とある会社(かいしゃ)の会議室(かいぎしつ)。男性社員(しゃいん)が集まって秘密(ひみつ)の会議が開かれていた。議題(ぎだい)は、ホワイトデーのお返(かえ)しをどうするか。課長(かちょう)がまず提案(ていあん)を出した。
「今年は、みんなでお金を出しあって、不公平(ふこうへい)のないようにしたらどうだろう」
強硬派(きょうこうは)からは、「そんなのやめましょうよ。向こうが勝手(かって)に配(くば)ってるんですよ。どういうつもりか知らないけど、知らん顔しとけばいいんですよ」
「ちょっとそれは乱暴(らんぼう)じゃないでしょうか」入社(にゅうしゃ)三年目の社員が言った。「やっぱり、ちゃんと誠意(せいい)は見せないといけないんじゃないかと…」
「お前はいいよなぁ。俺たちとは違(ちが)って、いいもんもらってんだから。こちとら、義理(ぎり)だよ、義理。それも、こんなちっちぇヤツ」
隅(すみ)の方で黙(だま)って聞いていた係長(かかりちょう)が口を開いた。
「でも、毎年、何かしらもらえるんですよ。我々(われわれ)、中年(ちゅうねん)男性が、若(わか)い女性からプレゼントを受け取れるなんて機会(きかい)、滅多(めった)にないじゃないですか。私なんか、自分の娘(むすめ)からもそっぽを向かれて、妻(つま)からだってプレゼントのプの字も出やしない」
会議室は静(しず)まり返った。それぞれの思いがあるようだ。ホワイトデーの習慣(しゆうかん)の波紋(はもん)は、どこまで広がっていくのか。今年も、紛糾(ふんきゆう)を極(きわ)めそうだ。
<つぶやき>ここは、お返しはしてあげた方が良いかもしれませんね。気持(きも)ちですから。
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