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アンソロジー「きずな 時代小説親子情話」

2021年06月11日 | アンソロジー
編・細谷正充
ハルキ文庫
2011年9月 第1刷発行
2018年12月 第8刷発行
解説・細谷正充
242頁

宮部みゆき「鬼子母火」
酒問屋「伊丹屋」の神棚の注連縄が燃え上がるという騒動が発生
さいわいにもボヤで済んだものの、どうにも不審です
さらに注連縄に挟まれたこよりの中に髪の毛が入っていたことも明らかになり…
死してなお娘を守ろうとする母の情を描きます
「幻色江戸ごよみ」で既読ですが、良作は何度読んでもいいですね

池波正太郎「この父その子」
真田ものです
真田伊豆守から息子・信弘、孫の信安へと至る松代藩史を背景におぼろに浮かび上がってくる血の繋がり
全てを知る読者はやきもきしながら松代藩の行く末を見守るのです

高田郁「漆喰くい」
高田さんが人気作家になる前に小説誌に発表し、そのまま本になることなく埋もれていた作品
江戸時代、本所から2キロばかり離れた村の貧しい百姓家に暮らす病気の母と11歳になる娘
かつて一度だけ食べた「豆腐」の味が忘れられないという母になんとか豆腐を食べさせたいと苦心する娘の姿を描きます
庄屋の言うことには、百姓が豆腐を作るのはご法度、食べることも滅多にできない
江戸時代に、そのような決まりがあったとは知らなかったです
お百姓さんは大豆を作るのに豆腐は食べられないなんておかしな話です

山本周五郎「糸車」
軽輩の家に生まれた娘が養育費にも困り養女に出されます
ところが、後に生家は主が出世し暮らしぶりが良くなるのと逆に、養家では養母が亡くなり、病身の義父と元服前の義弟を抱えながら娘が糸繰の内職で一家を支えるという貧しい暮らしをしていました
一度は養女に出したものの貧乏な暮らしをしていると聞き、娘を引き取ろうとする生家の両親でしたが…
娘にとって家族と呼べるのは生家か養家か、彼女の心は決まっていました
じわっと涙が滲む、素晴らしい話でした

平岩弓枝「親なし子なし」
男の赤ん坊を抱えて苦労している大工に嫁いだヒロイン
しかし、嫁いで一年も経たず夫は酒に酔ったうえ喧嘩した挙句、川に落ちて死んでしまいます
血のつながらない子どもをひとりで育ててきますが、成長した息子は放蕩者になり果てていました
ヒロインの事情を承知のうえで呉服屋の主人は彼女を嫁に迎えますが、そこにも息子は金の無心にやってきます

意外な展開が待っています
親と子、血のつながりがなくても本物の親子になれるのです
ラストはこれまたじんわりきました
最後の2行は藤沢周平さんを思い出させるような名文です




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