音楽監督ジョナサン・ノットが登場して、自らドビュッシーのオペラから編曲した交響的組曲「ペレアスとメリザンド」とヤナーチェクの「グレゴル・ミサ」を並べたプログラム。一曲目はこのオペラのペレアス、メリザンド、ゴローの3人の登場場面に焦点を絞った15曲で構成された40分を超える大組曲だ。聞く前は曲柄もあるのでさぞ冗長になるのではと懸念されたが、幸いなことにそれは全くの杞憂だった。それは選曲の妙、演奏の妙だ。曖昧模糊とした基調にドラマチックな場面も適宜織り交ぜながら極めて柔軟に作曲者の持つ独特な色合いを描いたノットも素晴らしいし、東響の惚れ惚れするような木管群(竹山・荒木・吉野)のニュアンスと鮮やかな弦にも感心した。続いてのヤナーチェクはノットの気迫に貫かれた演奏だったと言って良いだろう。とは言いつつ決して固くならないところがノット流だ。今回の特筆すべきはWingfieldのユニヴァーサル版を使ったことで、これにより3拍子と5拍子と7拍子が入り乱れる第二曲(序奏)がとりわけ効果を聞かせることになったはずだ。私自身は一般に流通している版さえ良く知らない状態なのでお恥ずかしながら違いを実感できなかったのが残念だ。今回も東響コーラスは古代スラブ語を全曲暗譜で純度高く熱唱した。部分的にはよりコントラストが欲しかった気もしたがそれはノットの指示だったのだろう。とにかく天を突き刺さんばかりの気迫に満ちた歌声がミューザ川崎に響き渡った。第八曲のオルガン独奏はこのホールのオルガニスト大木麻理(どこにもクレジットされていない)が担当したが風格のある素晴らしい演奏だった。ここでも東響は充実した響きで、とりわけ冒頭の弦の響きにヤナーチェクを心から感じた。
goo blog お知らせ
プロフィール
最新コメント
ブックマーク
カレンダー
goo blog おすすめ
最新記事
- 新国「ウイリアム・テル」(11月26日)
- 東京シティ・フィル第79回ティアラ江東定期(11月23日)
- 藤原歌劇団「ピーア・デ・トロメイ」(11月22日)
- 東響オペラシティシリーズ第142回(11月15日)
- NISSAY OPERA 「連隊の娘」(11月10日)
- 八ヶ岳高原サロンコンサート(11月1日)
- びわ湖ホール声楽アンサンブル第15回東京公演(10月14日)
- 東響第97回川崎定期(10月13日)
- 新国「夢遊病の女」(10月9日)
- 東京シティ・フィル第373回定期(10月3日)
- 東響オペラシティシーリーズ第141回(9月28日)
- 紀尾井ホール室内管第141回定期(9月20日)
- 東フィル第1004回オーチャード定期(9月15日)
- 東京シティ・フィル第372定期(9月6日)
- 第44回草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル (8月28日〜30日)
- ロッシーニ・オペラ・フェスティバル2024(8月17日〜21日)
- 読響フェスタサマーミューザKAWASAKI 2024公演(7月31日)
- 京都市響第691回定期(7月27日)
- 東京二期会「蝶々夫人」(7月21日)
- 新国「トスカ」(7月19日)