みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0318「恋愛道場」

2018-09-13 18:38:12 | ブログ短編

「はっきり言わせてもらっていいですか?」日菜子(ひなこ)はうつむき加減(かげん)で座(すわ)っている男に向かって言った。「あなた、本当(ほんとう)に女性とお付き合いする気持(きも)ちがあるんですか?」
 男は消(き)え入るような声でささやいた。「も、もちろん…。付き合い…たいです」
「あの、もう少しはっきりと自分の意志(いし)を出さないと、相手(あいて)には伝(つた)わりませんよ」
 日菜子は手帳(てちょう)を見ながら、「今回の模擬(もぎ)デートの結果(けっか)ですが、残念(ざんねん)ながら最悪(さいあく)の点数です」
「えっ、そうなんですか? おかしいな。そんなはずは…。だって…だって……」
 男はもごもごと、何か言い訳(わけ)がましくつぶやいていた。日菜子はお構(かま)いなしに続ける。
「まず、最初(さいしょ)からペケですね。初対面(しょたいめん)なんですから、相手の気持ちを訊(き)かないと。どこか行きたい所はないですか、とか。食べたい物はないですか、とか。あなた、挨拶(あいさつ)もそこそこに歩き出しましたよね。女性からしてみると、その段階(だんかい)で恋愛(れんあい)の対象外(たいしょうがい)です」
「だって、男としては…、ここは、まず…」
「あの。失礼(しつれい)ですが、今のあなたに男性としての魅力(みりょく)は全くありません。あなたの場合、自分を磨(みが)くことから始めるのをお勧(すす)めします。まず、その姿勢(しせい)!」
 男は驚(おどろ)いて背筋(せすじ)を伸(の)ばす。その顔はこわばっていた。日菜子はにっこり微笑(ほほえ)んで、
「明日から特訓(とっくん)しましょうね。大丈夫(だいじょうぶ)ですよ。一週間で見違(みちが)えるようになりますから」
<つぶやき>軟弱(なんじゃく)な男が増(ふ)えてると言われる昨今(さっこん)、こんな道場が出現するかもしれません。
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