みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0311「おめでとう」

2018-09-06 18:46:43 | ブログ短編

 会社(かいしゃ)の備品(びひん)置き場の片隅(かたすみ)に、段ボール箱(ばこ)が置かれていた。私は何かなって思って、その箱を開けてみた。すると、中にはきれいな花束(はなたば)が。これってサプライズ? 私は胸(むね)が高鳴(たかな)った。だって、今日は私の誕生日(たんじょうび)。みんなが私のために…。
 箱を元通(もとどお)りにして――。私が気づいたってことが分かったら、みんなガッカリするじゃない。私は知らないふりをすることにした。何か、とっても楽しみ。私はその時が来るのを、わくわくしながら待っていた。
 終業(しゅうぎょう)間際(まぎわ)、みんなの動きが慌(あわ)ただしくなる。いよいよその時が――。上司(じょうし)がみんなを集める。そして花束の登場(とうじょう)。上司が私の名前を呼ぶ――、はずだった。
 呼ばれたのは、後輩(こうはい)の女の子。花束がその子に渡(わた)されて、上司からのお祝(いわ)いの言葉(ことば)。
“ご結婚(けっこん)、おめでとう”――何よそれ。私、そんなこと聞いてないから。
 どうせ私は、職場(しょくば)の中では結婚してない女の一番の年上(としうえ)よ。きっと、気を使ってくれたのかもしれないけど。でもね、それってどうなのよ。私だって、気持ちよくお祝いしたいじゃない。彼女も彼女よ。先輩(せんぱい)としていろいろ仕事(しごと)を教えてあげたのに、何で私に教えてくれなかったの。付き合ってる人がいたことも知らなかったわよ。
 花束を抱(かか)えて涙(なみだ)ぐんでいる彼女を見ながら、私は何だが自分が負(ま)け組にいるんだなって、改(あらた)めて実感(じっかん)してしまった。もう、絶対(ぜったい)良い男を見つけて結婚してやる!
<つぶやき>せっかくの誕生日。気持ちを新たに、美味(おい)しいものでも食べに行きましょ。
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