音楽監督ジョナサン・ノットとドイツの正統派ピアニスト、ゲルハルト・オピッツとの共演によるベートーヴェン・プログラムだ。この二人の共演は一昨年12月のブラームスの2番以来となる。ノットにしてはリゲティがない素直なプログラムで、いささか拍子抜けの感もある。一曲目はピアノ協奏曲第2番変ロ長調作品19。何の衒いもなく弾き進むオピッツのピアノではあるが、その音色は極めて美しくとりわけ二楽章終盤のピアニッシモの美しさには耳をそばだてた。そこから終楽章へ入ってゆく微妙な間合いが私的にはこの演奏のハイライトだった。しかしやはり何となく物足りない印象を残したのは曲のせいか、はたまた演奏のせいか。続く交響曲第6番ヘ長調作品68「田園」は快速調で始まったが決してセッカチな感じがなかったのは、抑揚のタップリとある歌い回しのせいであろう。とりわけ一楽章のレガートを多様した滑らかな仕上がりに続く二楽章との心的連続性が感じられ、「絵画的というよりは、むしろ感情の表出」という作曲者の言葉をあらためてかみしめた。二楽章ではニュアンス豊かな木管群が多くの聞かせどころを作ったし、美しい音色とニュアンスを聞かせたホルンも讃えたい。全体にビブラートを抑えた極めてスッキリとした仕上がりの中に十分な滋味と精神的高揚を感じさせるノットらしい佳演だったといって良いだろう。
goo blog お知らせ
プロフィール
最新コメント
ブックマーク
カレンダー
最新記事
- 藤原歌劇団「ファルスタッフ」(2月2日)
- 東京シティ・フィル第375回定期(1月17日)
- 都響第1040回定期(1月14日)
- ウイーン・フィル・ニューイヤーコンサート
- 新国「ウイリアム・テル」(11月26日)
- 東京シティ・フィル第79回ティアラ江東定期(11月23日)
- 藤原歌劇団「ピーア・デ・トロメイ」(11月22日)
- 東響オペラシティシリーズ第142回(11月15日)
- NISSAY OPERA 「連隊の娘」(11月10日)
- 八ヶ岳高原サロンコンサート(11月1日)
- びわ湖ホール声楽アンサンブル第15回東京公演(10月14日)
- 東響第97回川崎定期(10月13日)
- 新国「夢遊病の女」(10月9日)
- 東京シティ・フィル第373回定期(10月3日)
- 東響オペラシティシーリーズ第141回(9月28日)
- 紀尾井ホール室内管第141回定期(9月20日)
- 東フィル第1004回オーチャード定期(9月15日)
- 東京シティ・フィル第372定期(9月6日)
- 第44回草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル (8月28日〜30日)
- ロッシーニ・オペラ・フェスティバル2024(8月17日〜21日)