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イーユン・リー「黄金の少年、エメラルドの少女」

2013年10月12日 | 海外の作家

 

訳・篠森ゆりこ
河出書房新社
2012年7月 初版発行
243頁

 

 

短篇集です

 

「優しさ」

北京のはずれにある廃屋アパートのワンルームに暮らす41歳、ひとり暮らしの女性

三流の中学で数学を教えている

決して人に心を開くことのない彼女が思い出す、今は亡き両親との生活、ただ一人思いを寄せた年上の既婚男性、一年間の軍隊生活

 

 

「彼みたいな男」

父親が文革で大学教授の地位を失ったため、教育の機会を奪われた男性

今は老いた母親と二人暮らし

楽しみは、近所の女性に母親の世話を頼める数時間、散歩に出たり、インターネットカフェで、実の父親を攻撃する若い娘のブログにコメントを書き込むくらいのこと

 

 

「獄」

アメリカで暮らす夫婦

ある日突然16歳になるひとり娘を事故で喪う

どうしてももうひとり子供が欲しいという夫の頼みを聞き入れ、違法とわかっていながら中国で代理母を探すことにする妻

 

 

「女店主」

拘置所の前でよろず屋を営む老女

拘置所にいる家族に面会に来た女性たちを店の二階に住まわせて、彼女たちを「まともな人間」に直してあげようと考えている

 

 

「火宅」

夫の不倫問題がきっかけで、友人たちと一緒に不倫専門の探偵屋を始めた女性

攻撃の対象が同じだった時には一致団結、素晴らしい成果を上げ続けていたのだが、テレビ番組に取り上げられてからは彼女たちの間に微妙なズレが生じ始めてしまう

 

 

「花園路三号」

同じ分譲住宅の上の階に住む男性に子供のころからずっと恋をしていた女性

もう、老年となった今でもその思いは変わらず、男性が妻を亡くしたと聞いた彼女は初めて上階の部屋を訪ねる

しかし、男性にとってはやっかいな老女が押しかけてきたとしか映らない

 

 

「流れゆく時」

義姉妹の契りを結んだ3人の少女

ある事件をきっかけに憎しみあうようになってしまった彼女たちのうちの一人-最も憎まれた女性-が、ヨーロッパに暮らす孫娘が夏休みに帰国した折、その顛末を話す

 

 

「記念」

天安門事件の元ヒーローの男性へ献身的な愛情を捧げる女性

男性の両親や周囲からは、精神を病んだ彼にはもう関わらない方がよいと言われるのだが、彼女は耳を貸さない

 

 

「黄金の少年、エメラルドの少女」

教え子の女性と、自分の息子を結婚させようとする老女

三人とも孤独で悲しい人間であることはわかっているけれど

「金童(ゴールド・ボーイ)」と「玉女(エメラルド・ガール)」

中国で理想的なカップル「金童玉女」と呼ばれた両親の娘である女性は新しい家庭を丹精込めて作っていこうと決心する

 

 

 

現在の中国社会の実情が垣間見えます

衝撃的でゾッとするような内容もありますが、どれもラストには平凡に暮らす人々への優しさと希望が描かれており読後感は悪くありません

 

イーユン・リーは物語のポイントとなる重要な言葉、文章を文中にサラリと滑り込ませるのがお得意なようです

ボンヤリ読んでいると「あれ?」となり面白みが消えてしまいますのでご注意を

 

 

 


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