2011年 フランス・カナダ
原題 Une Vie Meilleure
フランスはパリ
学生食堂の調理場で働くヤン(ギョーム・カネ)
自分の手でフレンチ・レストランを開業したい彼は、修業の為に採用面接に行ったレストランでウェイトレスのナディア(レイラ・ベクティ)に出会う
その日のうちに一夜を共にした二人
翌朝、ナディアは自分が19歳の時レバノンから来たシングルマザーで息子・スリマン(スリマン・ケタビ)は9歳になると打ち明ける
シンパシーを感じた二人はすぐ恋に落ち、3人で暮らし始める
レストランにちょうど良い物件を見つけたヤンは猪突猛進型なのか
頭金も無いのに銀行へ融資の話をつけ、土地と建物を買い取り改装を始めるのだった
さて、頭金をどうするのか?
お金に困っている人間を喰い物にする話はどこの国にでもあるもので
複数の消費者金融に手を出したヤンは忽ちに多重債務者になってしまう
設備の不備でレストランの開業が出来ないという窮地に立たされ、予定した収入の見込みも無くなったヤンとナディアは相談所に出かけるも、即刻土地を手放すように、というアドバイスにヤンは耳を貸さない
そんな時、ナディアにカナダ・モントリオールで今より好条件で働かないかという誘いがあり、まずは単身海外に行ってお金を稼ぐ決意をするのだった
フランスに残ったヤンとスリマン
貧しい中でも疑似親子として次第に絆が芽生え始める二人だが借金の問題は一向に解決の糸口が見えない
さらに何か月が過ぎ、ナディアからの手紙が届かなくなる
ついに万策尽きたヤンはレストランを転売する決意を固めるのだが融資屋のあくどいやり口に二束三文で売るしかなくなってしまう
いよいよ追い詰められたヤンは融資屋を襲って奪った現金で航空券を買いスリマンと共にカナダに向かうのだった
そこには、ただただスリマンを母親に会わせてやりたいという思いだけがありました
血の繋がらない子供の為に必死になるヤン
違法な手段でお金を手に入れたのは確かに悪いことですが、こういう場合はまぁ良しとしましょう
子はカスガイ、ですね
計画性もなくレストランの開業を急いだが為に陥った借金地獄
もっと考えてから行動すればよいのに、と思うのは自分が傍観者だからです
お金の問題に翻弄されるヤンの姿は明日の自分ではないと誰が言い切れるでしょう
カナダでナディアと再会したヤンとスリマン
これからの暮らしも決して楽ではないでしょうし、法律の問題も起きてくるでしょうが
明日を信じ進んでいく彼らはいっそう強い絆で結ばれた家族となることでしょう
ラスト、ヤンとスリマンがスノーモービルで疾走するシーンが明るい未来を象徴しているようでした
ところで
ヤンが昔指導を仰いだ先輩が経営する海辺のレストラン、「最強のふたり」にも登場しませんでしたか?
よく似てる雰囲気のお店だったのかなぁ
国内で食い詰めて外国へ出稼ぎに行く、ここまで閉塞感があって状況が良くならないと、そんなことも起こり得るような感じがしませんか?
外国での出来事を、ほんの数年前までは対岸の火事だと思っていましたが、日本もその波に巻き込まれて行きそうだなと、最近よく思うのです。
今はまだ、裕福な人が子供に海外で教育を受けさせるとか、老後を海外で、というのが多いかもしれませんが、海外へ出稼ぎに行かねばならない時代に入りつつあるのではないかと思います。
そうであっても、この映画のように「絆」や「心」は持ち続けていかなければ『人』ではなくなってしまいますよね。