みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0891「すれ違い」

2020-05-12 18:04:29 | ブログ短編

 彼は、仕事(しごと)に追(お)われていた。忙(いそが)しすぎて、付き合っている彼女と会う余裕(よゆう)もなかった。もう何日も連絡(れんらく)をとっていなかったことに気づいた彼は、彼女にラインでメッセージを送った。だが、どういうわけか返事(へんじ)が返ってこない。送ったメッセージも既読(きどく)にならなかった。
 彼は電話をしてみた。何度もかけてみたが彼女が出ることはなかった。彼は心配(しんぱい)になった。そこで、仕事を何とか早く終わらせて彼女のアパートへ行ってみた。
 部屋から出てきた彼女は、彼を招(まね)き入れるでもなく、「何で、来たのよ」と素(そ)っ気(け)ない態度(たいど)。彼は、
「ごめん、ずっと忙しくて連絡できなかったんだ。だから…」
「あの、私たち、もう、そういう関係(かんけい)じゃないよね。私は、別(わか)れたと思ってるんだけど」
「えっ…、何で? 僕(ぼく)たち、別れてなんかいないだろ?」
 彼女は冷(さ)めた口調(くちょう)で答えた。「だって、私のことなんかどうでもいいんでしょ。もう来ないでください。私のことは忘(わす)れて。私、もう何とも思ってないですから」
「えっ、何でそうなるんだよ。ちょっと連絡できなかっただけなのに…」
「それと、二度と連絡してこないで。ほんと、迷惑(めいわく)ですから」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。そ、それはないだろ? いくらなんでも…」
 彼女はドアを閉めた。そして鍵(かぎ)をかけると、ドアの向こう側(がわ)の彼に言った。
「私、付き合ってる人がいるの。ここも引っ越すから…。さよなら、元気でね」
<つぶやき>どうしてこんなことになっちゃったの? 何がいけなかったんでしょうねぇ。
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コメント
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