ポプラ社百年文庫24
2010年10月 第1刷発行
173頁
織田作之助「蛍」
幕末、18歳で酒の名所、伏見の船宿に嫁いだ登勢
頼りない夫と気難しい姑、打ち続く災厄にもへこたれず生き抜く女性を描きます
伏見の船宿=寺田屋にビックリ
「おしん」みたく苦労の絶えない登勢が、あの寺田屋事件の舞台となった船宿の女将とわかってからはその人生が全く違うものに見えてくるから不思議なものです
日影丈吉「吉備津の釜」
事業に失敗し、お金の工面に走り回っていた洲ノ木
たまたま酒場で出会った、川本と名乗る男から、人の面倒をよく見る資産家を紹介するから訪ねて行ってはどうか、と言われます
半信半疑ながら翌日、資産家の家へ向かう洲ノ木は水上バスに乗って川岸の景色を眺めるうち記憶の底にあった「魔物」を思い出します
最後まで読んだところで推理小説だったことがわかる面白い構成でした
室生犀星「津の国の人」
伊勢物語に題材をとった所謂「王朝もの」
都での宮仕えが決まった夫は津の川を東へ、土地がかりの官人の家で下働きをすることになった妻は西へと別れます
再び一緒に暮らせる日を願って妻は便りを待ち続けますが、遠い都の地で夫がどうしているのかわからぬまま何の音沙汰もなく年月ばかりが過ぎ去っていきます
それでもひたすら待ち続ける妻
3年が過ぎ、夫を諦め官人の息子との祝言を決めるのですが…
川をめぐる3編
いずれも秀作です
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