キ上の空論

小説もどきや日常などの雑文・覚え書きです。

句を作る1

2023年06月01日 | 雑文
手帳に句を書き込むとき、書いたそばから気に入らないのはそのまま横線を引いてしまう。
今までに使ったことのない季語を取り出す。なじみのない言葉、知らないものを無理に書かない。

密漁の夜振人追はれてをりぬ
 見てきたように書くのもどうよ。

夏つばめ戸袋の子に呼ばれをり
 今日の帰りに見たやつ。戸袋に燕の巣は初めて見たわ。

季重なりはどこまで許容されるか。まずは自分が許容できるか。

あぢさゐの額にひそむる小さき蜘蛛
 先だっては紫陽花を見放題に見てきた。七変化、四葩など別名はあるけれどどう書いても難易度が微妙に高い。
ほの青き杏の実落つ梅雨晴間
 梅雨晴間じゃなくてもいいからこれは却下。
白玉ののつた真つ赤なかき氷
 ただの「見たまんま」じゃないですかーやだー。抹茶じゃないのが珍しいと思ってさ。
五月雨の音みじか夜を満たしけり
 季重ねも狙ってやるなら良し。気にしないでうっかりはよろしくない。音は「ね」と読むものが多いので雑に使うと失敗する。

こうやって書いては捨てている。ほぼ捨て。
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クラマークラマー

2021年03月31日 | 雑文
君の転げた嘘から僕が生まれてきたんだって
そんなのどうでも良いなら 一緒に踊ろう

間違ってばかりの紛い物が居心地良いんだ
何もかも 見ない 聞かない わからない
ちっぽけな世界がすべてだって 必死なんだ

知ってるかい この世界には 誰よりたくさんものを知ってるやつがいて
自分はもの知らずだって思ってるって
だから どこまでも知るために 世界を広げていくんだってさ
勝手なやつらだよねえ

広い世界が見える誰かをどれだけ傷つけたって
広い世界なんて 見えない聞こえない感じられない

似てるつもりの歪なものを
やっと作ったつもりでいる 君に悪い知らせだ

君が大星由良助なら 彼は大石内蔵助だろ
「そんなの知ってる」だなんて 本当のとこはどう?

本当なんてなかったら良いのに
正解なんてなくたって良いじゃない

辞書くらい引けるだろ その向こうにも 世界はあるんだ
「どうせ」と「ばか」も載ってるよ きっとどうでも良いでしょう

君らがディーンとマリアなら 彼らはロミオとジュリエット
「そんなの知らない」だなんて 何を見ているの
君の転げた嘘から僕が生まれてきたんだって
そんなのどうでも良いなら 一緒に踊ろう ねえ一緒に踊ろう

本当なんてなかったら良いのに
正解なんてなくたって良いじゃない


      crammer vs crammer
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ソウイウモノ

2008年05月31日 | 雑文
 平たく言うと、ろくでなしだ。
 居心地が良いのはただの生存本能。人を近づけず、遠ざけもせず、いつでも切り捨てる準備をしていながら、両手を広げる振りをしている。
 だから、人から熱を奪わない割には、温度もなまぬるい。
 手が冷たいのはただ血行が悪いからだとか、背を丸めるのは支える筋力が足りていないからだとか、淡々と言う。
 勝手に出かけて、勝手に帰ってくる。
 たとえば、鬼束ちひろの『私とワルツを』に千昌夫の『星影のワルツ』を返すような、重なり合ったと思った部分が決定的なズレだったりする、そういうことを(多分)わざとやる。
 人の気持ちに寄り添うようで、ただ居るだけ。それで充分と言ったら居なくなる。
 踏み込むようなことを言ったかと思えば、視線を向けたときにはもう別のどこかへ行っている。
 空気のような軽やかさと寒々しさとを内包しているから、暖かくはなりきれない。
 けれど、温度を必要とするときには大体そば近くにいて。
 ほどよいなまぬるさに溶かされたりもする。
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a literateira dizeu um devaneiro

2008年04月27日 | 雑文
 王は老いる。そして騎士も。
 至高の若き騎士を失った今、この国が向かう先はたったひとつ。
「王がこの地を統べるのが運命だったと云うのならば、俺がそれを終焉に導くのも運命」
 笑いとばせよ、いつもみたいに。
 そうすれば、俺はおまえを叩き斬れる。
「運命に抗うことなど、結局無意味だ」
 さあ、笑えよ。お前は、そうするだろう?
「……何を自棄になって―――」
 声はそこで途切れた。陽気な皮肉屋は、倒れたきりもう何も云わなかった。
 血に染まった剣を片手に、理想屋は不機嫌そうに俺を睨んだ。
 倒れた男を見下ろす。
 ただ、血が広がってゆく。
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慎みをもってラをカタカナ表記とする

2008年04月06日 | 雑文
『ちょっと待ってて』
 電話越しの声は、終わり頃が少しくぐもった。電話口に手でも当てたのだろう。
『みーさん! そんな格好でうろうろしないでっていつも言ってるでしょ!』
 受話器を顔から離さないで怒鳴っては、手を当てた意味はほとんどない。
『ユリイカ!』
 どうやら、よく通る声の旦那さんはラ族らしい。
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それは誤解なのか

2008年03月08日 | 雑文
 必死にしがみついて自分の体温の移ったものを「そんなもの」と言い捨てられた。
 自分を指さされたみたいだと思った。
 手放せば違う温度になる、手放したくないもの。
 近い温度であればいい。自分の一部であればいい。混ざり合ってしまえばいい。
 「そんなもの」
 後生大事に抱え込んでいるものを指さしたら、どちらのことを言っているのかわからない。伝わらない。

 本当は「そいつと換わりたい」と言いたいのは顔を見ればわかる。
 でも「そんなもの」とそんな風に言う近さのある人は換えられない。

 結局、指は丸まる私の背を指した。
 私でない大切は近さを捨てた。

「そんなくだらないことにこだわってないで」と言われたものは、今は私を構成する一部に過ぎない。
 私はずいぶんくだらないものになってしまったらしい。
 近きは消えて遠くなった。これから関わることもないだろう。
 その分ずいぶん気が楽になった。
 私は「そんなもの」とともにあり、これからもきっと
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万物変化

2008年02月21日 | 雑文
どんな運命もいつかはこの手をはなれる

私がこの手を はなす
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そくらてす

2008年01月23日 | 雑文
今日も 町の名前で 人が死んでゆく
遠い 空の下で  遠くない 空の下で

今日も 町の名前で 人が死んでゆく
遠い 遠くない この空の下で 
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