みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0322「しおどき」

2018-09-17 18:37:32 | ブログ短編

 二人は同じ職場(しょくば)で知り合って、どちらからともなく付き合い始めた。まあ、職場恋愛(れんあい)なんてどこにでもあるパターンなのかもしれない。彼らも、ごく普通(ふつう)に喧嘩(けんか)をし、幾多(いくた)の試練(しれん)を乗り越(こ)えてこの時を迎(むか)えた。
「ねえ、それって今じゃなきゃいけないの? こんなとこで言われても…。あたし、片(かた)づけなきゃいけない仕事(しごと)があるんだけど」
 彼女は仕事の手を止めて、周(まわ)りの人に聞こえないようにささやいた。
「あの、そろそろ、僕(ぼく)たちも潮時(しおどき)だと思うんだ。だから、ここら辺で…」
「ちょっと!」彼女は思わず声を上げた。周(まわ)りを気にして、ますます声を落とし、
「何でそんなこと言うのよ。そりゃ、あたしにだって、いけないとこあるかもしれないけど、急(きゅう)に別れようなんて…。ひどいよ」彼女は感情(かんじょう)が高ぶり目頭(めがしら)を押(お)さえた。
 彼は、彼女の反応(はんのう)に驚(おどろ)いた。あたふたしながら、「ちょっと待(ま)ってよ。何で、そうなるかな? 僕は、別に、そういうつもりで――」
 彼が何を言っても、彼女には届(とど)きそうもなかった。彼はポケットから指輪(ゆびわ)を取り出して、彼女の前に差(さ)し出しすと、「僕と、結婚(けっこん)しませんか? お願(ねが)いします」
 彼女はキョトンとしていたが、彼の顔を見つめて、一瞬(いっしゅん)、嬉(うれ)しそうな顔をした。だが、
「何で、今なのよ! もっと、ふさわしい場所ってもんがあるでしょ。なに考えてんのよ」
<つぶやき>やっぱり女性にとっては特別(とくべつ)なこと。結婚の申込(もうしこみ)は、場所選(えら)びも重要(じゅうよう)かも。
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