双葉文庫
2013年11月 第1刷発行
285頁
高田郁さんが『川富士立夏』という筆名で漫画原作を生業にしていた時の作品「軌道春秋」を小説にしたもの
「お弁当ふたつ」
偶然から夫がリストラされていたことを知った妻
毎日、会社へ行っているふりをしている夫は一体どこで何をしているのか、そっと後をつけます
「車窓家族」
車窓から見えるアパートの一室
毎日のように老夫婦が暮らす部屋を見てきた乗客たちでしたが、ある日から部屋の灯りが点っていないことに気づきます
「ムシヤシナイ」
大阪の駅ホームで経ち食い蕎麦店を経営する老人
東京に暮らす息子一家とは孫の教育方針をめぐって連絡を絶っていましたが、ある日15歳になった孫が6年ぶりに一人でやってきます
「ふるさと銀河線」
北海道陸別町でふるさと銀河線の運転士をしている兄と2人暮らしの女子中学生
ずっと陸別で暮らしたいと考えていますが、周囲からは他の道を選ぶことも考えるように諭されています
「返信」
突然の事故で一人息子を失った両親
15年前、陸別町を旅していた息子から届いた葉書に返信しようと、三回忌を終えた2人ははるばる陸別町を訪ねます
「雨を聴く午後」
バブルが崩壊し、顧客から責められる等、辛い日々を送る証券会社の営業マン
たまたま、学生時代に暮らしていた木造アパートを見つけ、懐かしさから当時の彼女用に作った合鍵を手に暮らしていた部屋へ向かいます
今の住人が出かけている間だけ、こっそりその部屋で過ごすうち、ささくれだった心が穏やかになっていくのでした
「あなたへの伝言」
前話の今の住人の話
アルコール依存症から脱却するため、夫と別居し、お弁当屋さんで働きながら独り暮らしをしている女性
今日もお酒を飲まなかった、という合図は窓の下を走る通勤電車に乗る夫から見えるように干された白いソックスでした
「晩夏光」
姑の介護を終え、夫も見送り、のんびりと独り暮らしをしている老女
アルツハイマー病を患っているこをがわかり、夫が残した大学ノートに息子に宛てたメッセージを書き綴ります
「幸福が遠すぎたら」
大学時代の同級生、桃、梅、桜
15年ぶりの再会で三者三様、苦難を抱えていることがわかります
高田郁さんの現代ものは初めてですが、やはり良いですね
どれも、苦難のなかにありながら明るい光が見える素敵な物語でした
特に気に入ったのは「車窓家族」「晩夏光」
コミック版も読んでみたいです
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