反プーチン派・ナワリヌイ氏「北極の狼」で急死 数々の謎を検証“血栓説”に医師反論【サンデーステーション】(2024年2月18日) VIDEO
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刑務所内で死亡したという反プーチン派の急先鋒・ナワリヌイ氏。当局は死因を「突然死症候群」だと主張していますが、遺体はどこにあるのか等、不審な点もあります。 ■ナワリヌイ氏“北極の狼”で急死 不審な点も (取材記者)「きのう多くの人が集まった悲しみの壁です。鉄柵で完全に封鎖されています。かなり多くの警察官が囲っています。厳重警戒を敷いているようです」 それでも、花を手に次々やってくる人々… (取材記者)「警察が厳重警戒をする中ですが、それにもかかわらず市民はこの壁を訪れて献花を続けています」 これは死亡する前日の映像。裁判官に向かって冗談を口にする様子が映っていました。 (ナワリヌイ氏(47))「あなたの莫大な給料を私の口座に振り込めるように銀行口座を教えます。あなたの決定のおかげで私はお金が尽きつつあるから振り込んでくださいよ」 この翌日、ロシア連邦刑務所は、刑務所内で散歩をした後に気分が悪くなり、医師が必要な蘇生措置を行ったものの死亡したと発表しています。 これは先月、ナワリヌイ氏のSNSに投稿された画像です。壁に囲まれているものの、空を眺めることくらいはできそうなスペース。ナワリヌイ氏は毎朝ここで散歩していると書き込んでいました。 視界は地吹雪で真っ白に…ロシアのヤマロ・ネネツ自治管区。北極圏に位置するこの街で、ナワリヌイ氏は最期を迎えました。モスクワから北東におよそ1900km。ナワリヌイ氏が去年12月に移送された刑務所です。ロシアの独立系メディアによれば「世界最高レベルの孤立地域」で「極地の狼」との異名を持っています。 ■「プーチン氏に責任」政権の関与指摘も 死亡の翌日、-30度の寒さの中、ナワリヌイ氏の母親が刑務所を訪れましたが… ナワリヌイ氏の陣営によると、このとき母親らは死因について「突然死症候群」だと告げられたといいます。 ロシアの国営メディアは、ナワリヌイ氏は「血栓症だった」とも報じていますが、彼を定期的に診てきた医師は疑問を呈します。 (ナワリヌイ氏を定期的に診療 アレクサンドル・ポルパン医師)「これは明らかに時期尚早な診断です。機器を使い、生体内の精密検査をしないと血栓症だと確定するのは不可能だからです」 独立系メディアによると、母親らは遺体の引き渡しを求めていますが、遺体は刑務所にも安置所にもなく「所在不明」になっています。 さらに、刑務所内では“不可解な動き”も… 独立系メディアは受刑者の人権保護団体の情報として、ナワリヌイ氏が死亡した当日、刑務所内のカメラ数台が作動していなかったと伝えています。 (バイデン大統領)「詳細な経緯は不明だが、ナワリヌイ氏の死はプーチンとその一味がもたらした結果だ。プーチンに責任がある」 (ゼレンスキー大統領)「プーチンに殺されたのは明らかだ。拷問されて苦しんでいる何千人もの人々と同じように」 ■「僕が殺された場合…」ナワリヌイ氏の遺言 2020年、ナワリヌイ氏は何者かに毒を盛られ、意識不明の重体となりましたが、一命はとりとめました。 (映画「ナワリヌイ」から) (ナワリヌイ氏)「今の権力者は腐敗した泥棒だ。ウラジミール・プーチンは?」 (聴衆)「泥棒だ!」 (ナワリヌイ氏)「言っちゃったな。警察が撮ってるぞ」 これはプーチン政権と対峙する、ナワリヌイ氏の戦いに密着したドキュメンタリー映画。ナワリヌイ氏が調査チームと共に毒殺未遂事件の真相に迫る様子が克明に描かれています。プーチン政権の関与はあったのか―。調査チームは事件の実行犯の1人とみられる人物の電話番号を入手。ナワリヌイ氏、自ら電話をかけています。 (ナワリヌイ氏)「パトルシェフの部下マクシム・ユスティノフだ。番号はボクダノフから。朝早くから悪いが10分ほどいいか?」 (実行犯)「いいとも」 パトルシェフ氏は、プーチン氏の最側近で事実上のナンバー2です。 (ナワリヌイ氏)「関係者全員に聞いて報告書をまとめてる。トムスクの件はなぜ失敗した?ナワリヌイ作戦の話だ」 (実行犯)「マクシャコフには聞いたのか?」 (ナワリヌイ氏)「もちろん彼にもこれから電話する。アレクサンドロフ・マクシャコフ、タヤーキン、彼らに電話してそれぞれの見解を求める。失敗の原因と次を成功させる方法をね」 (実行犯)「私も同じことを考えてた。我々の仕事に落ち度はなかったと思う。何度も練習を重ねてできるようになっていた」 さらに、この人物はナワリヌイ氏の下着に毒物を仕込んだことも認めました。こうした調査結果について問われたプーチン氏は… (プーチン大統領)「あれは調査結果ではなくアメリカの諜報機関の情報だ。つまりこうだ。例の患者(ナワリヌイ氏)はCIAの支援を受けている。もし彼が毒殺されるべき存在ならとっくに殺されているよ」 プーチン大統領は今回、ナワリヌイ氏の死について報告を受けたといいますが、これまでのところコメントはしていません。 来月の大統領選挙にプーチン氏も立候補していますが、ナワリヌイ氏は収監後も、支援団体を通じてプーチン氏以外の候補者に投票するよう呼びかけていました。死亡する8日前には刑務所の職員に対しても… (ナワリヌイ氏(8日撮影))「選挙では誰に投票するんだい?沈黙するのは恥だぞ。プーチン以外の誰かに投票することをお勧めするよ。プーチン以外の候補者なら誰でもいい」 (刑務所の職員)「もう分かりましたよ」 (ナワリヌイ氏)「ちょっとした選挙運動をしただけさ」 「自由で開かれたロシアを作りたい」と語っていたナワリヌイ氏。生前のインタビューで「もし殺されたら?」と記者から問われ、こんな「遺言」を残していました。 (映画「ナワリヌイ」から) (ナワリヌイ氏)「仮に僕が殺された場合のメッセージは“諦めるな”だ。僕が命を狙われたのは、僕らが信じられないほど強いからだ。その力を活用しよう。忘れるな。僕らが持っている巨大な力は悪い連中に押しつぶされている。本当は強いのに僕らに自覚がないからだ。悪が勝つのはひとえに善人が何もしないから。行動をやめるな」 ■“北極圏の刑務所”で何が? スタジオ解説 (小木逸平アナウンサー) Q.北極圏の刑務所で亡くなったナワリヌイ氏、過酷な状況なのか? (元テレビ朝日モスクワ支局長 武隈喜一氏) 「私も北緯66°の北極圏を取材した。荒涼とした原野が広がっていて文明が見えない過酷な環境。ここに移される前からナワリヌイ氏は寝るスペースもない“懲罰房”で300日以上収監。自然死だったとしても殺されたも同然」 (小木逸平アナウンサー) Q.“突然死症候群”信じられる? (元テレビ朝日モスクワ支局長 武隈喜一氏) 「2020年にノビチョクという毒薬を使われて殺害未遂があった。その時FSBが関与したことがはっきりしていて、つまりプーチン政権が殺害を指示。その殺害指示は取り消されず、3年経ち実行されたと思っている」 (渡辺瑠海アナウンサー) Q.選挙を控えるプーチン氏 逆効果では? (元テレビ朝日モスクワ支局長 武隈喜一氏) 「ナワリヌイ氏はモスクワで10万人の集会をできる唯一の反対派の政治家。亡くなったことで花を手向けに行く勇気は大変素晴らしいと思うが、ほとんどのロシア人にとってこのことは、プーチン氏の選挙アピールになっているだろう」 (小木逸平アナウンサー) Q.選挙アピールということは、ロシア国民はこのニュースをネガティブにはとらえていない? (元テレビ朝日モスクワ支局長 武隈喜一氏) 「プリゴジン氏は“飛行機事故”でいなくなり、ナワリヌイ氏も亡き者に。プーチン氏は自分に逆らう者は容赦しないと見せつけることで、圧倒的な強さを国民にアピール。西側がロシアを攻めているというのがプーチン氏の論理。自分たちに歯向かう西側は絶対に許さないという強い指導者像と重なって、ロシア人に受け止められている」 (小木逸平アナウンサー) Q.太田さんはこの状況をどう見ている? (共同通信社編集委員 太田昌克氏) 「日本政府関係者は“クレムリンや国民に影響はない”との見方。とはいえ、ロシア側にも一抹の不安があるようだ。週末にロシア政府関係者から私にコンタクトがあり、“日本政府はどう対応するんだ、場合によってはロシア外交官の追放があり得るのか”と逆取材してきた」 (小木逸平アナウンサー) Q.対外的な影響は懸念している? (共同通信社編集委員 太田昌克氏) 「G7外相会合でも議長声明で非難している。ナワリヌイ氏の死をきっかけに西側が再結束するのではと懸念。大統領選に向けて何らかの変化が起きるか注目」 2月18日『サンデーステーション』より (C) CABLE NEWS NETWORK 2024 [テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp