文藝春秋
2023年3月 第1刷発行
237頁
江戸時代後期、文政年間
書肆「松月堂」を営む平助は、本(学術書)を売るだけでなく、いつの日か自らの力で書を出版することを夢見ています
本を行商して歩く平助が見たものは、本を愛し、知識を欲し、人生を謳歌する人々でした
「本売る日々」
上得意の小曾根村の名主は近頃孫ほどの年齢の少女を後添えにもらったといいます
妻の何かみせてやって欲しいと言われたので画譜を披露しますが目を話した隙に2冊の画譜が亡くなっていました
当惑する平助に名主は法外な代金を払って買い取ろうとし、若い妻への思いを語ります
しかし、平助にとっては苦労して集めた画譜であり、全巻揃ったものを待っている顧客がいるため、お金で解決というわけにはいきません
「鬼に喰われた女」
八百比丘尼伝説に興味を持った平助が杉瀬村の名主を訪ねます
50年ほど前のこと、と名主から大変興味深い話を聞かされます
それは、自分を袖にした武士への恨みを晴らすため「和歌」を武器に長い年月を費やしてその息子を陥れる女性の物語でした
「初めての開板」
平助の弟が喘息を患っている娘を城下の医者に診てもらうためやってきます
その医者の評判をそれとなく調べる平助の耳に近郷の村医者の評判が聞こえてきて、訪ねてみると…
村医者の度量の大きさ、名医たる由縁に頭の下がる平助でした
村、名主、庄屋の暮らしを通してみえてくる江戸時代の庶民の暮らし、「本」の持つ役割と「本」への愛情が生き生きと描かれています
3編とも、序盤は小難しい話が続くのと、一体どういう方向に進むのか分からず退屈に感じました
しかし、各話で疑問や不審を抱いていた平助が、探偵のような動きをみせ、人々との会話をきっかけに、さらに広がる人間関係や知識から納得していく様子はお見事
ちょっとしたミステリーのようで「面白かった~」でした
今後、人間として本屋として成長していきそうな平助を主人公にシリーズ化してもらえたら嬉しいかも
青山さん、まだ3冊目で
少しだけ青山ワールドに慣れてきたところです
さて、次は何を読みませうか
こんな生活もあったのですね。
江戸の暮らしを垣間見せてもらいました。
「跳ぶ男」名古屋市図書館の予約カートに入れてあります。
調べましたら、在庫はあるのですが残念なことに最寄り図書館は所蔵しておらず、予約して回って来るのを待つか、所蔵図書館まで行くか、思案しているところです。
地方の城下町で硬い本ばかり扱う勉強家の本屋を主人公に据えたのが秀逸でしたね。
青山さん、さほど多作では無いのですが、着実に出版されて15冊ほど。
次は何かな~。ちょっときついけど『跳ぶ男』など如何でしょう。
http://todo23.g1.xrea.com/book/wj_aoyama.html