０８８７「結婚って」

「あたし、結婚(けっこん)に失敗(しっぱい)したかも…」和美(かずみ)はため息(いき)まじりに言った。
　――ここからは、この夫婦(ふうふ)の夕食のときの一場面(いちばめん)である。
「ねぇ、どう？　今日の、味付(あじつ)けを工夫(くふう)してみたの。美味(おい)しいと思わない？」
「まぁ、まずくはないけど…。でも、何で変えたんだよ」
「何でって…。あなた、美味しそうに食べてくれないし。それに、せっかくあたしが――」
「あのさ、そんなこといちいち言わなくちゃいけないのか？　別にいいだろ、食(く)えりゃ」
　――和美の回想(かいそう)が終わると、それを聞いていた友だちが口を開いた。
「で、どうしたいわけ？　離婚(りこん)でもしてみる？」
「いや、あたしはそこまでは考えてないけど…。でもね、ひどいと思わない？」
「結婚経験者(けいけんしゃ)の先輩(せんぱい)として言わせてもらうけど、そんなの普通(ふつう)じゃない。そんなことで悩(なや)んでたら、これから先、続かないわよ。夫婦といったって他人(たにん)なんだから」
「そんなこと、分かってるわよ。でもね、せっかく一緒(いっしょ)に暮(く)らしてるのに…」
「あなた、結婚がどういうものか分かってないわ。結婚すれば甘(あま)い生活(せいかつ)が続くと思ってた？」
　和美は何も答えることができなかった。友だちはさらに続けた。
「結婚は戦(たたか)いの始まりよ。どちらが主導権(しゅどうけん)を握(にぎ)るか。それで大きく変わってくるものなの。結婚に失敗したくなかったら、あなたが主導権を勝ち取りなさい。相手(あいて)をねじ伏(ふ)せて服従(ふくじゅう)させるの。私はそれで幸(しあわ)せを手に入れたわ」
＜つぶやき＞これは極論(きょくろん)ですが…。まあ、いろんな夫婦がいますからね。あなたなりの…。
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