首席客演指揮者藤岡幸夫の指揮する不思議な取り合わせの演奏会。一曲目はフラームスの交響曲第3番ヘ長調作品90。4曲ある彼の交響曲の中では私は最も苦手としてきた曲だ。全4楽章が全て弱音で終わるので若い頃からその盛り上がりに欠ける音楽が心を掴まなかったのかも知れない。藤岡はプレトークでいつ振っても幸せを感じると言っていたが、そういう聞き方をすると今回は急に親しみが湧いてとても興味深く聞くことができたので、それは大きな収穫だった。この先この曲を取り出して聞く機会は明らかに増えるだろう。演奏の方は「言葉通り」ブラームス特有の渋さとか重厚感とかを全く感じさせないとても爽やかなものでシティフィルの弦が瑞々しく美しく響いた。一方期待したホルンの妙技は残念ながら聴かれなかった。二曲目は藤岡が強く望んだという伊福部昭の晩年の創作である交響頌偈「釈迦」。伊福部は若い頃から「釈迦」を題材とした作品を多く残したがこの曲はそうしたものの集大成だという。テクストはパーリー語なのだがプログラムには詳訳は示されていない。「決して宗教曲」ではないとか「合唱団にはエロティックに歌うことを求めた」とか期待させる前口上はあったのだが、聞き終わってみると特有の骨太な土俗感は感じるものの音楽は案外単純一面的で、私は特段の魅力を感じることができなかった。何よりも長尺40分を支えるだけの変化に不足していたように思う。とは言え世の伊福部ファンが多く詰めかけたせいか、合唱関係者が多く来場していたせいか、終演後の会場の盛り上がりは大変なものだった。
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