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エドワード・ケアリー「吞み込まれた男」

2022年09月22日 | 海外の作家


訳・古屋美登里
東京創元社
2022年7月 初版
229頁

巨大な魚の腹の中
乗っていた舟ごと魚に呑み込まれたジュゼッペは、そこに朽ちかけた帆船を発見します
孤独な世界はジュゼッペにとって絶望的な状況ですが、幸いなことに帆船には蝋燭、飲み水、食料があり、何と彼はその後2年間も生き延びることができました
船長が遺した航海日誌の余白に、自分の来し方を綴っていくジュゼッペ
彼が創った木彫りの人形ピノッキオに命が宿ったこと
学校に行って戻ってこなかったその子の行方を探し、小さな舟で海に漕ぎ出したこと
さらに遡り、自身の少年時代、生まれた家を出てから出会った女性たちとのこと
そして、自己との対話を通して重層的に描かれるのが、ジュゼッペとピノッキオ、陶器の油彩職人だった父親とジュゼッペ、帆船の船長と息子の3組の「父と息子」です

ジュゼッペはピノッキオと再会できるのでしょうか
最後の段落で、ピノッキオが言うトスカーナ地方の方言で「とうちゃん」を意味する「バッボ」にじんときました
ピノッキオの言った「バッボ」はジュゼッペの空耳で結局会えないまま魚の腹の中で亡くなってしまったと思ったのですが、エピローグを読むと、ん、違う?
で、読み返したら、確かにピノッキオはジュゼッペを迎えにきて外の世界へ出ていけたようです
めでたしめでたし^^

好みがあるので万人にはお薦めできませんが素晴らしい1冊と思います





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