みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0898「同姓同名」

2020-05-26 18:11:28 | ブログ短編

 彼女が昼休(ひるやす)みから戻(もど)ってくると、自分の机(つくえ)の上に大きな花束(はなたば)が置かれていた。彼女は驚(おどろ)いて教室(きょうしつ)を見回すと、クラスメイトたちはひそひそとささやき合っていた。その時、後ろから声をかけられた。彼女が振(ふ)り向くと、そこには御曹司(おんぞうし)が立っていて、
「気に入ってくれたかい? それは、僕(ぼく)からのプレゼントだよ」
「あ、あたしに…」彼女は目を丸(まる)くして、言葉(ことば)を詰(つ)まらせた。
「そうさ。ごめんね気づかなくて。君(きみ)には僕こそがふさわしい。僕と――」
「ちょっと待(ま)った!」別の男子(だんし)が飛(と)び込んで来た。彼は大地主(おおじぬし)の息子(むすこ)だった。
「そんな花束で欺(だま)されてはいけない。僕こそが君にふさわし男だ」
 彼はそう言うと、ポケットからダイヤの指輪(ゆびわ)を出して彼女に捧(ささ)げた。彼女には何が何だか分からない。そもそも、告白(こくはく)されたのも初めてなのだ。彼女は戸惑(とまど)って、
「ど、どういうことよ。あたしなんかに…。もしかして、からかってるの?」
 御曹司が答(こた)えた。「君が悩(なや)んでるのは分かるよ。数百億(すうひゃくおく)の遺産(いさん)を手にするんだからね」
 大地主の息子は、「ネットで見たよ。お爺様(じいさま)が亡(な)くなったんだろ。僕は君の味方(みかた)だよ」
 彼女は小さなため息(いき)をつくと、「あたしのじいちゃんは生きてます。もう、何なのよ」
 二人の男子は顔を見合わせて、がっかりしたように呟(つぶや)いた。
「なんだ。人違(ひとちが)いか…」「まぎらわしいなぁ。同姓同名(どうせいどうめい)か? おかしいと思ったんだよ」
 男子たちはそそくさと出て行った。残(のこ)された彼女は、失恋(しつれん)したような変な感じに――。
<つぶやき>これはめちゃくちゃでしょ。学生がダイヤの指輪って、絶対(ぜったい)ないと思います。
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コメント
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