PHP文芸文庫
2014年11月 第1版第1刷
特別対談 広瀬勝貞(大分県知事)・葉室麟
389頁
天領の豊後日田で、私塾・咸宜園を主宰する広瀬淡窓と、家業を継いだ弟・久兵衛
画期的な教育方針を打ち出す淡窓へも、商人としてひたむきに生きる久兵衛へも、お上の執拗な嫌がらせが続く
大塩平八郎の乱が起きるなど、時代の大きなうねりの中で、権力の横暴に耐え、清冽な生き方を貫こうとする広瀬兄弟
理不尽なことが身に降りかかろうとも、諦めず、凛として生きることの大切さを切々と訴えた歴史長編
天保4年(1833年)1月から天保8年(1837年)9月までの広瀬兄弟の周辺を描いています
主人公の広瀬兄弟は武士ではないので派手な立ち回りなどはありません
また、兄弟に対比して描かれている大塩平八郎のようにインパクトのある行動を起こしたわけでもありませんので物語に華は無いと言ってもよいでしょう
地味ですが広瀬兄弟の生きざまからは教わることが多くありました
真に民の為となる政とは
ひとが人として生きるのに大切なこととは
より良き世を作るのには人を生かすこと、人を思う気持ちが失わないことが大切である
実に葉室さんらしい作品に心洗われる思いです
大分県知事の広瀬さんは広瀬兄弟のご子孫だそうです
代々伝わる家訓は「心は高く、身は低く」
対談の中で
当時の日本には江戸・上方以外の地方にも広瀬兄弟のような優れた人物がおり各地域を支えていた、明治以降、近代化を成し遂げた日本を支えたのは江戸時代に各地域で蓄えられていた民の力があったからこそ
と葉室さんは仰っています
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