ハルキ文庫
2018年9月 第1刷発行
297頁
花だより――愛し浅蜊佃煮
涼風あり――その名は岡太夫
秋燕――明日の唐汁
月の船を漕ぐ――病知らず
澪が大坂に戻って4年、文政5年(1822年)春から翌年初午にかけての物語
「花だより」
澪に会いたくてたまらないつる家店主・種市は、戯作者清右衛門と版元坂村堂と共に心を込めて作った浅蜊の佃煮を携えて、箱根湯元へ湯治に行くというつる家の看板娘・りうも加えて東海道を西へ向かいます
小田原で澪への土産にとりうに託された「みをつくし」と名の入った上等な小田原提灯を背に箱根に到着
やれやれと思ったところが腰痛のため泣く泣く江戸に戻らなければならなくなります
「涼風あり」
澪のかつての想い人、御膳奉行の小野寺数馬と武家育ちで感情を表に出さぬよう育てられた妻・乙緒
一人息子に恵まれ、それなり暮らしていますが会話も少なく乙緒は周囲から「能面」と言われているのでした
姑が亡くなる直前に乙緒に教えた「岡太夫」なる食べ物
大事な時に数馬に岡太夫を所望せよ、と言われていた乙緒にその時がやってきました
2人目の妊娠もわかり、本物の夫婦になれたようです
「秋燕」
あさひ太夫の名を捨て、大坂で生家・淡路屋の再建を果たした野江
摂津屋から番頭を婿にとり店の主とするよう求められますが吉原で野江の心の支えだった又次のことが心に引っかかって前に進むことができないでいました
しかし、ようやく心を決めた野江は番頭・辰蔵にこれまでの経緯を語ります
女衒に騙され吉原へ売られ、又次と出会い…
野江の「家族を持ちたい」の思いに、涙なしでは読めませんでした
「月の船を漕ぐ」
大坂で澪と所帯を持ち、医師として活躍していた源斎
流行り病に苦しむ人々を救えなかった自分に絶望し過労から倒れてしまいます
食を通して元気になってもらいたいと手を尽くす澪ですが一向に食欲が戻らない夫
さらに店の立ち退きを迫られその期限が迫っています
困り果てた澪は江戸の源斎の母に、夫が子供の頃の好物は何か問い合わせるのでした
「食は人の天なり」の本質を思い返し、料理人として自分が傲慢であったことに思い至ります
夫婦の危機を乗り越え絆を深める2人
野江の協力もあり、澪の生家があった場所近くに無事新しい店を開くことができました
開店の日、暖簾を掲げた澪の耳に「おーい、お澪坊よぅ、俺だよぅ」と懐かしい声が…
ここも泣けてきました
土産に浅蜊の佃煮は季節柄無理だったと思いますが、「みをつくし」に立派な小田原提灯が掲げられたことは間違いありませんね
これで本当に澪の物語はお終いだそうです
高田郁さん、素敵な物語をありがとうございました
これで本当に終わり、読者を納得させてくれた1冊でしたね。
51巻も納められる別間があるなんて羨ましいです。
藤沢周平他、時代物コーナーを別に設けるか思案中です!(^^)!
購入されたらいの一番に読んでくださいね。
長かった本編の流れそのまま、人物設定や諸々の出来事も矛盾なく引き継がれていて嬉しかったです。