みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0308「相棒」

2018-09-02 18:37:59 | ブログ短編

「あなたが犯人(はんにん)だということは分かってるのよ!」はるかは男の前で啖呵(たんか)を切った。
 男は薄笑(うすわら)いを浮(う)かべて、「何の話か分からないな。俺が壺(つぼ)の中の金を盗(ぬす)むなんて」
「あら、どうして壺の中にあったって知ってるの。それは、犯人しか知らないことよ」
「なに言ってんだ。俺(おれ)は、警察(けいさつ)から聞いたんだよ」男はなおも白(しら)を切る。
 はるかの後で隠(かく)れるように立っていた剛志(つよし)が、「このことは、まだ警察も知らないです」
「そうか」男は嬉(うれ)しそうに、「じゃ、お前たちを消(け)しちまえばいいってことか」
 男はナイフを出してはるかに斬(き)りつけた。普通(ふつう)の女の子なら悲鳴(ひめい)を上げるところだが、はるかは格闘家(かくとうか)の娘(むすめ)である。難(なん)なくナイフをかわすと、男を投(な)げ飛ばした。次の瞬間(しゅんかん)、どこにいたのか別の男がはるかの背後(はいご)から迫(せま)って来た。まさに、はるかを捕(つ)まえようとしたとき、そばで震(ふる)えていた剛志が大声を上げてその男へ突進(とっしん)した。
 ――犯人たちは、駆(か)けつけた警察に逮捕(たいほ)された。はるかが、知り合いの刑事(けいじ)に大目玉(おおめだま)を喰(く)らったのは言うまでもない。一つ間違(まちが)えたら命(いのち)はなかったのだから。
「あんたが知らせたのね」はるかは剛志を睨(にら)みつけた。でも、すぐにその顔に笑(え)みがこぼれて、「やっぱ、名探偵(めいたんてい)の孫(まご)よね。あんたの推理(すいり)はすごいわ。二人で頑張(がんば)ろうね」
「あの、僕(ぼく)は未成年(みせいねん)ですし、探偵なんてやりませんから。これで、失礼(しつれい)します」
「ちょっと待ちなさいよ。あたしたち相棒(あいぼう)でしょ」はるかは逃(に)げ出した剛志を追(お)いかけた。
<つぶやき>ちょっと気弱(きよわ)な男の子と、負けず嫌(ぎら)いで突(つ)っ走る女の子。いいコンビかも。
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