みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0892「決断」

2020-05-14 18:08:22 | ブログ短編

 彼はいま、大きな決断(けつだん)をしようとしている。彼の、ペンを持つ手が震(ふる)えていた。彼は自問(じもん)した。本当(ほんとう)にこれでいいのか? そもそも、どうして彼女は僕(ぼく)なんかと――。
 彼は、目の前に座(すわ)っている彼女を見つめた。彼女は優(やさ)しく微笑(ほほえ)みかけている。彼は目を伏(ふ)せた。そして、止めどなく湧(わ)き上がってくる疑問(ぎもん)の答(こた)えを探(さが)し続けた。
 確(たし)かに、彼女は僕(ぼく)なんかにはもったいないくらいの女性だ。でも、本当(ほんとう)に僕のことが好(す)きなんだろうか? こんなに美人(びじん)だったら、僕じゃなくてもいいはずなのに――。
「ねぇ、どうしたの?」彼女がささやいた。「やっぱり、あたしなんかじゃ…」
「いや、そんなこと…。でも、どうして…。式(しき)の日取(ひど)りも決(き)めてないのに…」
「あたし、ちゃんとした確約(かくやく)が欲(ほ)しいの。いいでしょ? あたしたち、結婚(けっこん)するんだから」
「そうなんだけど…。でも、これは、今じゃなくても…」
 彼女は表情(ひょうじょう)を曇(くも)らせて呟(つぶや)いた。「あたしのこと、好きじゃないんですね」
「そ、そんなことないよ。僕は、キミ以外(いがい)は考えられないんだ。でも、キミは…。本当に僕なんかでいいのかい? 本当に、僕のことを好きでいてくれるのか…」
「あたりまえじゃない。あたしも、あなた以外は考えられないわ。あなたしかいないの。あたしが好きなのは…、あなただけよ。さぁ…、ここに名前(なまえ)を書いて」
<つぶやき>この言葉(ことば)の裏(うら)には何が隠(かく)されているのでしょう。恋の駆(か)け引きの最終章です。
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