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東響第93回川崎定期(10月14日)

2023年10月15日 | 東響
音楽監督ジョナサン・ノットが登場して、自らドビュッシーのオペラから編曲した交響的組曲「ペレアスとメリザンド」とヤナーチェクの「グレゴル・ミサ」を並べたプログラム。一曲目はこのオペラのペレアス、メリザンド、ゴローの3人の登場場面に焦点を絞った15曲で構成された40分を超える大組曲だ。聞く前は曲柄もあるのでさぞ冗長になるのではと懸念されたが、幸いなことにそれは全くの杞憂だった。それは選曲の妙、演奏の妙だ。曖昧模糊とした基調にドラマチックな場面も適宜織り交ぜながら極めて柔軟に作曲者の持つ独特な色合いを描いたノットも素晴らしいし、東響の惚れ惚れするような木管群(竹山・荒木・吉野)のニュアンスと鮮やかな弦にも感心した。続いてのヤナーチェクはノットの気迫に貫かれた演奏だったと言って良いだろう。とは言いつつ決して固くならないところがノット流だ。今回の特筆すべきはWingfieldのユニヴァーサル版を使ったことで、これにより3拍子と5拍子と7拍子が入り乱れる第二曲(序奏)がとりわけ効果を聞かせることになったはずだ。私自身は一般に流通している版さえ良く知らない状態なのでお恥ずかしながら違いを実感できなかったのが残念だ。今回も東響コーラスは古代スラブ語を全曲暗譜で純度高く熱唱した。部分的にはよりコントラストが欲しかった気もしたがそれはノットの指示だったのだろう。とにかく天を突き刺さんばかりの気迫に満ちた歌声がミューザ川崎に響き渡った。第八曲のオルガン独奏はこのホールのオルガニスト大木麻理(どこにもクレジットされていない)が担当したが風格のある素晴らしい演奏だった。ここでも東響は充実した響きで、とりわけ冒頭の弦の響きにヤナーチェクを心から感じた。

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