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東響第135回オペラシティーシリーズ(10月21日)

2023年10月22日 | コンサート
音楽監督ジョナサン・ノットの指揮するブルックナーの交響曲第1番ハ短調を中心とするマチネーだ。ちなみに音楽監督就任2014年の3番以来、これでノット+東響はブルックナーの交響曲(1番〜9番)を、全部演奏したことになる。日頃選曲の妙を楽しませてくれるノットだが、今回も今年生誕100年を迎えたリゲティの「ハンガリアン・ロック」(オルガン独奏版)とベリオの「声(フォーク・ソングII)」との興味深い組み合わせだ。会場のタケミツメモリアル・ホールに入り舞台上に目をやると、そこには日頃のオケ配置と全く違う光景があった。更に正面オルガン側にも、2階バルコニー席のいくつかにも譜面台が置かれているではないか。何か面白い事が起こる予兆を感じた。一曲目はオルガン独奏と書かれているのにオケの団員達も入場し席に着く。この時点で最初の二曲はアタッカで演奏されるのだなと予想した。ノットと共にオルガン席にモンドリアン風(コンポジション)のポップな出立の大木麻理が登場しオルガンにスポットライトが当たりリゲティが開始された。左手が9分の8拍子のフレーズを延々と繰り返す中、右手のメロディの拍子は刻々変わってそのズレが面白い数分の曲だ。元々チェンバロのために書かれた曲だが、今回はオルガンの使用で色彩感が出た妙技だった。ここで予想に反して拍手が出てしまったが、それがなければ雰囲気としてスムーズにベリオのビオラ独奏に繋がっていっただろうに。一方ベリオの方はビオラ独奏にディミトリ・ムラトを迎えた協奏曲風の作りで独奏がシチリア民謡を歌うのだが、それはもう千変万化に変容して原型を全く留めず、様々な打楽器や電子オルガン、チェレスタまで使ったオケの響きの中を浮遊するように出たり入ったり。たまに伝統的なメロディが浮き上がり懐かしさが心をくすぐる。そんなこんなの試みとしては面白い音響空間ではあったが、30分はいささか冗長だった。ムラトの美音は何か他の曲で聴きたい気がした。そしてメインのブルックナーだが、今回はノヴァーク校訂によるリンツ稿を使用した演奏だった。出だしから気力十分のノットと東響は実に豪快に鳴った。しかしそうなると荒削りの若書きの筆致がクローズアップされて響く。それがこの曲の価値と言えば価値だし、これから交響曲の海に船出するブルックナーの心意気はそこに十分に感じられはしたが、一方で「ベートーヴェンの1番は時代的に聴いてもっと革新的だったよな」なんてことを考えながら聴いた。つまり素直に感動はできなかったというのが正直な感想だ。とは言え終演後の大歓声はこれまでのノットのブルックナーで一番だったのではないだろうか。

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