでコーヒーを飲みながらの一時も至福の一時と言えるかもしれません。丸の内の丸善の喫茶店はいつも混んでいるのが、ある意味東京を感じさせてくれます。どうして平日のこの時間帯に人が多いのだろうと、田舎の人間からするとこれは都会の一つの不思議でもあります。

 ある時、ハヤシライスが丸善からの発祥であることを知りました。それは丸善の歴史を知ってた時でもあったと思います。そして初めて丸善のハヤシライスを口にしたのは、今は改築されて新しくなったしまいましたが、昔の名古屋の丸善でした。独特のその味に惹かれて、名古屋の丸善に行くたびに、昼はそこでハヤシライスを食べた記憶があります。とはいえ、丸善以外でハヤシライスを食べた記憶もないので、他のハヤシライスと比較することもできませんが。新しくなった名古屋の丸善には喫茶店がなく(?)、私が知らないだけであったら教えて欲しいのですが、それだけで足が向かない自分がいます。

 さて、ハヤシライスですが、味に関しては丸の内の丸善でも京都の丸善でも、昔の名古屋の丸善でも変わらないのですが、喫茶店の趣や他のコーヒーなどには店による違いはあると感じています。そう初めて感じたのは、京都と丸の内の丸善で昼間の午後にコーヒのケーキセットを注文した時でした。最初に注文したのが京都の丸善でした。値段は800円でしたが、ケーキと一緒に出てきたのがサイホンに入ったコーヒーでした。ケーキも上品で田舎のチエーン店の喫茶店にあるケーキセット値段は変わらないものの、その上品さを目の当たりにして、その印象が未だに残っています。同じケーキセットを丸の内の丸善で注文したら、京都の丸善には遠く及ばない、がっかりしたものでした。喫茶だけでなく、同じ丸善でも店によってかなり違いがあることが思い出されます。

 住んでいるところから割合近いということもあり、一時閉鎖されたとはいえ、学生時代にもあった京都の丸善は一番よく行く店でもありますが、喫茶店だけでなく、洋書特に数学書の洋書に関しては東京や他の丸善に比べて品揃えも多く感じています。もちろん、東大や京大・名古屋大学の書籍部に行けばもう少し専門的な数学の洋書も手に取ることができるかもしれませんし、数学の洋書専門店には専門的な数学書は多くあるかもしれませんが、身近に手に取れる意味では京都の丸善の特徴の一つであるかもしれません。

 丸善といえば、5年ほど前に信州松本に行った時、駅の近くの宿泊したホテルの近くにあった丸善も印象的です。地方都市に丸善があるもの意外でしたが、それは私が住んでいる三重では丸善がないからです。それだけでなく、数学書が意外に多くあり、どうして何だろうと思ったからです。松本には信州大学があります。信州大学といえば所謂、タコ足大学でもあり、松本キャンパスには確か、理学部、医学部があるので、数学関係の本も多いのかなと考えました。

 そういえば、教え子の中で信州大学の理学部数学科に3人ほど進んだ生徒の顔が思い出されます。仕事柄、そんな記憶の仕方なんでしょうか。

 地方で言えば、さらに20年ほど前に奈良女子大に行った時、ある先生の研究室へ行ったのですが、初めていく奈良女子大に、駅から徒歩でいかにも奈良らしい町並みの道路を歩きながら、小さな本屋さんに入りました。小さいにもかかわらず、岩波の本も置いてあり、思わず店主の顔を見てしまいました。

 小さな町ですが、そこには文化の趣を感じさせる雰囲気が今も印象的に残っています。学生時代の奈良女のイメージがあり、それが今の私の頭の片隅に残っているのでしょうか。時代を超えて、大学のイーメジというか、自分が持ったイメージがいつまでも残っていて、教え子がその大学に進学した際には、そんな思いが頭をよぎる瞬間があります。

 地方に行った時に、その町の本屋さんからその町の雰囲気を感じさせてもらえることも今の時代は少なくなってきていると思います。それは私が好きな釣りに関しても同じことが言えます。昔は地方へ行った時にはその町の釣具店に行くことでそも地方の釣り文化を感じたのですが、今はそれも希薄になってきています。本屋さんと釣具店の衰退は時代を感じさせます。